Eテレ 隔週 月曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。
第11回
番組のMCは向井慧さん。
今回は久しぶりに、4人の生徒がそろいました。
石岡飛鳥さん、鈴野いおりさん、アイビー愛美さん、しゅうせいさんです。
そして、みなさんにアドバイスをくれるのは、藤森裕治先生です。
今回のテーマは「『信頼』って何だろう?」。
「信頼」という言葉を切り口にしてみんなで語り合い、考えを深めます。
これまでにも番組では、考えを整理したりまとめたりする様々な方法を紹介してきました。Tチャートを使って比較する方法、付せんを並べて話の流れを整える方法などがありましたね。
今回は、輪になって語り合うことで、考えを広げたり、深めたりしていきます。この語り合いで重要なのは、自由に発言できる環境であることです。そのためのルールが、この2つです。
(1)人の話はさえぎらず、最後まで聞くこと
(2)人の発言を否定しないこと
語り合いの目的は、結論を出すことではありません。
評価をすることでもありません。
安心して発言できることを大事にします。
まずはウォーミングアップです。
Q.「信頼」から連想するものってなんですか?
座っている順に、進行役の先生から時計回りで答えました。
先生「太宰治の『走れメロス』の、主人公のメロスと、人質になったセリヌンティウス。なんてことを、ちょっと連想しました」
向井「信頼ですよね…お金の貸し借り。信頼の上で成り立っているものかな、というとこですかね」
あすか「約束、ですかね」
いおり「友だちを連想しました」
しゅうせい「一緒にいる安心感とか」
アイビー「仲間だと思いました」
いろいろな言葉が出てきました。
対話を続けます。
先生「今度は、自由な発言でいいです。信頼と言えば…という感じで、さらに思ったり、気が付いたり、連想した言葉など、何かありますか?」
ここからは、挙手を合図に、自由に発言していきました。
いおり「友だちの前で泣くっていうのが、信頼がないと無理かなって思って。自分の弱いところを見せるっていう意味で、頼ることができる関係じゃないとできないかなって思うので」
アイビー「例えば親友とかとけんかするのも、信頼しているからこそ、裏切られたりしたらけんかするかなと思って。親友とかとのけんかも信頼に入るんじゃないかなって思いました」
場がほぐれてきたところで、少しずつテーマの核心に近づいていきます。
Q.あなたの「信頼を失ったエピソード」は?
向井さんからは、びっくりのエピソードが飛び出しました。
向井「小学校のときに、とりあえず学校に行きたくなくて、母親になんかしらの嘘の病気を伝えてズル休みする、みたいな時期があって。最初は風邪ひいたとか、頭痛とかって言ってたんですけど、やっぱり毎回同じ症状ってわけにはいかないなって思って、症状を探したんですよ。薬の箱にいろんな病気が書いてあるから、それを使ってやってて。いよいよなくなったときに、初めて見る言葉で、生理痛って書いてあって。全然知らないけど、箱に書いてあるから、「生理痛になったっぽい」って言って、信頼を失墜させましたね。めちゃめちゃ怒られました。そこからもう、だめになりましたね。なにか、風邪になったとか言っても、信用してもらえなくなって、学校行かなきゃいけなくなったりとか」
先生「それはお母さんびっくりしただろうね!」
全員、大笑いです。
向井「そういう細かいことでもいいんですよね。信頼を失った話っていうのは」
先生「ささいなことでも、なんでもいいので…どうですか?」
考え込む4人に、藤森先生から語りかけます。
先生「話したくなかったり、話がうまくまとまらなかったら、話さなくてもいいんだよね。ずーっと聞いていたっていいんですよ!」
飛鳥さんが、手をあげました。
あすか「中学の頃の話なんですけど、テストの順位とかが書いてある紙があるじゃないですか。休み時間に友だちと一緒に見せ合いみたいなことをしてたんですよ。で、その子と、もう1人他の子のところに行って、あいつの見ようぜって言って、その子がいないにも関わらず、勝手に見てしまったんです。で、その友だちを怒らせちゃって。『じゃあお前のも見せろよ』って言われて、そこで見せてたら解決はしてたんですけど、自分が見せなかったんで、そこでちょっと友だちとの関係が…あの、まあ、そうですね、友だちとの関係が悪化しちゃって。信頼失っちゃったなあっていう経験がありますね」
向井「勝手に見ちゃったっていうね。『勉強してない』って言い合ったりね。なのに、相手のほうが点数よかったとか、こっち点数取れてるとかっていうのもね」
あすか「そういうのもあります」
向井「信頼が崩れるよね」
先生「そうだよね」
語り合いも終盤。本題に入りましょう。
Q.「信頼」とは何か。
藤森先生が口火を切ります。
先生「ぼくは、一瞬で壊れてしまうのが信頼で、なおかつそれを修復するにはうんと長い時間かけてやるものかなっていうふうな、ちょっと動きのイメージがあるかな」
生徒たちも、続いて語ります。
あすか「(挙手して)はい。体験談ではないんですけど、自分はやっぱり信頼っていうと、自分もそうですし、相手も自分のことを知らないと信頼ってできないと思うし。長い年月かけて積み重ねていくものかなって思いますね」
先生「なるほどね」
向井「そうだよね。いきなり信頼っていう関係をつくるのは難しいかもね。やっぱ、みんなも半年前と今じゃ、みんなの中の信頼もちょっとずつ積み重なってるだろうしね」
しゅうせい「(挙手して)はい。中学のときの部活の話なんですけど」
先生「バドミントンだね」
しゅうせい「そうです。ぼくダブルスやってたんです。小学校から8年ぐらいの付き合いの友だちと、中2でダブルスを組んだんですよ。で、中3になったあとの試合で、いつも掛け声かけるんですけど、その日は喉が枯れてて、声が出せなくて、そのときの1ラリー2ラリーぐらい終わるまで、まったく声を出さずに、ほんとにずっと対角で動けてたんですよ。相手がなにやるか、分かるかのように。それが一番信頼できてるし、信頼されてたのかなって思いました」
向井「声かけあわなくても、相手のことがなんとなく分かるっていう」
先生「あれ気持ちいいだろうね。その瞬間ね」
しゅうせい「めちゃめちゃ気持ちよかったです。めっちゃ鳥肌立ちました」
向井「やっぱ片側だけじゃ成立しないものかもしれないですね。信頼って、お互いの信頼があって、成り立つものなのかもね」
話が深まっていくのを感じながら、語り合いを終了します。
輪になって語り合うとき、道具を使うことがあります。
例えば、ボール、ぬいぐるみ、棒、マイク、クッションなどです。
話をする人が、その道具を持つことによって、邪魔されることなく話すことができます。
ボールを使う場合は、次に話したい人が挙手したら、投げて渡します。
手渡ししたり、順番に回したりする場合もあります。
さて、語り合いの振り返りです。
“信頼”に対して考え方の変化はありましたか?
いおり「自分の思ってた“信頼”っていうのを再認識できたり、『こういう視点もあるな』とか知れたので、“信頼”っていう言葉について、すごく考えが深まったなって思いました」
アイビー「自分が思ってた“信頼”と、周りの、他の視点で見た信頼がすごく違って、軽いものもあれば、やっぱり重いものもあるんだなって思ったのと、“信頼”って重く考えなくていいんだなって思いました」
向井「語り合って気づくことがありますよね」
先生「そうですね。だからこうやって輪になって、みんなで語り合ってみるっていうことがポイントなんです」
さらに振り返りを続けます。
輪になって語り合うのは、どうでしたか?
いおり「円になって話すことで、今まで言えなかったこととかも言い出しやすいかなって思いました」
しゅうせい「教室だと、全方向から視線浴びたりするじゃないですか。それで逆に緊張したりすることが多かったので。全員の視線が視界に入るから、安心して話すことができるから、自分の本音みたいなのが出しやすくなるのかなと思いました」
アイビー「こうやって丸をつくってサークルトークをすると、1人1人の顔がちゃんと見られて、“あ、伝わっているのかな”っていうのも、“伝わっているんだな”っていうのも、すぐわかるので、すごいいいなって思いました」
藤森先生からも「輪になることの効果」について、コメントがありました。
先生「普通の教室は教壇があって、生徒がみんなこっち(教壇)に向かってるでしょ。あの関係に比べて、この(輪になっている)関係だと、上下関係がないでしょ。で、もうひとつ面白いのは、今みんな座ってますけど、順々に語りをやり取りしていく中で、言葉のひとつの回転が生まれるんですよね。この動きに、始まりもなければ終わりもない、っていう印象があるんですよ。だから、この形態の特徴が大きなポイントになったなって思うんですよね」
話し合ったり語り合ったりするときは、位置関係を意識してみるのもいいかもしれませんね。
次回もお楽しみに☆
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