NHK高校講座

現代の国語

Eテレ 隔週 月曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。

現代の国語

今回の学習

第9回

憧れのプロにインタビュー

  • 東京都立篠崎高等学校 主幹教諭 古宮 才由里
学習ポイント学習ポイント

憧れのプロにインタビュー

憧れのプロにインタビュー
  • 向井さん
  • アイビーさんといおりさん

番組のMCは、パンサーの向井慧さん。
一緒に学ぶ生徒はアイビー愛美さんと鈴野いおりさんです。

今回のテーマは「憧れのプロにインタビュー」。
2人で協力して仕事がテーマのインタビューをしてもらいます。
今回はアイビーさんが憧れている人にインタビューをすることになりました。

目的にあわせて情報収集や人選をしよう
  • 中山咲月さん
  • アイビーさん

今回2人がインタビューしたのは中山咲月さんです。レディースファッションのモデルとして活動していましたが、トランスジェンダーであることを告白。今は、メンズファッションのモデル、俳優としても活動されています。

アイビーさんは、中学生のときにSNSで中山さんを知り、自分もメンズの服やレディースの服、どっちも着こなせるジェンダーレスモデルになりたいと思ったそうです。

インタビューの準備
  • 古宮先生
  • 「職業観」をテーマにインタビュー

今回みなさんにアドバイスをくれるのは、古宮才由里先生です。

実際にインタビューをする前に、準備をしましょう。
★情報収集★
生徒の2人には、事前に「職業としてのモデル」と「中山咲月さん」について事前に調べてきてもらいました。
その情報を、2人で共有して整理します。

ここで古宮先生からアドバイス!
今回は「職業観」をテーマにインタビューをしてもらいます。
そこで、調べた情報を次の3つの視点に当てはめて整理してみましょう。
(1)「仕事の内容・条件・資格」といった基本情報
(2)「人や企業とのつながり」のような、関係に関わること
(3)個人の「やりがい・目標」


  • 中山咲月さん
  • 調べてきた情報を3つに分類

ホワイトボードを使って、調べてきた情報を3つに分類していきます。

ボーイッシュな容姿から、「ジェンダーレスモデル」として注目されていた中山咲月さん。心の性が男性である中山さんは、この頃について、「嘘をついた」とエッセーで語っています。
アイビーさんは、「そのときの辛い思いをどう乗り越えてきたのか」を、一番聞きたいと思っていました。ところが、その質問が3つの視点のどれに分類されるか、悩んでしまいました。

ここで古宮先生からアドバイス!

先生 「目標ってなんだろう?」
いおり「目標は自分が理想とする姿。」
アイビー「目指しているところとか」
先生 「幅が広いよね」

このやりとりから、2人は先ほどの質問を(3)「やりがい目標」に当てはめました。

  • アイビーさんといおりさん
  • アイビーさん

★質問を考える★
分類した内容を質問の形に置き換えていきます。

先生「(1)「仕事の内容・条件・資格」といった基本情報については、すでに調べてベースとなるものなので、聞かなくていいよね」
アイビー「誰にでも聞ける質問じゃなく、中山咲月さんだからこそ聞けるものがあると思うから、それが聞ければいいよね。『自分にとっての個性とは何ですか?』とか」

質問の内容や優先順位などを整理していきましょう!

インタビューの準備で大切なこと
  • 古宮先生
  • 考えた質問は8問

向井「(先生は)『職業観』と、おっしゃっていましたが、今回はそこがポイントということですか?」
先生「そうですね。憧れのプロに、その職業観を聞いて、その話の内容を参考にしながら、自分自身の職業観を新たに立ち上げていく。それが今回の学習のポイントでした」

「聞きたいことを3つに分類するのが難しかった」「疑問を文章化するのが難しかった」という2人が最終的に考えた質問は次の8問。

(1)どうしてモデルになろうと思ったのですか?
(2)モデルとして憧れている方はいらっしゃいますか?
(3)プロポーションの維持に、どのようなことをされていますか?
(4)撮影現場などで、臨機応変な対応が必要な場面ではどのようにされていますか?
(5)人とコミュニケーションをとるときに、気をつけていることはなんですか?
(6)中山さんが思うご自身の個性とは何だと思いますか?
(7)今まで辛いときもあったと思いますが、どのように乗り越えてこられましたか?
(8)仕事のやりがいについて教えて下さい。

あんな言葉 こんなコトバ
  • いろいろなあいづち
  • 「話を聞いてますよ」というサインは、いろいろあります

会話のときの「あいづち」。
「はい」、「ええ」や「そうですね」、「なるほど」などがありますね。
話の感想や、相手の話の確認、無言のうなずきにも、あいづちと同じような役割があります。
「話を聞いてますよ」というサインは、いろいろありますよね!

インタビューのリハーサル
  • インタビューのリハーサル
  • アイビーさんといおりさん

インタビューのリハーサルをしてみます。古宮先生が中山咲月さんの役をします。

まず、自己紹介をし、インタビューの目的を伝えましょう。相手がどんな目的を持って聞かれるのかを知るためにも、意図を伝えることが大切です。

つづいて、本題の質問です。

いおり「中山さんがモデルになった動機についてお聞かせいただけますか?」
先生「憧れの人がいたからです」
アイビー「その憧れの人とは、誰とかとかって教えていただくことって可能でしょうか」
先生「はい。海外のモデルでした」
アイビー&いおり「なるほど」

ここで古宮先生のアドバイス!

先生「『なるほど』なんだけど、どんなところに憧れたのか、疑問は起こりませんでしたか?」
アイビー「起こりました」
先生「そしたら、疑問に素直にちょっと次の質問を考えてみましょうか」

疑問に思ったことは、その場で質問を追加するといいですね!

最後に本番のインタビューに臨む2人に、古宮先生からのさらなるアドバイス!
先生「インタビューは対話なので。言葉のキャッチボールだから。言葉づかいを丁寧に、響きのいい声で話しましょう。姿勢や表情も大事です。憧れの人へのインタビュー大いに楽しんできてください!」

インタビューに挑戦
  • 中山咲月さん
  • アイビーさんと中山さん

いよいよ、インタビュー本番です。直前まで練習していたという2人、まずは自己紹介からです。

中山「はじめまして。こんにちは。中山咲月です」
アイビー「おはようございます」
いおり「よろしくお願いします」
中山「よろしくお願いします。中山咲月です。よろしくお願いします」
いおり「きょうはお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございます」
中山「ありがとうございます」
いおり「鈴野いおりです。よろしくお願いします」
中山「よろしくお願いします」
アイビー「はじめまして、アイビー愛美です。よろしくお願いします」
中山「よろしくお願いします」
アイビー「私は、中学1年生ぐらいからずっと中山咲月さんのことが大好きで、中山咲月さんみたいにかっこよくて、素敵なオーラがだせるモデルさんになれたらいいなって思って、きょうは中山さんにご職業やその考えについてお聞かせいただきたいです」
中山「はい」

アイビー「まず1つ目の質問なのですが、どうしてモデルになろうと思ったのですが、あ、思ったんですか?」
中山「いやー、全然大丈夫です(笑)。この仕事を始めたきっかけが、実は自分からではなくて、親戚だったり、その周りの人にやってみたらと言われて、この仕事を始めました」

いおり「モデルとして憧れてる方とかいらっしゃったりしますか?」
中山「実は憧れている人がいなくて、いない代わりにちゃんと自分の中でこうなりたいっていうイメージを具体的に考えて仕事をしています」
いおり「そのイメージとかって、教えていただけますか?」
アイビー「あ、聞きたいです」
中山「例えば雑誌だったら、表紙がやりたいとか、具体的な結構目標を立てて頑張ってます」

中山さんの答えに対して、追加の質問で深掘りすることができました。
さらにインタビューは続き、次第に核心に近づいていきます。

いおり「中山さんが思うご自身の個性って何ですか?」
中山「自分はそんなに個性的じゃないと思っていて…なんか、人それぞれみんな個性的だなって、自分はすごく思っていて。自分も性別のことで色々取り上げてもらうことも多いんですけど、でもなんか自分の個性はそこにないなと思っていて。いおりさんもいおりさんという一人の人間として個性的だと思うし、アイビーさんもアイビーっていう自分自身の個性を持っているなと思っているので、自分にとっての個性は中山咲月であることだなと思ってます」

アイビー「自分は、メンズの洋服を着ることがすごい大好きなんですよ。女の子の洋服を着ろとか、着てとか言われるのがすごい嫌だったんで、自分は自分のままでいいんだっていうのが、すごい分かって嬉しかったです」
中山「あの、自分を信じてほしくて、やっぱり自分の中に少しでも違和感があったり、嫌だなって思った時点で、きっとそれは自分のやりたいことじゃないと思うんですよ。自分が自分らしく誰の意見も気にならないぐらい楽しくいられる瞬間が個性的。その人らしさだと思っているので」
アイビー「すごい!」
いおり「すごい素敵な話だ」

アイビー「自分らしさで自信をもてる方法とか教えていただけますか?」
中山「自分を好きになることだと思っています。例えば『これすごく素敵な商品なんです』って言ったら、(相手は)『いいな』って思うと思うんですよ。でも『ちょっとこれ微妙なんですけど、どうですか』と言われたらどう思いますか?…ダメだよね。きっとそれと一緒で自分自身もすごく自分のことを好きになって自分がこんなに魅力がありますって自信満々に誰かに伝えたら、あっ、じゃあ、それぐらい素敵な人なんだなってきっと思ってもらえるって思います」

中山「本当に楽しむことが大事だなって思っていて。服を綺麗に見せるとか、モデルの仕事をしてて大事だと思うんですけど、でもやっぱり綺麗に着こなしているモデルさんでも、楽しそうにしてモデルさんには勝てないんですよ。すごい生き生きしてるなっていう」

いおり「質問は以上になります。すごい勉強になりました。ありがとうございました」
アイビー「教えていただいたことを取り入れて、がんばりたいなと思いました」

インタビューが終わったところで、中山さんから追加のメッセージがありました。

中山「最後に1ついいですか。自分もこう、理想の自分に向かって言っている途中だし、きっと伝えたことを自分も100%できていないと思っているので。なので『頑張ってください』ではなくて、『一緒にこれからも頑張っていきましょう』。ありがとうございました」
アイビー&いおり「はい、ありがとうございました!」

今回のまとめ
  • アイビー
  • いおり

今回の2人のインタビュー、いかがだったでしょうか。
先生「インタビューが本当に対話になっていて、何よりその中で良かったのが二人の聞く態度でした。深いところで共感しているのがまざまざと分かりました」
向井「ちゃんと二人が本当に聞きたいっていう気持ちが伝わってたっていうところも大きいですよね。だからこそ、ちゃんと喋ったことないことまで喋ってみようって気持ちになる」

最後に、2人に「印象に残った中山さんの言葉」と、「自分自身の職業観の変化」を発表してもらいました。

【アイビー】
☆印象に残った中山さんの言葉☆
「自分の個性は中山咲月」

アイビー「自分自身が個性っていうのがすごいなって思って。なので、私は、一番印象に残った言葉は、この「自分の個性は中山咲月」なんじゃないかなって、自分では思いました」

☆自分自身の職業観の変化☆
「自分の個性はアイビー愛美(自分らしさ)」

アイビー「モデルに限らず、どの職業でも自分らしさが役立つのかなって思って、職業観の変化に、この言葉にしました」
  
【いおり】
☆印象に残った中山さんの言葉☆
「自分を信じる」と「楽しむ」

いおり「こういうお仕事に限らず、自分を信じていたらすごく人生楽しいし、だからすごく印象に残りました。」

☆自分自身の職業観の変化☆
「楽しむ→仕事→人生」

いおり「やっぱり、悲しいこととかつらいことあると思うんですけど、やっぱりその中でも絶対楽しいことってあると思うから、そこから自分の原動力に変えていって、仕事、人生と楽しんでいけたらいいかなって思って、こうなりました」
 
先生「1つの職業観というけれど、それは大きく人生観にも繋がりますよね。モデルという1つの仕事の捉え方を通して見ても多くの仕事の共通する視点があることに気付けたのもすごく大きなことだったんじゃないかなと思います」

次回もお楽しみに☆

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