【銘柄分析】ZIM統合海運事業会社

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 今年来てたよね、海運バブル。僕は波に乗れなかったけどさ、畜生。ともあれ僕個人は海運ほど長期投資に適してないセクターもないと思ってる。ジェットコースターのような10年チャートが物語るように業績の振れ幅が大きいのだ。

 そんな僕がちょっと面白そうな海運株を見つけたの紹介する。

 今回、銘柄分析するのはイスラエルの海運会社、ZIM統合海運事業会社(英 ZIM Integrated Shipping)。1945年にイスラエル建国と共に設立された由緒ある会社だが、民営化されたのは2004年、上場したのは2020年と比較的若い会社と見ている。 

 僕が言うまでもなく海運会社の主たる収益は輸送料にある。この業界の性質が非常に厄介なのだ。僕が先ほど海運セクターは長期投資に適さないと言った理由はこの海運会社の体質にある。輸送費が景気によって大きく上下するし、次のサイクルまっでの期間が長い。しかも、船の製造には時間がかかる故に、海運会社は需要に対して供給を調整できないという極めてリスキーな経営を強いられる事になる。それでもグローバリズムが加速する経済の物流の中核を担ってるのは海運だ。どれだけ会社が不利益を被ろうとも自転車操業を強いられる、ある意味で不運な業種とも言える。

 前置きとしての海運セクター全般の体質はここまで。本題のZIMの業績やビジネスに切り込む前に同セクターを代表する2社とZIMの収益力を簡易的に比較した以下の表をご覧いただきたい。

             海運3種

表1.1 日本郵船(9101),ZIM,DACの3社の収益性の比較

日本郵船:9101 ZIM Integrated Shipping:ZIM Danaos Corp:DAC


 当然ながら、こんな簡易的な指標を並べ立てた所で会社の本質は勿論の事、将来リターンなど分かりっこない。難しいよね、株って。しかし、同業他社と比較してズバ抜けて高い投下資本利益率(ROIC)、そしてマイナスのキャッシュコンバータサイクル(CCC)は同業他社すると光る物がある。

(現代の企業は掛金、つまりは「信用」を使って取引する。それ故に売上が直ちにキャッシュインフローに直結しない。CCCについて詳しく書くと記事が一本書けてしまうので割愛する)

  なぜ、ZIMが他社と比較してこれだけ数字をはじき出せるか? ユダ公という世界一頭のいい民族が経営しているからと言ってしまえばそれまで。だが、そこで思考停止したくはない。そこで謎を紐解くべく、ZIMの競争戦略にメスを入れる。

 マイナスのCCCは何を意味するか? つまりは常に余剰の資本を浮かせた状態で経営を回せるという事だ。売上が計上される前に資金の回収が終わっているため、即座に次のビジネスに資本を回せる。海運業の場合は船が出航する以前に運賃が支払われているという事だ。浮いたキャッシュで次の便が出せるというのはそれだけで他社と比較して優位になる。

 そして何よりZIMの特徴は自社で船を持たない事。運航する船のほとんどは借りた船で便を出す。これによって船という資産によって肥大化したバランスシートに対し、景気変動による需要のブレで利益額が左右されるというリスクを回避しているのだ。

 また、同社はIT技術を利用したDX化にも取り組んでおり、ブロックチェーンを用いて船荷証券の管理を試みてる。ブロックチェーンをスキームビジネスではなく、実利を伴うビジネスで分散型台帳技術として利用してるだけでも好感が持てる。僕としてもこれからが非常に楽しみな会社だ。

 以上だ。ZIMシッピングが救世の方舟となるか、または沈みゆく泥船に過ぎぬのか。その結末は、Arleのクソブログをこれからもチェックだ。

P.S

 これ地味にすごいと思う

地味にすごい


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