はい、どうも実の父親に殴り倒され、寝ている間に縄で縛られた挙句ダンボールモドキみたいな木箱に詰め込まれて馬車で貴族の邸宅ヘドナドナされた少年、ルーデウスだよ。
パウロから貰った手紙では我儘なお嬢様と筋骨隆々な褐色系獣耳尻尾のお姉さんに勉強を教える仕事を紹介してくれた、という話だった筈だが…。
「下ろしなさいよ!!
アンタ!!こんなふざけた事してどうなるか分かってるんでしょうね!!」
何故俺はそのお嬢様を重力魔術で浮かせて魚の様になったお嬢様の観察をさせられているのでしょうか…。
「いや、だってお嬢様ソレ解いたら殴りかかってくるんでしょう?」
パウロには呆気なく破られてしまった不安だったのだが、ひとまず重力魔術が彼女に効いて良かったと安堵しておく。
一応雇い主であるフィリップに色々確認しておこうと思ったが、既にこの場を後にしていた。
説明責任を放棄し俺に全て丸投げし自室に戻ったのだろう…。
「はぁ~~」
溜息を一つ吐いて俺は痛む身体に治癒魔術を唱えて治した。
「ガァアアアAAA!!」
その様子に怒りが頂点に達したお嬢様が咆哮をあげた。
さて、どうして俺はこんな獣に頭を悩ませているか一時間程を時を戻して確認してみよう。
「そんな…馬鹿な…」
シルフィとの連絡を断たれたショックで膝をついた俺だったが、確かに最近の行いを鑑みると確かに共依存関係になりかけて、いい状態では無かったかもしれない。
俺はそれでも良い気がするが他の大人達からすれば良いことではないだろう、そう思うと妥当な裁定だと思い直すことにしよう…。
セルフメンタルリフレッシュを行い平静を取り戻している間に目的地であるお屋敷に着いた。
屋敷に着くと、待っていた執事さんにフィリップさんを紹介され、俺の生徒となる予定のお嬢様の所へ連れていかれたのだ。
名を エリス ボレアス グレイラット
鮮血の赤猿姫と名高い、獰猛な獣である。
2,3言葉を交わしただけで平手打ちをされた。
結構威力があり痛い。
理由は年下のくせに生意気だからだ、だそうだ。
人の痛みが分からないのだろうか?
と同じ位の威力で平手打ちしてやると、時が止まった。
ギシリと鉄が悲鳴を上げる様な鋭い歯軋りと共に的確なボディブローが入った。
バランスを崩した俺はあっという間に地面に叩きつけられ彼女の膝で両腕を封じられ身動きも封じられた。
「誰に手を上げたか、後悔させてやるわ!!!!」
殴打。
右頬、左頬に鼻面、額に眼球付近に撃鉄の様に拳が降り下ろされた。
爺さん!ジーさーん!!!助けて!!Gさーん!!
クッソ!あのクソジジイ大事な時にはいやがらねぇ!!
いつもそうだ、あの爺さんは俺が本気で悩んでいる時は手を貸してくれない、自分で解決しろってか!?
やってやろうじゃねぇかこの野郎!!
「トリヤァ!!」
と俺は奇声を上げながら風魔術の衝撃波と重力魔術を駆使して彼女の動きを封じ、冒頭に戻る。