KANSAI UNIVERSITY

お知らせ

【芝井の目】卒業生のあなたへ

2018.06.11

 卒業式で私が送辞を読む間、一人の女子学生が涙を流していたと聞き、気になっていました。そのいきさつが、人づてにもらったあなたのメモでわかりました。二つのことが重なったのですね。ひとつは私が式辞で触れた「バングラデシュの女性の自立に力を貸すグラミン銀行と創設者ムハンマド・ユヌス氏」。もうひとつは在学中にあなたが全力をあげて実現した「エシコレ」(ethical fashion collectionの略)。つまり、華やかさだけでなく、途上国の女性の自立にまで目を向けたフアッションショー。これらが共鳴してあなたの心に漣(さざなみ)をたてたようです。
 しかし卒業式で私が呼びかけた「貧困など世界の問題に目を向けて」という思いは、「銀座にあるお米のメーカー」に就職されたと聞くあなたには、遠い話だったかもしれません。あなたの飛び込んだビジネスの世界と、私の呼びかけとは、一見かけ離れたものであるからです。ところが驚いたことにあなたは入社1ヶ月あまりで、その距離をうんと縮めたそうですね。きっかけは勤務先の社長、雑賀慶二さんの一言だったとか。「矛盾に満ちた世の中で、せめて自分の手の届く範囲は正義(理想)でありたい。」
 「ユヌス氏」は隣りにいたのです。あなたの最近のメールには「銀座にあるお米のメーカー」が5千㌔離れたシンガポールにある産婦人科に、妊婦さん向けの病院食に使うお米を納めている、とやや誇らしげに書かれていました。「米を通じて世界に健康を」とも記されています。
卒業直後にもらったメモの末尾に1行、「先生の送辞を聞くことができ、光栄でした」と書かれていました。いいえ、光栄なのはわたしなのです。わずかなきっかけで、顔も知らない一人の学生が社会人として羽ばたくのを知ることができたのですから。
 2018年商学部卒、林佑美さん。今春、あなたを含む6,356人の関大卒業生を世に送り出したことを、私は誇りに思っています。
  
  6月11日 学長 芝井 敬司