Eテレ 隔週 月曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。
第10回
今回のテーマは「本音と建て前を使いこなせ!」。
番組のMCは向井慧さん。
一緒に学ぶ生徒はアイビー愛美さん、しゅうせいさんの2人です。
そして、今回みなさんにアドバイスをくれるのは、藤森裕治先生です。
ウォーミングアップに、次の□□□に言葉を入れて、印象が悪くならないように友達を紹介する文章を作ってみましょう!
【人見知りな友達を紹介する場合】…彼女は□□□です。
どんなふうに伝えたらよいでしょうか?
しゅうせい「『仲が良くなったら、とても明るい人です』とか」
向井「なるほどね。仲よくない時にはちょっと静かだけどっていう意味合いが含まれるってことだよね」
例えば『控えめな人』という表現もありますね。
もう1問考えてみましょう。
【落ち着きがない友達を紹介する場合】…彼は□□□です。
アイビー「彼は『パッション』がある」
向井「パッションがある、いいね!」
この場合には『アクティブな人』という言い方もできそうですね。
この2問で、最初に提示した「人見知りな」や「落ち着きがない」というのは本音、□に入れた表現、『控えめな人』や『アクティブな人』などは建て前といえます。
みなさんは、「本音」と「建て前」に、どんなイメージを持っていますか?
アイビー「本音は自分が本当に思ったことで、建て前は思ってないけど、そう言おうって思った『ウソ』のことかなっていうイメージを持っています」
しゅうせい「本音が、人にはあんまり素直に伝えられないマイナスな言葉で、建て前が、人に伝えやすいポジティブな言葉という認識があります」
“ウソ”と考えると、ネガティブな感じがしますよね。逆に、配慮した表現だと考えれば、ポジティブに取ることもできます。
今回は、その辺を考えていきましょう!
生徒の2人に、「本音」と「建て前」をロールプレイで体験してもらいます。
アイビーさんが演じるのは、客に服を売ろうと必死な洋服屋の店員。
そしてしゅうせいさんは、店員に勧められた服が気に入らず、何とか断ろうとする客です。
建前で会話をしてみましょう!
アイビー「いらっしゃいませ」
しゅうせい「こんにちは。部活の合宿で使う着替えを探しに来たんですけど、なんかいいのあったりしますか?」
アイビー「これどうですか?かわいくないですか、これ」
しゅうせい「いいですね。もうちょっとシンプルめなものがあったらいいのかなって…」
アイビー「シンプル?シンプルだったらこれですね。どうですか?」
しゅうせい「おもしろくていいデザインですね。ワンポイントの服装とか、そういうのがあったらいいかな…」
アイビー「ワンポイントですと、これかこれ?迷彩が出るので、やっぱり、これがいいかなって私的には思うんですけど。こっちもいいと思うんですよ。どうぞ!」
しゅうせい「はい。どっちかって言ったら、こっちの方がタイプなのかなとは思います」
アイビー「だったら、このズボンを使うのはどうかなって思うんですけど」
しゅうせい「遠くから見るとオシャレかも…」
アイビー「おしゃれですよね。すごくいいと思いますよ。これ買いますか?」
しゅうせい「すみません。お金おろしてないので、おろしてからまた来ます」
アイビー「お待ちしてます。また、来て下さい。どうも~!」
建前のやり取りの中で、2人の気配りがどのような言葉に表れていたか、ホワイトボードを使って会話をまとめます。言葉の背後に隠されていた本音を探っていきましょう!
【建て前】いらっしゃいませ
↑
【本音】よし、売るぞ!
【建て前】部活の合宿で使う着替えを探しています
↑
【本音】このお店には、自分の好きな服あるのかな?
他にも、服を勧められたしゅうせいさんが「おもしろくていいデザインですね。ワンポイントの服装とか、そういうのがあったらいいかな」と言っていましたが、このときの本音は…?
しゅうせい「『ちょっとこれは着ないよな』っていう…」
その後のやり取りで、アイビーさんは他のシャツやズボンを勧めていました。そのときの本音は…?
アイビー「『シンプルなのは、これしかねぇよ!』って感じになっちゃって。『値段が安いものを1個買っていくなら、もう1着買っていって!』って思いました」
それを受けて、しゅうせいさんは「『シンプルなの出てきたけど、好きじゃねぇな』って。諦めました」とのこと。
しゅうせいさんは「お金をおろして、また来ます」と店員さんに伝えましたが、本音は…?
しゅうせい「『来ない』です(笑)」
「お待ちしています」と言ったアイビーさんの本音は?
アイビー「『もう来ないな』って…(笑)」
さて、店員のアイビーさんは“買ってほしい!”という本音を直接言わずに服の魅力をアピールしていましたね。一方のしゅうせいさんは、本音を出さずに当たり障りのない言い方で断り続けました。
このように、お互いたくさん気を使って話していたことがわかりますね!
では、本音をそのまま話したら、どんな気持ちになるでしょうか?
試してみましょう。
アイビー「この店のイチ押しなんで、これ、買ってください」
しゅうせい「少し気に入らないので、すごくシンプルなのがいいです」
アイビー「ここには派手なのしかないです」
しゅうせい「これは着たくないので、譲歩してワンポイントのものないですか」
アイビー「ワンポイント。シンプルはこれしかないので、これは安いものだから、これもついでに買って欲しいです」
しゅうせい「好みじゃないです。買わないので、もう帰ります」
アイビー「もう来ないな」
かなり殺伐とした会話になりましたね。
先生「場の雰囲気を壊したり、角が立たないように、上手に自分の言いたいことを相手に察してもらえるように言葉を選ぶっていう、これを『建て前』と理解したらいいんじゃないかなと思います」
向井「本音って良くも悪くもやっぱ、強いというか、持つ力、言葉のパワーが強すぎるので、基本的に僕は、建て前は本音を包むラッピングっていう感覚で使うことが多いかもしれないですね」
街中のトイレで見かける注意書き。
次のようなものを見たことがありませんか?
「いつもきれいにご利用いただきありがとうございます」
この本音は“汚さないでね”といったところでしょうか。
伝え方を工夫している注意書きはいろいろあります。
探してみてくださいね!
身近な場面を想定して、本音と建て前を伝えてみましょう。
Q. 先輩と遊ぶ約束をしていました。
ところが当日、理由を告げられず、ドタキャンされてしまいました。
どのような返事をしますか?
アイビーさんの本音は…「準備してたのに、理由なしとかあり得ない!!ショック」
怒りを覚えるというアイビーさんですが、これを建て前に変換してもらうと…?
「全然大丈夫です。また先輩が予定空いてるときに出かけましょう!!」
怒りを表現しなかったのはなぜでしょうか?
アイビー「そういう言い方が相手も傷つかないし、自分も『また次、空いているときに出かけましょう』って付け足したら良いかなって思って、この言葉を選びました」
向井「我慢するってことだね。今回に関しては、自分の怒りとかショックは出さずに」
藤森先生は「本音で文句言われるより、むしろこっちの方が申し訳ないという気持ちが深まるよ」とのこと。一方向井さんからは、こんな意見も。
向井「もちろんアイビーの返信も素晴らしいんですけど、やっぱ完全に我慢することになってるじゃないですか、今回の場合。これ続けるとしんどくなると思うんですよ。ちょっとガス抜きしちゃうかもしれないです、僕は。『えーショックです』は入れるかもしれないです。最終的には『またぜひお願いします』って打って『二度と行くか!』って思ってますけど。本音を隠して『残念です。また誘ってください』が、僕の建て前かもしれないですね」
違うシチュエーションも考えてみましょう。
Q. 文化祭まであと3日。みんなで準備の追い込みをしていたら、一緒に実行委員をしているクラスメイトに「先に帰ってもいい?」と言われました。どう答えますか?
しゅうせいさんの本音は…「帰るなら、明日明後日。みんなの倍、がんばってよ?」
何か事情あるのかもしれないし、今日はいいとして…と、先に帰ることを本音でも認めているようです。
さて、これを建て前に変換すると…?
「いいよ。明日俺も早く来るから一緒に早く来よ。そんでみんなに一言だけ言って帰ってね」
しゅうせい「相手が一方的に責められるのは、それ自体で雰囲気悪くなるじゃないですか。だったら、ほんのちょっとでも早く来れば、みんな絶対許してくれるなってことで」
相手役をした向井さんは、どう感じたのでしょうか?
向井「先に帰らずにその場で作業をするよりもめんどくさいことが降りかかってきた…『うわ、明日の朝早く来んのか』というのがめちゃくちゃ嫌だったの。だったら、先に帰らずに、一緒にやっていった方がいいわって思いましたもん」
しゅうせい「全部優しすぎちゃうと自分もちょっと気に留めちゃうから。例えば、ジュースおごってねとか、そういう軽いペナルティーをかけてくれると、自分的にはちょっとは消化されるから」
ペナルティをかけるのも、気配りの一環…というのが、しゅうせいさんの考え方だったんですね。
向井「なんかすごい返答でしたね。いろいろ考えさせられましたが」
先生「難しいところだけど、相手のことを思いやった場合に、ここは本音をきちんとぶつけることが相手(のため)に必要だという場合、本音を使うべきだと思っておいてもいいと思うんですよね」
「本音」と「建て前」の良し悪しは、シチュエーションに応じて変わるものです。
先生「その辺は経験を重ねて、失敗をたくさん重ねて、そこから改善していく自分を見ていったらいいんじゃないかなと思いますね」
次回もお楽しみに☆
制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約
目的外の使用を禁止します