10月7日(金)に発売された新型VRヘッドセット「PICO 4」は、「軽量・高画質・スタンドアロン」の三要素を備えた期待の一台です。しかし、一体型VRヘッドセットというカテゴリには、いまなお大きなシェアを誇る「Meta Quest 2」が存在します。
2020年からVR業界のスタンダードとして普及してきた「Meta Quest 2」と、それをしのぎ得るスペックを有する新星「PICO 4」。はたしてどちらを買うべきでしょうか?
本記事では、様々な観点から「PICO 4」と「Meta Quest 2」を比較。どちらを買うべきか、判断の助けとなるような情報を提示していきます。
スペック比較
PICO 4 |
Meta Quest 2 |
|
価格(税込) |
49,000円(128GB) |
59,400円(128GB) |
ディスプレイ |
LCD |
LCD |
レンズ |
パンケーキレンズ |
フレネルレンズ |
解像度(左右の合計) |
4320×2160 |
3664×1920 |
リフレッシュレート |
72Hz, 90Hz |
最大120Hz |
視野角 |
105度(対角) |
110度(対角) |
トラッキング |
一体型 |
一体型 |
重量 |
588.5g(実測値) |
503g(※1) |
ストレージ |
128GB/256GB |
128GB/256GB |
RAM |
8GB |
6GB |
IPD(瞳孔間距離) |
62~72mm |
58mm、63mm、68mm |
イヤホンジャック |
なし |
あり |
バッテリー稼働時間 |
2.5~3時間 |
2~3時間(※2) |
コントローラー電源 |
1つにつき単3乾電池2本 |
1つにつき単3乾電池1本 |
※1:デフォルトの布ストラップ装着時の重量。「Eliteストラップ」などに交換するともっと重くなる。
※2:「バッテリー付きEliteストラップ」を装着時はさらに延長。
軽いのはどっち?
単純な重さで比較すると「Meta Quest 2」の方が軽量ですが、これはデフォルトの布製ストラップを装着している数値です。布製ストラップは重量が前方に偏るため、顔面全体で重さを受け止めてしまい、「重さ」を感じやすくなっています。
一方、「PICO 4」は重量バランスが前後で均等になるよう設計されており、重量が顔面と後頭部で分散するようになっています。このため、相対的に「軽さ」を感じやすくなっています。
ケースバイケースですが、総合的な「軽さ」を体感しやすいのは「PICO 4」です。
映像が綺麗なのはどっち?
解像度の数値を比較すると「PICO 4」の方が勝っています。ただし、実際にどちらを「より鮮明」と感じるかは個人差があります。
筆者の体感では、「PICO 4」の方が「Meta Quest 2」より僅差で「より鮮明」と感じます。しかし決定的な差ではなく、「Meta Quest 2」でも不足はないと言えます。
本体の拡張性は?
基本的には、ストラップフレームもフェイスクッションも自由に脱着できる「Meta Quest 2」の方が拡張性は高いです。公式でも、グリップ力を向上させる「Elietストラップ」が発売されているほか、サードパーティ製の優れたカスタマイズアイテムが多く出回っています。
「PICO 4」はまだ発売前のデバイスですが、ストラップフレームは本体から脱着不可なため、拡張性は乏しい可能性が高いです。
イヤホンは使える?
「Meta Quest 2」にはイヤホンジャックがあるので、好きなイヤホンを使うことができます。一方で「PICO 4」にはイヤホンジャックはありません。USB Type-Cポートはあるため、イヤホン変換アダプターを使えばイヤホンを使うことはできます。
遊べるゲームの数は?
正確な総数こそ不明ですが、正規ストアに加え「App Lab」でも配信されているゲームがあるため、遊べるゲームの数は「Meta Quest 2」の圧勝です。「Beat Saber」や「バイオハザード4 VR」といった人気タイトルを遊べるのも「Meta Quest 2」ならではの利点です。
一方で、「PICO 4」にもだいたい100本近くのゲームが配信されており、「After the Fall」や「Blade & Sorcery: Nomad」、「ALTDEUS: Beyond Chronos」といった人気タイトルも存在します。「PICO 4」の発売に合わせ、「ルインズメイガス」や「オノゴロ物語」といった国産VRゲームも配信が予定されており、今後ラインナップが充実していく可能性があります。
コンテンツ体験に差はある?
検証のため、筆者は「Meta Quest 2」でプレイ済みの「After the Fall」「Eleven Table Tennis」「SUPERHOT VR」「Altdeus:Beyond Chronos」の計4タイトルを「PICO 4」にてプレイしてみました。
あくまで筆者体感ですが、標準的なVRゲームを遊ぶ上では、「PICO 4」も「Meta Quest 2」も大きな差はありません。「PICO 4」の場合、良好な画質とヘッドセットの軽さから、ゲームプレイの体験の質は少し良いかも、というところ。
PCとつないでPCVRはできる?
「PICO 4」も「Meta Quest 2」も、基本機能としてPCと接続してPCVR専用コンテンツをプレイすることができます。いずれも有線接続、無線接続のどちらにも対応しています。
「Meta Quest 2」の場合、基本機能「Air Link」以外にも、「Virtual Desktop」というアプリを用いてもPCVRゲームをプレイすることができます。「PICO 4」には現状「Virtual Desktop」が配信されるかどうかが不明ですが、仮に配信されれば可能となるでしょう。
どちらを購入するべき?
「PICO 4」か「Meta Quest 2」か、購入の判断材料として考慮すべきは「VRを買う目的はなにか」です。いくつかケースが考えられるため、以下にて考察してみます。
これからVRに触れてみたい
VRをはじめる第一歩としては、安価で、軽量かつ高画質を実現した「PICO 4」はオススメできます。VRゲームにのめりこめなくても、「YouTube」や「Prime Video」などを見るプライベートシアターとしての活用も見込めます。
一方で、「Beat Saber」や「バイオハザード4 VR」など、「Meta Quest 2」でしか遊べない特定タイトルもいくつかあります。「VRChat」や「cluster」も、現状は「Meta Quest 2」でのみ配信されています。こうしたものを遊びたい場合はもちろん「Meta Quest 2」が選択肢となります。
また、「Meta Quest 2」は発売から2年以上経過しており、トラブルが起きた時の知識が各所で蓄積されています。「PICO 4」にはこうしたハウツーの蓄積はまだ少ないと見込まれるため、その点を不安視するのであれば「Meta Quest 2」が安全な選択と言えるでしょう。
PCVRコンテンツも遊び倒したい
PCVRとしても使用できるモードは「PICO 4」にも「Meta Quest 2」にも備わっています。ただし、動作の安定度や、トラブル時のハウツー蓄積レベルは、発売間もない「PICO 4」より「Meta Quest 2」の方が上と思われます。「PICO 4」でPCVRも遊び倒したい場合、トラブルに対する自己解決能力は必要、と心がけましょう。
すでに「Meta Quest 2」を所持している
「Meta Quest 2」を持っている人は「PICO 4」に乗り換えるべきかは、「Meta Quest 2」の重量をどう捉えているかで検討しましょう。もし「Meta Quest 2」が重くてつらいという場合は、「PICO 4」への乗り換えはアリです。そうでない場合、まだ独占タイトルも少ない「PICO 4」へ乗り換えるメリットは小さいです。
なお、一体型VRヘッドセットは、Meta社が「Project Cambria」と呼ばれる新型機種を近々発表する可能性もあります。「PICO 4」とは大きく方向性の異なるデバイスとなる可能性がありますが、競合となり得ることは留意しましょう。
2022年現在も、「Meta Quest 2」の優位性はまだまだ健在です。しかし、より軽く、より高画質な「PICO 4」も、人によっては選択肢となり得るほど魅力的な一台です。日々使うVRヘッドセットになにを求めるか、よく吟味して選択するとよいでしょう。
「PICO 4」のレビュー記事はこちら。