公務員の受験を考えた場合に、
「難易度は大学受験でいえばどの程度なのか?」
「合格できそうな受験先ってどこだろうか?」
「やっぱり難関大学出身でないと合格は難しいんじゃないの?」
こんな話をよく耳にしませんか?
ここでは、2022年の現時点で公務員試験の合格率・倍率と公務員試験が難しいといわれる理由を具体的に示しつつ、実際の難易度と合格に必要な知識を解説していきたいと思います。
このコラムを読むことで、いたずらに「公務員の難易度は高いから諦めよう」などと考えず、チャレンジする勇気を持っていただければ幸いです。
目次
公務員試験の難易度・合格率はどれくらい?
人事院が発表している「令和4年度国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況」と「令和4年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)実施状況」を参考に国家公務員の受験者数、最終合格者数を比較し、合格率と倍率を算出しました。
区分 | 受験者数 | 最終合格者数 | 合格率 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
国家総合職 | 13,674(5,821) | 1,255(397) | 9.1%(6.8%) | 10.8倍 |
国家一般職(行政職) | 23,711(10,365) | 6,099(2,691) | 25.7%(25.9%) | 3.8倍 |
国家一般職(行政職以外) | 4,392(1,247) | 2,057(580) | 46.8%(46.5%) | 2.1倍 |
国家公務員試験の難易度を合格率(倍率)で比較した際、国家一般職の合格率25.7%(3.8倍)、国家総合職の合格率9.1%(10.8倍)となり、総合職は約11人に1人採用されているため合格率が低く、倍率が高いことがわかります。
行政職以外は46.8%(2.1倍)と国家一般職より合格率が高く、約2人に1人採用されるなど低い傾向にあります。
ただし行政職以外の場合、専門的な知識が必要になるため一般職や総合職とは別に難易度が高い試験になるため注意が必要です。
※出典:2022年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)実施状況
※出典:2022年度国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況
また、総務省が発表している「競争試験における受験者数、合格者数、採用者数、競争率の推移」の令和2年度の採用情報を参考に地方公務員の地域別受験者数、最終合格者数の比較、合格率・倍率を算出しました。
区分 | 受験者数 | 最終合格者数 | 合格率 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
地方公務員(都道府県) | 78,438 | 13,158 | 16.6% | 5.9倍 |
地方公務員(市区) | 171,563 | 18,274 | 10.6% | 9.3倍 |
地方公務員(町村) | 9,656 | 1,425 | 14.7% | 6.7倍 |
一方、地方公務員の中では都道府県採用が16.6%(5.9倍)、市区採用が10.6%(9.3倍)、町村採用が14.7%(6.7倍)となり、市区採用は9人に1人採用されているため合格率が低く、倍率が高いことがわかります。
ただし市区の採用試験内容が難しい、というわけではなく市区の受験者数が他の地域より圧倒的に多いため、合格率が低く倍率が高い傾向にあります。
※参考:競争試験における受験者数、合格者数、採用者数、競争率の推移
公務員試験の内容と合格ライン
公務員試験も就職試験である以上、最終的には面接試験が実施されるのは当然ですが、面接に辿り着くまでに筆記試験の壁を越えなければなりません。
ここで、例年3万人前後が受験する国家一般職(行政系)の筆記試験についてみてみましょう。
教養択一 | 一般知能(文章理解・数的処理)27題 一般知識(自然・人文・社会・時事)13題 |
専門択一 | 16科目(各5題)から8科目(40題)を選択回答 憲法、行政法、民法、経済学、財政学・経済事情、経営学、政治学、行政学、社会学、国際関係、心理学、教育学、英語(基礎)、英語(一般) |
教養記述 | 文章による表現力、課題に関する理解力などについての短い論文による筆記試験 |
教養択一は高校までに勉強した英数理国社、専門択一は大学で勉強する法律、経済などの専門分野から幅広く出題され、加えて教養記述まであります。
すると、
「高校まで数学が苦手だったから数的処理なんてできない」
「センター受験していないから教養の知識がない」
「法学部でも経済学部でもないから無理」
といったネガティヴな発言をよく耳にします。
ですが、これはチャレンジしない理由を探しているに過ぎません。
筆記試験なんて所詮は暗記です。しかも、5肢択一です。
教養試験のレベルはセンター試験よりも易しい程度、専門択一のレベルも行政書士や宅建士といった資格試験よりも基礎的な知識を問う問題がほとんどです。
ただ、公務員試験は科目が多いので、計画性が要求されるだけです。
意欲があって、戦略を立て、半年から1年間集中力を維持できれば、合格レベルにたどり着けます。
高卒や大学中退者で、大卒レベルの公務員試験に合格した方を筆者は何人も見てきました(公務員試験のほとんどは学歴制限がありません。
大卒レベルとは、試験が大卒レベルの出題内容というだけです)。
出身大学や学部なんかでふるい落とされることはまずない、真の意味で実力主義の試験です。
公務員試験の一次試験は何%以上正解すれば突破できる?
公務員は競争試験なので、何%以上正解すれば確実に合格できるとは言い切れませんが、筆記試験の得点目標は、教養6割、専門7割といわれています。
ただ、これもあくまで一般的な目標設定の目安にしか過ぎません。
つまり、「教養6割、専門7割」取れれば、ほぼ確実に合格できるだろうということで、実際はこの数値より低い点数で合格した例は多々あります。
職種によっては必要得点が異なることも
他方、教養・専門どちらも出題される職種では、バランスが要求され、足切りラインが設定されていることがほとんどです。
つまり、仮に専門で満点を取れたとしても、教養で一定数水準を超えていなければ不合格になるとされるのです。
実際に、試験終了後に成績開示をして教養で1点足りなかったために筆記試験が不合格だった受験生もいます。
また、ある警察官採用試験では、漢字の点数が非常に重視され、仮に教養択一で高得点を取っていても、漢字の書き取りで8割未満だと合格できないとされています。
さらに、教養記述を非常に重視する自治体もあって、教養記述の点数で順位が数百人単位で上下することもあります。
こういった自治体を受験する場合には、記述対策に勉強時間を多く割り当てることが必須となります。
専門科目が課されるか否かで難易度に差が出る
筆記試験に専門科目があると負担は増え、難易度を押し上げます。
先ほどご紹介した国家総合職をはじめとする国家公務員、地方上級(道府県と政令指定都市)のほとんど、東京都庁、東京特別区には専門科目があります。
これに対して、政令指定都市以外の市役所のほとんどは教養試験のみで受験が可能です。
教養 | 専門 | |||
択一 | 記述 | 択一 | 記述 | |
国家一般職 | ◯ | ◯ | ◯ | × |
国税専門官 | ◯ | × | ◯ | ◯ |
国立大学法人等職員 | ◯ | × | × | × |
地方上級※ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
東京特別区 | ◯ | ◯ | ◯ | × |
東京都 | ◯ | ◯ | × | ◯ |
市役所(政令指定都市以外)※ | ◯ | ◯ | × | × |
◯…出題あり ×…出題なし
※いくつかの例外あり
ほぼ全ての公務員試験では教養試験が課されるので教養対策はどこを受験しようが、必須です。
これに加えて専門試験まであるとなれば、筆記試験対策には2~3倍のエネルギーが必要になります。
もし、本試験までの時間に余裕が無いようであれば、専門試験のある職種を避けるのが得策かも知れません。
ですが、受験科目で就職先を選ぶより、本試験までのスケジュールに余裕を持たせ、難易度を下げ、選択肢を広げるようにされることをお勧めします。
受験倍率の高さからイメージするほど難易度は高くない!
公務員試験は、公明正大に実施され、毎年、申込者数や合格者数が公表されます。
それゆえ、見た目の倍率に惑わされることが多々あります。
ここで、人気があり、難易度が高いと考えられている東京都庁(Ⅰ類B一般方式)の合格者数を東京都が発表している「令和3年度の職員採用試験(選考)実施状況」を参考にしてみましょう。
採用予定者数286人に対して、申込者数3,663人でした。
すると、「倍率12.8倍!?」と一瞬ひるんでしまいそうになりますが、実際には受験者数2,493人で、最終合格者数407人で倍率は6.1倍でした。
6人に1人が採用されていることになります。
そして、申込者の約3割近くが実際に受験していません。
- 記念受験する人が一定数存在する(公務員の受験は無料です)
- 併願を考えてとりあえず申し込みだけはして直前に受験するかを決める人がいる
- 勉強ができないで本試験日を迎える人が相当数いる
といった点を考慮すると、実質的な倍率は高くてもせいぜい3~4倍といったところです。
「2021年度の国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況」によると国家一般職全般の実施結果は、申込者数27,317人に対し、一次試験合格者数11,058人 、最終合格者数7,553人で倍率は3.1倍でした。
国家一般職全般の受験者数は20,718人のため、実際の倍率は2.7倍と約2~3人に1人採用されています。
※参考:2021年度国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況
東京都庁(Ⅰ類B一般方式)の倍率と比べ、国家一般職の倍率は低いことがわかります。
民間企業の倍率は公表されていないだけあって、人気企業だと何百倍、何千倍という企業もあります。
それに比べればはるかに手堅い数字です。
もちろん、「倍率が低い=試験の難易度が低い」ではありません。
試験科目の多さや問題の質からしても、それなりの戦略と集中力をもって準備しなければならないのは否定できません。
ただ、世間が考えている以上に、筆記試験のハードルは低く、諦めずに勉強し続ける努力が実るのが公務員試験だといえるのは確かです。
最後に
過去の合格者たちが口を揃えて言うのは、「公務員試験は努力が実る試験」です。
学歴、出身大学、偏差値…そんなことに捕らわれることなく、意欲を持って、戦略を立て、集中力を維持すれば合格できます。
もし、公務の中に、「やりたい仕事」「入りたい組織」があると考えるなら、ぜひチャレンジしてみてください。
最後に、合格者たちが口を揃えて言った言葉をもう一つご紹介しましょう。
「勉強ってやり始めると面白くなってきた。もっと勉強したい」
アガルートアカデミーでは、公務員試験の最短合格を目指すためのカリキュラムをご用意しています。公務員試験を目指される方はぜひご検討ください。