旧統一教会関連会社が北朝鮮に潜水艦を仲介 日本人信者の献金が北の兵器開発に使われていないか 【報道1930】
過去にないペースでミサイル実験を繰り返す北朝鮮。
自民党議員との関係と高額献金が社会問題となっている旧統一教会。
日本にとって悩みの種であるこの二つには深い関係がある。
北朝鮮と旧統一教会と日本…その知られざる関係性を読み解いた。
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■お土産3000億円持参して訪朝
今年8月、旧統一教会の文鮮明教会創始者没後10年の式典に金正恩氏から花環と弔電が届いた。2019年には金正恩氏から韓鶴子氏に訪朝の招待状が届いている。結局コロナ禍で頓挫したものの実行されていれば、世界の国会議員900人が随行したという。その中には現在教会との関係が取り沙汰されている自民党の先生方が何人も名を連ねることになったのか…30年にわたり旧統一教会問題に取り組む渡辺弁護士は言う。
弁護士 渡辺博氏
「1991年に文鮮明さんが訪朝した際は3000億円とか持参したといわれてます。今回も実現していればそれなりのお土産は持って訪朝したでしょう。統一教会は世界で活動していますが、献金額の8割は日本人の市民から献金と称して奪い取ったお金なんです。お土産で持っていくお金も殆どが日本の市民から奪い取ったお金ということです」
統一教会と北朝鮮の関係が表面化したのは、渡辺弁護士が3000億円のお土産を持参したという1991年の文鮮明創始者の訪朝だ。当時日本では統一教会による霊感商法や合同結婚式が社会問題化していた。バブルに沸いた日本人のお金が統一教会に流れ、北朝鮮へのお土産になったことは想像するに難くない。しかし、そもそも日本が統一教会を受け入れたのは“反共”がキーワードだった。反共産主義を謳っていた教会が何故、北朝鮮と親密な関係になったのか。
■「経済的に手を差しのべてくれるものは、今までの敵であろうと受け入れたい」
91年の訪朝では、渡辺弁護士は3000億のお土産といったが、当時のアメリカ国防省の報告書では文鮮明氏から金日成氏に4500億円が提供されたとある。この訪朝は文鮮明氏の方から働きかけたといわれている。
慶応義塾大学 礒崎敦仁教授
「これはソ連崩壊直前の時ですよ。東ヨーロッパのすべての社会主義体制が滅びていく中で、北朝鮮は孤立感を深めた。だから日本とも国交正常化を目指し、経済的に手を差しのべてくれるものは、今までの敵であろうと受け入れたいという思惑があった。(中略~統一教会の反共思想を受け入れた?)北朝鮮側はそういうところは割り切りますよね。統一教会側は“反共”ではなく、“勝共”という言葉をこだわって使っている。つまり“共産主義を超える”、北朝鮮のチュチェ思想を超えるものを金日成に教えに行ったという感覚なんですね。(中略)それが今、北朝鮮の国際的なホテルにいる日本人は、よど号メンバーか統一教会といわれるくらいに北に入り込んでいる」
■「統一教会に対する“北のおもてなし”」
北朝鮮に平和自動車という初の国産自動車会社がある。これは旧統一教会が作った合弁会社。社長は当然統一教会信者だ。この社長を金正恩氏が称える場にいた韓国系アメリカ人の牧師チェ・ジェヨン氏に話を聞いた。彼は統一教会とは関係がないが、北朝鮮で統一教会が特別扱いされていたのを目の当たりにしている。
チェ・ジェヨン牧師
「驚いたのは北(朝鮮)の人たちが統一教会を正当なキリスト教だと思っていたことです。そのくらい官僚も同胞もありがたがっていた。統一教会を悪く思ってはいけない、大変だった時に助けてくれたから。(中略)金正恩総書記は統一教会信者の平和自動車・パク社長だけをそばに呼び寄せ写真を1対1で撮って、さらに名誉平壌市民証も与えるという統一教会に対する“北のおもてなし”を目の当たりにしました」
統一教会は布教のために北朝鮮に投資する。平和自動車をはじめ、普通江ホテル、安山館ホテル、ツアー会社など十数の事業に投資。これによって北にドルが流入し、北朝鮮は統一教会に頭が上がらなくなった。現在、統一教会は北の流通業を掌握しようと事業を展開しているという。
■「1人100万持って行くとして、1000人で…」
思えば、文鮮明氏も韓鶴子氏も北朝鮮出身。旧統一教会と北朝鮮が深い関係であっても不思議ではない。統一教会側は文鮮明氏生誕の地を、北朝鮮から99年の租借地として認めさせ、世界平和公園として一大リゾートとして整備する予定だったという。しかし、租借まではできたものの、文鮮明氏の生誕地を開発することは許さなかったという。
チェ・ジェヨン牧師
「その地に実際行ってみると何も開発されてなくてただ生家だけがきれいに立て替えられ残りは手つかずのままなんです。なぜなら“首領”は一人で、北朝鮮は、やすやすと認めないから。太陽は二つはありえない。北朝鮮は緩急をつけていたということです」
しかし、ほぼ何もない場所に信者を連れた生地巡礼ツアーは行われ、日本から信者を連れていき多額の献金は集められていたという。
弁護士 渡辺博氏
「生地巡礼ツアーが90年代から行われて、日本人信者が年間1000人参加した。ツアーに行くだけじゃダメで、ちゃんと献金もしてくる。そのお金は生誕の地に捧げるという名目で北朝鮮に届く。1人100万持って行くとして、1000人で結構な金額ですよ。それをずーっと続けてた。10年くらい・・・」
1000人が100万円とすると毎年10億円。それを10年として100億円。その金は北朝鮮側に渡っていたとみるのが普通だろう。こうした多額の金が何に使われたのだろうか…
■北の潜水艦SLBMの開発にも旧統一教会が
旧統一教会と北朝鮮そして兵器開発…。この3つをつなぐ可能性のある出来事が94年にあった。ロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却される際に仲介していたのが東京杉並区にあった小さな商社。潜水艦を“鉄くず”と偽って申告して取引を成立させていたのだ。社員は4人。全員が旧統一教会の合同結婚式に出ていた信者だったのだ。これを取材していたのは前参議院議員でジャーナリストの有田芳生氏。
ジャーナリスト 有田芳生氏
「びっくりした。家の近所だったので自転車で言ったらアパートの2階の一室なんです。(中略)韓国で入手した名簿に合同結婚式の名前があって4人が一致した。そこからが始まり」
旧統一教会はこの会社との関係を否定、この時も警察は刑事事件にできずに終わっている。しかしこの取引について韓国の国防部は2016年、北朝鮮がSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルを打ち上げた際にこのロシアから統一教会の信者が仲介して北朝鮮の手に渡った“鉄くず”が、開発の元になっていたという報告を国会で行っている。
北朝鮮に流れる旧統一教会の資金。もとはと言えば日本人からの献金がほとんどだが、資金や、関係性が北の兵器開発に利用されていたとすれば、言語道断である。日本の保守政治家が中心になって徹底的な解明をしてくれるよう望みたい。
(BS-TBS 『報道1930』 10月12日放送より)