近代日本が世界で覇権を握れなかった残念な理由 金融立国化できなかった「後発工業化国」の宿命

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当然のこととして、ドイツの工業化にはイギリスの工業化以上の資金が必要であった。そのために必要な資金は、巨大な銀行が提供した。

イギリスの工業化でも鉄道は重要であったが、ヨーロッパ大陸においては、鉄道はさらに重要性を増した。鉄道によって、ヨーロッパ大陸のあちこちから物資を輸送することができたのみならず、その鉄道は各地の港と直接つながっており、世界各地の商品を直接いろいろな土地へと輸送することができたのである。ヨーロッパ大陸の市場は、鉄道によって統一されていくことになった。

工業化による革新は国境を越えて広がり、地域から地域へと新産業が広まり、市場が拡大・進化していった。一種の市場統合が発生し、ほとんどすべての地域で一人あたりの所得が増大した。ヨーロッパ「大陸」では市場が一つになっていったのに対し、イギリスは植民地との絆を深め、イギリス帝国の一体化を増す傾向が見られたのである。

コミッション・キャピタリズムの成立

18世紀後半に綿織物工業の発展により世界最初の産業革命を成功させたイギリスであったが、イギリスの貿易収支が黒字であったことは1710-1900年において、ほとんどなかったのである。「世界の工場」といわれ、綿織物工業によって世界最初の工業国家になったイギリスであったが、貿易収支から判断するなら、それはイギリス経済に大きなプラスを与えてはいなかったのだ。

19世紀後半以降、海運業からの純収入、保険や貿易による利益、サービスからの収入が増えていった。それが、イギリスが覇権国家になることに大きく貢献したのだ。19世紀のイギリスは世界最大の海運国家であり、海上保険は大きく発展した。もっとも大事だったのは、電信であった。

世界の商業取引の決済がなされる場所こそ、世界経済の中心となる。そのために、決済の中心地となる国に多額の手数料収入が流れる。国際貿易の決済ができる都市はかぎられており、その都市が、世界金融の中核であり、その都市が属する国家は、膨大な手数料(コミッション)収入を手に入れることができる。

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