業界で注目を浴びるスタートアップの会社自体ではなく、今一番求めているポジション(急募求人)にフォーカスを当てて掘り下げていく本企画。
今回は番外編”デジタル庁の今”として4回に渡ってインタビューを実施。今注目を集めているデジタル庁準備室のお仕事について、実際にデジタル庁準備室で勤務しておられる皆様にお話を伺います。
2回目の今回は、デジタル庁準備室にてPMを担う岸田さん・内山さんに、仕事の詳細ややりがいをお聞きしました。
本記事の登場人物
内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 ITストラテジスト※ 岸田幸雄

東京大学文学部卒業後、日本IBMに入社。政府系金融システムの開発・保守を担当した後、エンタープライズ・アーキテクチャによる上流設計を行うアーキテクトに転ずる。以降多くの府省及び政府機関で情報システムの調査研究・企画・要件定義・調達支援等プロジェクトを歴任。2021年4月より内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室と兼業。
内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 プロジェクトマネージャー(システム企画)※ 内山 光

大学卒業後、GMOインターネットに入社。2007~2017年まで、ドメイン・ホスティング・クラウド・ブロックチェーン・暗号資産・海外事業等のサービス開発を担当。退職後、海外向けのグルメ・ビューティ・メディカルサービス「yathar」を開発。InterConにて「Top 50 Tech Companies Award 2019」受賞。現在、yathar Myanmarおよびyathar Pte取締役CTO兼任。2021年4月より内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室と兼業。
株式会社HERP 代表取締役CEO 庄田 一郎

京都大学法学部卒業後、リクルートに入社。SUUMOの営業を経て、リクルートホールディングスへ出向。エンジニア新卒採用に従事する。その後、エウレカに採用広報担当として入社し、同責任者に就任。2017年3月、HERPを創業。本記事ではインタビュアー、ちょこちょこ感想を挟む。
デジタル庁準備室について
デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指し設立準備中。
徹底的な国民目線でのサービス創出やデータ資源の利活用、社会全体のDXの推進を通じ、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を実現すべく、取組を推進しています。
本記事で取り上げるデジタル庁準備室の求人
※デジタル庁(準備中)Webサイトに新規タブで遷移します
民間人材でありながら、国の一大プロジェクトへPMとして参画。実際の業務内容とは
本日はよろしくお願いいたします!今日はデジタル庁にてPMを担当しているお二人にお話を伺います。
早速ですが、お二人は
どのような経歴で、なぜデジタル庁への参画を決められたのでしょうか?
日本アイ・ビー・エム株式会社にて、情報システムの上流工程の設計やコスト削減プロジェクトにアーキテクトとして携わってきました。
もともとデジタル庁はどんな人たちがどんなことをしていくのだろうかと興味がありました。そのタイミングで募集があったので、面接を受けたらその中身が分かるのではと思いエントリーしました。
その後本当に参画することになるとは思っていなかったのですが、内定をもらい、興味のあったデジタル庁に貢献できるのは嬉しいことだと思い参画を決めました。
なるほど。現在は兼業している形になるのでしょうか?
そうです。
官民で人材が行き来するリボルビングドアの考え方をデジタル庁も取り入れていますが、それに近いですね。
私は、GMOインターネット株式会社にて10年ほどPM・サービス開発を担当していました。クラウド・ブロックチェーン・暗号資産系のプロダクトを作ったり、海外進出の担当として駐在も数年経験しました。
海外で仕事をする中で東南アジア・アフリカのマーケットが拡大していくことに注目し、2017年から日本・ミャンマー・シンガポールで会社を立ち上げました。現在はそれらの会社の取締役CTOを務めています。
直近は新型コロナウィルスの影響で日本に完全に拠点を移して仕事をしていたのですが、改めて海外で仕事していた時にも感じた日本のデジタル化の遅れを痛感しました。これは外から眺めているだけではなくて、 日本人である自分達がどうにかしなければこれからも変わらないと思い 、デジタル庁への参画を決めました。
自分の会社を経営しながらのデジタル庁勤務は大変ではないですか?
もちろん大変ではありますが、
むしろ経営レイヤーの方のほうがコミットしやすい側面もあるのではと思いますよ。
自分が経営層だからこそ勤務時間の調整は融通が効きやすいですし、私は元々フルリモートの環境で各国の社員とやりとりをしていたので勤務形態に大きな変化なく業務を開始することができています。
なるほど。言われてみると確かにそうですね、融通が効きやすいし会社に学びを還元する立場としても良い経験になりそうです。
お二人はデジタル庁準備室では具体的にどのような業務を担当されているのでしょうか?
省庁内部で使う大型のシステム開発を担当しています。今までは省庁ごとに最適なシステムを採用してきていましたが、コスト最適化・利便性向上のために統合していくことを決めているので、そのために周辺業務の見直しを行ったり、その先にはデータ活用していくための基盤作りを行ったり、いかにコスト・運用を最適化できるかの設計を担当しています。
デジタル庁は目立つサービスも多いですが、中の業務システムの課題解決をしているイメージです。
かなり大掛かりなプロジェクトを任されているんですね!具体的には、直近どのようなことに取り組まれているのでしょうか?
今主に担当しているのは、自社運用していた経費精算システムをパブリッククラウド基盤に載せ替えるための検証です。
今の段階で確認しておくべき事項が網羅されているか、必要な要件はパブリッククラウド基盤でも満たせるのか、移行はどのようなステップで行うべきかのレビューを行なっています。
私も似た業務に携わっています。週の半分は法務省で、もう半分はデジタル庁で勤務しています。
法務省では法務省管轄のシステムの見直し・刷新を担当していて、現時点では予算要求が終わって要件定義・開発に入っている案件もあれば、これから予算要求する案件は開発妥当性・必然性・ベンダーロックインがないかのチェックなどを行っています。
イメージが湧いたと同時に、そういった業務を国という単位で担当されているなんてと改めて驚いています。お二人とも詳細にありがとうございました。
民間人材として省庁・国を変えていくことを期待される環境
参画して2ヶ月ほど経つと思いますが、入庁前のイメージと何かギャップはありますか?
ありますね。
業務効率については、これからどんどん解決していかねばと思っています。紙の資料も一部残っていますし、端末の用途やツールの縛りが多く生産性を上げられていません。コロナ禍によってオンラインの打ち合わせができるようになったりと変化はしているので、他のポイントも改善していきたいと思っています。
逆にポジティブなギャップで言うと、 既存の情報システムの健全な運用にもしっかり力を入れている のはすごく安心したポイントでした。
デジタル庁と言うと新しいことをやっていくぞ!というイメージが先行している部分もありますし、民間人材が入ることで新しい考え方を部分的に導入してしまい混乱をきたすのではと心配していたのですが、地味だが大事な業務にもしっかり取り組めています。
素敵ですね。業務効率については、これから変えていけそうですか?
変えていこうという人たちがたくさん入ってきているし、官僚の方々も同様の思いなので変えていける と思います。
一方ですぐに変えられるわけではもちろんなく、ビジョンを描き、そのために必要な業務を棚卸しして実現するという地道なプロセスが必要だと思っています。
ビジョンについての議論や意思決定にも、民間人材のみなさまは参加しているのでしょうか?
間接的に入ることもありますし、直接議論に参加をすることもあります。実は意外とオープンに議論がなされているのが実態だと思います。
そうなんですね。どこかにやりにくいところはないかとまだ疑ってしまいますが笑、ビジョンは官僚の方々と民間人材の方々で違っていたりはしないんですか?
”誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化”を目指すことが一番大きなビジョン であって、これは官民どちらも同じ考えです。
一方でその達成のためのKPIやプロセスに関しては意見が割れることもあります。官僚の中でもたくさんの省庁から人が来ていてカルチャーや優先順位の付け方が違っているので、丁寧な議論が必要ですね。
ただ、
融通が利かないことはなく、官民ともに柔軟に知恵を出し合って意思決定できていると感じています。
そうですね、デジタル庁の中の足並みは比較的揃っているように感じています。
一方でデジタル庁という新しい組織ができることで他省庁はこれまでの権限や予算が分断されてしまうので、それぞれが目的達成のために今までやってきたことができなくなってしまいます。そんな中で、他省庁と足並みを揃えるのはより時間がかかりそうだと思っています。
民間企業だと、困っている人がいる・ビジネスチャンスがある等を拠り所に事業を作っていきますが、
省庁の場合は事前に予算が確定していて、その中で意思決定する必要があるという特徴があります。組織が大きい分、自省庁目線になってしまうところもあるので、
フラットに国民のためになるのはどちらかという目線で意思決定できるようにしていきたいと思いますね。
それを加速させるために、デジタル庁が新設されるわけですからね。共通の目的のために共同して動ける状態を我々がつくっていけたらと思います。
なるほど、ありがとうございます。お二人がこれからデジタル庁で取り組みたいチャレンジはありますか?
PMのスキルを活かせると思って入庁しましたが、PMやシステムアーキテクトの業務範囲に閉じていたら達成できないことばかりで圧倒されています。
例えば、要件定義・ワークフロー整備は経験がありますが、各省庁の目的や歴史的背景を加味しながら物事を前に進めるのはすごく大変だと感じています。
もっと
業務スコープを広げて、国民のために意思決定できる組織にしていけたらと思っています。
官公庁には特徴的なルールもありますもんね。
ただ、通常企業として支援するときはそのルールをいかに理解して守るかが大事ですが、今回は立場が違って一顧客ではなく当事者なので、
ルールは知らないふりしてでも民間人材としての意見を伝えていくことも期待されていることかなと思っています。実際に我々も意見しやすい環境をつくってもらっていると感じているので、お互いに歩み寄りながら、その期待に応えていきたいと思っています。
民間人材としてフラットに意見して組織を変えてくことを期待されているわけですね。
その前提で、どのような方々に新たにデジタル庁に参画して欲しいと思われますか?
職種特化の募集になっているし、自分もアーキテクトという職種で応募しましたが、その名前にこだわる必要は全くないような、チャレンジできる範囲の広い環境です。特に今回の募集に関しては入庁後に内容がアップデートされていくものもあるので、
募集の職種名にとらわれることなく、広く捉えてチャレンジしてもらえたらと思います。
面接を受けることだけが目的でもいいので、ぜひ興味を持ったら応募してみてほしいと思います。
これまで民間でやってきた中で、国の規制や法律の範囲内で意思決定が必要なことが何度かあり、変えるのにはとてもパワーがかかるため悔しい思いをしたこともありました。しかし今、
急激に変化を起こせるタイミングに来ています 。コロナ禍により何十年も変えることができなかった印鑑文化が1ヶ月で変えられたり、変化を推奨するデジタル庁という組織風土も生まれています。
このタイミングで変えたいことを持っている人は、このタイミングでぜひチャレンジして欲しいと思います。
ぜひこれが変えたい!という思いを持った方にこの記事が届いて、さらに志ある方がデジタル庁に入庁するきっかけになったらと思います。
お忙しい中お話聞かせてくださり、ありがとうございました!
筆者の感想
今回はPMとして勤務されているお二人にお話をお伺いしました。内容としてもかなり具体的に一つの省庁になっていく、官公庁としてのお仕事という側面と、具体的に国民を意識した業務内容についてもイメージを具体化することができたように思います。特有の難しさはありつつ、官民の知恵と思いが合わさることでいい変化が生まれていることも同時に実感できました。読者の皆様にとってもチャレンジの後押しになる内容になっていれば幸いです。
※所属部署・役職は2021年7月当時のものです
本記事で取り上げたデジタル庁準備室の求人
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