政府の債務比率は事実上、戦時期を超える水準
ただし、注目したいのは、戦時期と比較しても、わが国の政府債務規模が膨らんできているという点。図1は、政府債務の経済規模に対する倍率であり、戦時末期の1944年度末には2.0倍を上回っているのが確認できる。
2010年代後半には、さすがにこの水準を超えるのをためって足踏みしていたものの、2020年度に突破し、2021年度末には2.3倍に急騰している。コロナ禍での財政負担も手伝い、すでに戦争経済をまっしぐらに進んだ1940年代の水準を超えているのである。
確かに戦地での日本政府の借入金を含めれば、戦時の水準を突破しているわけではないが、懸念水準にあることだけは間違いないだろう。
興味深いことに、日本政府が債務を拡大させた日露戦争期や第二次世界大戦期には、円建ての日本国債での調達比率が9割を超えた後に、調達手段を変更せざるを得なくなっているのである。主たる日本政府債務の調達手段は、円建て国債、外貨建て国債、短期証券、借入金であるが、日露戦争期は外貨建て日本国債、第二次世界大戦期には借入金による調達が急増している。
このことは、多くの資金を円建て日本国債での調達に頼りすぎる限界を意味するのかもしれない。2021年度末の日本政府債務の89%は円建て日本国債であった。一方、2022年度は、2010年代後半に減少していた短期証券での調達比率が増加している点は、一時的現象であるか否か気になるところである。