*東京ステーションギャラリー | 美術館巡りの小さな旅

美術館巡りの小さな旅

カメラ片手に美術館を巡るお出かけや旅行をArtripと呼んで、ご紹介しています*

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ある金曜日の夜、東京ステーションギャラリーへ行って来ました♡*

金曜日は夜20時まで開館しているので、仕事帰りにぷらっと立ち寄れます(*˘︶˘*).。.:*♡

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名前のとおり、東京駅舎内に造られたこちらの美術館。

2013年に開催された「エミール・クラウスとベルギーの印象派」展以来、約1年半ぶりの訪館でした。

(※この「エミール・クラウスとベルギーの印象派」展は、個人的にこれまで訪れた展覧会の中でも5本の指に入ほど好みの展示でした!今でも時折図録を眺めてはため息です♡)

東京駅の丸の内北口直結なのですが、通勤通学者、観光客でごった返す改札からふと見上げると、天井はこんなに美しいドーム。
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この丸の内北口はたまに利用しますが、あえて立ち止まって見上げることはなく…これまで気付かずに通り過ぎていました(もったいない!)。

そのドームの真下にある美術館入口。
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液晶には企画展の案内等が映し出されています。
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東京駅と言えば、大正3年の駅舎完成当時のレトロな外観(辰野金吾設計)が特徴ですが、このステーションギャラリーも同じく。


歴史を感じるレンガにつつまれた美術館です。
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券売機でチケットを購入したら、エレベーターで展示室へ。

この時期の展示は「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい」。


大阪万博終了後の1970年10月から、国鉄が開始した「ディスカバー・ジャパン」キャンペーン。

日本各地を写した斬新な広告が反響を呼び、時代転換の波を作ったこの一大企画を、当時のポスター100点を中心に振り返るというもの。
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「振り返る」といっても、1970年というと、私が生まれる約20年前。
個人的には、40年前の日本を「再発見」するというよりは、「初めて知る」感覚です。

時代は、国民が沸いた万博が終わり、巨額を投じて「建設」されたパビリオンの数々が、さらなる巨額を投じて「解体」されていた頃。

60年代の「オー・モーレツ!」の活気とがむしゃらな頑張りから、ちょっぴり余裕の生まれた人々は「美しく」生きることへ関心を抱き始めていました。

それを象徴する、富士ゼロックスが発信したコピー「モーレツからビューティフルへ」。
このCM映像から、展示は始まります。


この、「オー・モーレツ!」という言葉。
祖母が冗談交じりに口にしていた記憶がありますが、勝手に、祖母の口癖だと思っていました…60年代の流行語だったのですね*

そこから「ビューティフル」なライフスタイルを目指す時代へと移り変わり、多くの価値観が流入し飛び交った万博を経て、改めて日本を見つめ直す企画「ディスカバー・ジャパン」が打ち出される。

広告の特徴は、どこかもわからない風景や何気ない場所、人々の自然な暮らしや表情を写した写真が大画面で配置され、外枠に「DISCOVER JAPAN」とでかでかと記載されていること。

なにより、写真の場所がどこなのかの説明が一切書かれていないことに驚かされます。

「ここへ行ってみませんか」と誘う観光広告ではなく、「日本自体」を見つける旅。
日本のどこかにはこんな場所がある、こんな生活がある。

それぞれの風景や営みの美しさをすべて内包した日本を発見する。

「ここへ行ってみよう」ではなく、「どこかへ行ってみよう」…そう思わせる広告たち。

途中、次の展示室へ行くために階段を下りるのですが、この階段がまた素敵*
レンガに囲まれた、重厚な木製床。
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照明も、窓もレトロで美しい*
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階段から下を見下ろすと、海外の古いアパルトマン建築のよう!
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レンガひとつひとつをじっくり見ながら降りていきます。
※重要文化財のためレンガ壁に触れることはできません。
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レンガがところどころ黒いのは、腰壁などの固定用に埋め込まれた木製レンガが、1945年の空襲で焼けて炭化したからだそう。

下から見上げた階段。
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さて、「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンも、時代と共にパターンやレイアウトが変わっていきます。

風景写真だけで魅せるものもあれば、旅をする女性を写したもの、心惹かれるコピーが添えられたもの、その他機関誌や特別切符なども発行されます。


そのうち、心に残ったコピーをいくつか*

「期待通りの旅よりも。」1971年

「じろじろ見る旅、見られる旅」1970~71年頃

「どこからが旅かしら」1971年4月

「心には なにをきざもう」1971年3月

個人的に、電車に揺られて旅行をするのが大好きなので、現在のJR広告も駅やテレビなどでまじまじと見ています。

「そうだ 京都、行こう。」「いま、ふたたびの奈良へ。」など、どれもすごくシンプルで、写真も観光スポットや風景の切り取り方が本当に上手いなぁと、毎回わくわくします。

けれど、今回の展示で観た広告のコピーは、場所は指定されず、「旅」そのものを描いていて。

ものによっては長めのコピーだったり、誰かがふと思うことをしたためた詩のようなものまであったり。

現在とはまた違う目的と、「ビューティフル」な暮らしへの過渡期の感覚が見える気がします。
日本の美しさや、まだ知らない日本を見つけたい、とにかく、旅に出てみたい。

そんな気持ちにさせるのは、現在ではなく40年前のあのポスターたち。
まさに「ディスカバー・ジャパン」。

この展示を見て、「ここへ行きたい」ではなく、今すぐ東京駅から電車に飛び乗って、「どこか」へ旅に出たい、そんな気持ちが沸々とわいてきて。

…でも現実は、仕事帰り。

金曜の夜とはいえ、土日には予定があって。
宿の予約はもちろん、明日の着替えやスキンケア用品だって持ち合わせていない。

あまりに身軽でない自分に幻滅しながら、「東京駅直結のこの美術館で、こんな展示をするなんてなんともズルい!」なんて思ったり。笑


展示室を出ると、寄木造の床が素敵な休憩所にたどり着きます。
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窓の外には丸の内のビル街。
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休憩所の先へ行くと、そこはさっき見上げたドーム空間の2階。
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円形に渡された廊下の向こう岸に、ミュージアムショップがあります^^

せかせかとした人々の動きを、廊下から見下ろして。
さっきは自分もそこにいたのだなぁとしみじみ。

そこで、また印象的なコピーを思い出す。

「何年も忙しい日が続きましたね。」1970年

モーレツからビューティフルへ。
時代も意味も違ってくるけれど、私もせかせかした日々から、「ビューティフル」を探しに行きたい。

私にとっての「ビューティフル」な時間は、美術館にいる時間。

どこか、遠くの知らない美術館へ。
知らない空間で、それまで知らなかった「ビューティフル」に出会いたい。

ここ数か月は比較的近場を巡っていたArtripも、また「遠く」へ行きたい、という思いを強くしました。


外から東京駅を眺める。
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ライトアップされた、レトロな駅舎。
数え切れない人が、いろんな思いで、どこか「遠く」へ出発して来た場所。

ここでこの展示を見られてよかったと、改めて思いました*
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東京ステーションギャラリー。
大都会のビル街の中にあって、一歩足を踏み入れるだけで、こつこつという足音の響く穏やかな時間をくれる。

館内は、大正で時を止めた部分と、現代的な部分とが混在する。

せわしない日常の中で、ふと、立ち止まる機会をくれる、そんな場所。
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仕事帰り、疲れたな、今週忙しかったな…
そう思われたとき、ぜひ足を運んでみて頂きたい、そんな美術館です♡*

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いつもご覧頂き、有難うございます♪

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