表現規制反対運動の古参であるはずの高村武義氏*1が、バイセクシャルで話題となったスーパーマンの息子が、息子の名前を冠したシリーズに続くことを打ち切りだと主張して、さまざまな角度から否定されている。
togetter.com
情報源がデイリーメールのような信頼できないものであったり、アメコミが人気にかかわりなくシリーズ名を変えることは珍しくなかったり、ライターのトム・テイラー氏によって公式に否定されていることが指摘されている。
しかし高村氏は批判する人々をブロックして、自説を維持しようとしている。
そこで情報源として提示したのも保守系WEBメディアのブライドバートだったり*2、信頼できそうな媒体の記事が実際には正反対の内容だったりして、重ねて批判されている。
サジェストガーと言う前に少しは調べましょうね。
複数メディアで報道されてると言ったでしょ。
貴方は自分にリテラシーが無いことを自白しただけですね。
ブライトバート・ニュース。二枚目のhttp://CBR.comの記事は「キャンセルされたという話が出たがすぐに訂正された」という内容の記事です。読めばすぐに分かってしまうからって見出しのスクショしか貼らないのはさすがに悪質ですよ。
次のミニシリーズ。全6本で別アースの黒人スーパーマンや悪のスーパーマンなどスーパーマン系のキャラが入り乱れる活劇。
社会問題や政治問題を扱ってる現行シリーズから、路線的に決別する内容だ。
https://thepopverse.com/adventures-of-superman-jon-kent-dc-new-york-comic-con-nycc-2022
高村大先生がひけらかしてたスーパーマン新シリーズのネタ元はこのトム・テイラーへのインタビュー記事だろうな(DCウルトラマンとかの言及あり)
この記事には前シリーズが不評とか路線を変更するなんて一言も出てない、むしろ製作者は記事内で「非常に好評だった点」として話してるのに、高村はこの記事を自分の憶測でしかない真逆の内容の補強として紹介してるんだよな。確信犯なんやなと思ったわ。
ただし、ひとつの記事の内容を正反対に解釈したのは、google翻訳で逆の意味になる記事タイトルだけ読んで根拠になると思いこみ、記事本文まで目をとおさなかった可能性もある。
2枚目のCBRの記事ですが、本当なら「トム・テイラーが「キャンセルされた」説を否定」と読むところを、おそらく高村さんは機械翻訳にかけて間違った翻訳結果が出力されてしまったのでしょう。
自説を維持することを優先して情報源に注意することができないことまでは、良くも悪くも珍しいことではない。
しかし売れゆきが悪いという証拠を求めて、提示されたAmazonのランキングが1位から17位に落ちたことを根拠として、トム・テイラー氏が信用できないという主張はどこまで本気だろうか。
ちなみに作者のトム・テイラーは、#16 のアマラン瞬間風速のスクショを出して、”Superman Son Of Kal-El”のは売れてる!と偽装した過去がある。
海外youtuberに2日目にはランキング17位に下落してるぞと突っ込まれたが。
おおむねシリーズ作品は続刊で売れ行きが落ちるものなのに、新作のAmazonランキングが1日だけ1位では売り上げ不振の証拠になるのであれば、大半のアメコミシリーズは打ち切りの危機にあるはずだ。
そもそも高村氏は少し前から、差別的な表現については資本主義市場に淘汰をゆだねる日本共産党の態度に対して、表現規制だとして反対してきた。
[B! 表現・思想] 政党の姿勢でいえば、性的少数者を漫画などの悪影響とみなす支持団体は軽視され、表現の自由市場にまかせる表明が表現弾圧あつかいされることが不思議 - 法華狼の日記
taka_take フェミ議連の表現規制を擁護した法華狼は、今更共産党の表現規制は綺麗な規制と擁護。他人の弾圧は悪だが、自分達の弾圧は正義という党派性のダブスタの地金がもろに出てる。歪みきった限界左翼の典型例
ひとつの作品シリーズが市場で淘汰されることを望むかのような今回のふるまいは、高村氏こそが二重基準をもちいていることをあらわしている。
このように売れゆきと作品の価値が同一ではないことは、漫画家の森田崇氏が、おそらくエアリプで他の論点もいくつかふくめて批判している。
アメコミ詳しくない上にこだわりもあるわけじゃないからほんとは首を突っ込みたくないんだけど、「新しいキャラとしてやるならいいのに」って観点なら「スーパーマンの息子というのなら良し」じゃないとおかしいと思う
まあ別にどこも一枚板ではないから仕方ない(言ってる人はそれぞれきっと違う)んだけど、「ゴールポストを動かす」ように見えるのはどっちから見てもそうなんだろうなと思う
あと「売れてないからダメでしょw」みたいなのは普通に俺から見ても気に障る(;´Д`)
森田氏の代表作『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』が外国の小説のコミカライズで、それも一時期は打ち切りの危機にあった実体験からくる言葉かもしれない。
さて、ここまでは先述のように珍しい光景ではない。高村氏が好まない表現は消すことを呼びかけたり、ひろった画像で間違った情報を流すことは以前にもあった。
hokke-ookami.hatenablog.com
しかしアメコミ愛好者とのやりとりのなかで「次シリーズのイメージ画」「次シリーズの存在を示すエビデンス」として提示したイラストが、現行シリーズが過去につかった表紙という展開は、さすがに見ていて笑った*3。
何が存在しないですって?
はい、次シリーズのイメージ画ね。
自分が書いたツイートも覚えてない人でしたか。
私は次シリーズの存在を示すエビデンス(右図)をすでに貴方に提示しました。
私は説明責任は果たしました。
貴方が現実を受け入れないのは自由ですが、そういう人間に私はこれ以上構う気はありません。
DCは『スーパーマン:サン・オブ・カル=エル』誌にて、ドリーマーことニア・ナルが登場する事を予告。
ドリーマーはドラマ『スーパーガール』が初登場のキャラクター。リージョン・オブ・スーパーヒーローズのドリームガールの先祖にあたり、彼女同様、予知能力の持ち主。
https://gamesradar.com/supergirls-dreamer-makes-her-dc-universe-comic-book-debut-in-july/
先述のインタビュー記事にイメージ画のようにつかわれていたため、色眼鏡で見ていた高村氏は思いこみを強化してしまったのだろう。実際は新規シリーズが現行シリーズの延長にある証拠だったわけだ。
一応、過去のイラストを新作のイメージ画に流用することがないとはいえない。しかしそのイラスト自体が次シリーズの存在をしめす証拠になるはずもない。
しかもスーパーマンの息子とならぶ女性ヒーローも、登場巻のAmazonレビューで話題になっているようにトランスセクシャルだ。まさに高村氏のいう「ポリコレ路線」であろうことに皮肉を感じざるをえない。
ちなみに隣にいるヒーローはドリーマーというCWスーパーマン出身の初のトランスヒーローです(ちなみに演じた役者さんは初登場時に大変喜んでツイートしてました)
あ、すいませんCWスーパーガールです。素で間違えた。恥ずかしい…
もっとも高村氏は、新顔の男性キャラクターがバイセクシャルと明かされたことは拒絶しつつ、既存の女性キャラクターが男性と決別して女性と愛しあう新展開には「百合」として歓迎している。
路線変更してもスーパーマン(ジョン・ケント)のバイセクシャルはなくならないでしょうね~。
ちなみに人気のあるバットマンシリーズではハーレイクインが元彼のジョーカーをボコボコにしたり、ポイズンアイビーとキスしてるのよね。バイセクシャルの時代ですかね~。
なぜ百合は許せるのか(許せるッ!
スーパーマンの息子が予告段階で話題になっていた時、一種の紹介をかねて比較するエントリをあげたが、まさかこうも典型的な反応を高村氏がするとは予想できなかった。
hokke-ookami.hatenablog.com
さらに高村氏は、近年も映画化されている有名な女性ヒーローに対しては、おそらく好みではない絵柄というだけで「こんなブス」と評して、売れないことを当然視している。
こんなブスなワンダーウーマンで売ってるんじゃ、そりゃ売れんわ
高村氏は単純に、趣味嗜好で擁護したい表現と排除したい表現を選別して、後から理屈をつけているだけなのかもしれない。ならばそれは表現規制反対運動ではない。
*1:はてなアカウントはid:taka_take。
*2:もともとシリーズ打ち切りという主張は高村氏が発端ではなく、「海外の反応」系のまとめブログが保守反動的な主張を輸入することで、日本のインターネットにも流れていた。最初に注目された「ユルクヤル、外国人から見た世界」のはてなブックマークを見ると信用するコメントが少なくない。b.hatena.ne.jp
*3:Togetterに詳細な指摘がまとめられているが、高村氏は引用を削除しつつも元のツイートは削除せず、タイムラインにおける自説の維持をねらっているようだ。togetter.com