Eテレ 隔週 月曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。
第6回
番組のMCは向井慧さん。
一緒に学ぶ生徒は鈴野いおりさん、しゅうせいさんの2人です。
そして、今回みなさんにアドバイスをくれるのは、畑綾乃先生です。
今回のテーマは「読み比べて考えよう」。
みなさんは意識して読み比べをすることはありますか?
いおり「あまりないですね」
しゅうせい「意識してやった記憶はないんですけど、いろいろなところで調べて、どれかひとつを信じないっていうのは、よくやります」
例えば、映画を見に行くときにネットでいろいろな意見を見たりするのも、読み比べです。
いおりさんもそういう検索をすることはあるとのこと。
無意識のうちに読み比べをしている、ということですね!
では、なぜ読み比べが必要なのでしょうか?
先生「ひとつの文章を読んで考えるのも良いですが、もしかしたらその主張には偏りがあるかもしれません。物事を多面的に見たり、複数のものを読むと違う意見を知り、自分と照らし合わせることができるので、自分の意見を深めることができると思います」
実際に読み比べをしてもらいます。
テーマは『エスカレーターは止まって乗るべきか歩行も認めるべきか』です。
エスカレーターは、一部の自治体で、立ち止まって乗ることを義務付けていますが、実際には歩く人もいます。
今回は、このテーマに関する2つの文章を読み比べていきましょう。
まず、2人の意見を聞きました。
いおり「わたしは、歩行NG派です。人と接触したりして、ケガすることもあるかなと思うので、わたしも歩いちゃうことあるんですけど…でも、歩行NG派かなって思います」
しゅうせい「歩行OK派ですね。片側にみんな止まる人は固まっておけば、ぶつかる心配もあまりないかなって思います」
実際には、次のような調査結果があります。
歩行してしまうことがある64%
歩行しない36%
歩行してしまう人が3分の2ぐらいいるということですね。
次の文章は、鉄道各社、空港、日本エレベーター協会などが参加している“エスカレーター「歩かず立ち止まろう」キャンペーン”についてホームページで知らせる文章です。
お客さまがエスカレーターをご利用になる際に、ご自身でバランスを崩して転倒されたり、駆け上がったり駆け下りたりする際に他のお客さまと衝突し転倒させたりするなどの事象が発生しています。また、エスカレーターで歩行用に片側をあける習慣は、左右いずれかの手すりにしかつかまることのできないお客さまにとって危険な事故につながる場合もあります 。全てのお客さまが安心してエスカレーターを利用できるよう 、「歩かずに立ち止まろう」「手すりにつかまろう」などの呼びかけを実施します。
この文章を読んで、どんな印象をもちますか?
いおり「この文章見るとやっぱり、止まるべきなのかなとは思いますね。けがされたりとか、左右いずれかの手すりにしかつかまることのできない方もいらっしゃるって書いてあるので、やっぱり止まるべきかなと思いますね」
しゅうせい「NGに揺らぎつつあります」
このように、文章を読んで、意見が揺らいだり変わったりしそうになることもありますよね。
それでは、もうひとつ、あるブログの文章を読んでみましょう。(実話をもとに番組で作成した文章です)
今日は、エスカレーターに乗るときのマナーについて、考えたことを書きます。
今日、部活の試合のために遠出をしました。初めて利用する駅だったので迷って、試合に遅れそうになってしまいました。乗り換えのとき、エスカレーターを見たら、2人しか乗っていません。しかも幅が広いので、ぶつからずに通り抜けられそうでした。なので私は、歩いてのぼり、なんとか試合にも間に合いました。
本当は立ち止まるのがマナーかもしれません。でも、誰にだって急ぐときはあります。責任をもって安全を確かめれば、歩いてもいいんじゃないでしょうか?
この意見を聞いて、どう思いますか?
いおり「私も部活やってる身なんで、すごく分かります。でもやっぱり、うーん、気持ちは分かるけど、急ぐ時があっても、エスカレーターを使うんじゃなくて、階段使うべきかな、とは思いますね」
しゅうせい「結構分かりますね。荷物が大きかったりしたら前でギュッと(小さくして、他の人にぶつからないように注意)して上るんですよ。それなら大丈夫かなと思っちゃいます」
文章を読み比べるときに注意したいポイントを3つ紹介します。
(1)誰から誰に、どんな目的で書かれた文章か?
(2)どんな主張をしているか?
(3)どんな根拠で書かれているか?
この3つのポイントについて、2つの文章からわかることを、表に書き込んでまとめたのが上の右図です。
2人はまず、1つ目の文章から考えました。
この文章は、”会社などからお客さんに”書かれたもので、目的は”広く呼びかけるため”でした。
主張は“歩かずに立ち止まろう”、
根拠は“危険な事故につながるから”でした。
続いて、2つ目のブログの文章を見ていきます。
ブログは、個人から不特定多数に向けて書かれるものです。
では、目的は何でしょうか?
ブログの場合、目的を明確にしないまま書いてしまうこともあるかもしれません。
2人は、目的を考えるのを後回しにして、先に主張と根拠を考えました。
1つ目の文章の主張、つまり結論となるところは“歩かずに立ち止まろう”でした。
では、2つ目の文章で、それに対応した結論となるところはどこでしょうか?
“歩いてもいい”という部分がそれに当たりますね。
同じように、根拠についても1つ目の文章に対応させて考えると“責任をもって安全を確かめれば危険じゃないから”となります。
最後に、保留にしていた2つ目の文章の目的を考えます。
向井「例えば2人がSNSとかあげるときに、コメントもらえたり、いいねをつけてもらったりするためにあげてたりするよね?だから、意外と個人のブログっていうのは、それが目的でいいのかもしれないよね」
いおり「共感してもらうため?」
このようなやり取りから、文章中に直接は書かれていませんが、2人は、目的は“共感してもらうため”と推測しました。
最後に、自分の意見を整理するために、より共感した箇所にマグネットを貼っていきました。
先生「会社全体として言っているのか、個人が言っているのか意識するだけでも、内容を読むときに心構えができますよね」
このように、枠組み自体を知ることも大切です!
「わあ、ありがとう!」
このように、友だちに感謝の気持ちを伝える場面、よくありますよね。
では、先輩や上司には、どんな言葉を使えばよいでしょうか?
例えば、「どうもありがとうございます」「お世話になりました」、
メールだったら、「深く感謝いたします」「心からお礼申し上げます」など。
場面や相手によって、使い分けたいですね!
2つの文章を読み比べた2人に、改めて意見を発表してもらいます。
文章から最低1か所引用することを、今回の発表のルールとしました。
いおり「わたしは歩行NG派です。“安全を確かめれば危険じゃない”(2つ目の文章からの引用)っていうのは、確かに安全を確かめることも大事なんですけど、でも、危険な事故が起こる可能性はゼロじゃないなって思います。例えば、”左右いずれかの手すりにしかつかまることのできないお客さま”(1つ目の文章からの引用)って、視覚的には分からない、聞いてみないと分からないって思ったので。だから、もし急いでいるならば、例えば階段使ったりとか、エレベーターを使ったりとか、他の手段を選ぶことが大事かなって思うので、わたしは歩行NG派です」
しゅうせい「ぼくは、歩行OK派なんですけど、基本は、歩かないで止まったほうがいいと思いました。“危険な事故につながるから”とか、あとは“接触事故”とか、“左右どちらかがつかまることのできないお客様がいる”(1つ目の文章からの引用)点で、歩かないほうがいいなと思いました。でも、“責任をもって安全を確かめれば”(2つ目の文章からの引用)とあるように、誰も乗ってない状態なら、全然歩いて動いてもいいなっていうことから、歩行OK派で、考えがまとまりました」
実際に読み比べをした2人に感想を聞きました。
いおり「読み比べるって、文章精読するって難しいなって思ったんですけど、でも、自分の意見がよりクリアになるというか、そういう面ではすごくいいなって思いました」
しゅうせい「(同じ)OK(という意見)でも、最初は『まあ別に歩いてもいいじゃん』って、ふんわりした状態だったんですけど、読み比べたことによって、しっかり、何がいけなくて、何が大丈夫だからOKかっていう、自分の思考を理解できたからよかったなと思いました」
先生「ちょっと難しい言葉で、クリティカルリーディングという言葉があるんですけど、単純に訳すと批判的に読むことっていう意味ですが、結局は、批判的に読むことで客観視することができたり、反対の意見も含めて、物事の全体を俯瞰したりすることもできるので、自分の意見を位置づけることができる。そういうものなんです。今回のように、複数の文章を読むことによって、その整理をきちんとすると、ひとつの物事を多面的に見たり、自分の意見を深めたり、整理したりすることができます」
読み比べることによって、いろいろな視点をもつことが大切ですね!
次回もお楽しみに☆
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