NHK高校講座

現代の国語

Eテレ 隔週 月曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。

現代の国語

今回の学習

第12回

メディアとかしこくつきあおう

  • NHK学園高等学校統括教諭 八木沢 正統
学習ポイント学習ポイント

メディアとかしこくつきあおう

メディアとかしこくつきあおう
  • 向井さん
  • いおりさんとあすかさん

番組のMCは向井慧さん。
一緒に学ぶ生徒は石岡飛鳥さん、鈴野いおりさんの2人です。

今回のテーマは「メディアとかしこくつきあおう」。
みなさんは、どんなメディアを使って世の中のニュースをチェックしていますか?
テレビ、新聞、インターネット、雑誌など、いろいろなメディアがありますが、インターネットを通してニュースに触れる機会が多くなっているのではないでしょうか。

ニュースはどこから来ている?
  • 1日およそ7500本の記事
  • 編集部の中村さん

ネットニュースはどのように私たちのもとに届けられているのでしょうか。多いときには閲覧回数が1か月で230億回を超えるというニュースサイトを例に見ていきましょう。

この会社の編集部では、リモートワークを含めておよそ25人のスタッフが、交代で編集にあたっています。その1人が中村美貴さんです。

【一人も取材記者がいない】
掲載記事は、契約する新聞社やテレビ局、出版社、通信社など、680以上の媒体から配信されたものです。その数は1日およそ7500本。すべて掲載されています。
  
【トップページの8本を選ぶ基準は…】
特に重要な8本のニュースがトップページに表示されます。それを選ぶのが、中村さんたちの仕事です。この日、中村さんが目を付けた記事のタイトルは「冷暖房なし、工具費は自腹。人の命を預かっているのに――人材不足が深刻化する自動車整備士の窮状」。興味のある・なしが分かれそうなテーマですが、中村さんはこの記事を取り上げるべきだと考えました。

中村「今、ネットのニュースなどでは、自分たちが読みたいニュースしか出てこないようなことも多くあるかと思うんですけど、こういった災害、政治経済、国際情勢みたいな公共性の高いニュースは、全員に知ってもらうべきだと考えているからです。伝えるべき情報をきちんと出していくっていう考えを編集部として持っています」

インターネットを活用する時の注意点(1)
  • 八木沢正統先生
  • いおりさん

八木沢正統先生にお話を伺いましょう。

ニュースサイトがどのニュースをトップの画面に載せるのか決める方法は、大きく分けて2つあります。
(1)人が選んで掲載する
(2)コンピューターが自動的に選んで掲載する


今紹介したのは(1)の方法でしたが、(2)のように、コンピューターが自分の閲覧履歴に合わせて、興味がありそうな情報を流すこともあります。そうすると、自分にとって都合のよい情報だけに包まれることになりがちです。これをフィルターバブルと言います。自分が見ているページや記事が、どのように作られているのかを知ることが大事です。

  • 見出し案
  • いおりさんとあすかさん

さて、自動車整備士に関する記事を取り上げようと決めた中村さん。
次に見出し案を考えました。候補は次の4つです。
(1)賞与は10万円未満 車整備士の窮状
(2)人の命預かるのに 車整備士の窮状
(3)車整備士 生活も人手もギリギリ
(4)手取り15万円 自動車整備士の窮状

みなさんなら、どれを選びますか?

  • 4つの見出し案を考える
  • 編集メンバーにリモートで相談

中村さんは、見出し案を考え始めました。見出しは15文字以内。ここでどんな言葉を選ぶかが編集部の腕の見せ所です。

中村「見出しには記事に合った適正な表現、あまり過度にあおりすぎないように気をつけています。その上で、15文字の見出しを読んだときに、“この記事をもっと読みたいな”と思えるような工夫をしています。例えば記事の中に特徴的なコメントがあったり、ちょっとひきのあるようなワードが入っていたら、それをうまく見出しの15文字に組み込むように意識しています」

こうして4つの見出し案を考えた中村さんは、編集メンバーの出村さんにリモートで相談をしました。

中村「1番目の『賞与10万円未満』と4番目の『手取り15万円』、どっちの方がひきが強いか…」
出村「なるほど。手取りの給与は多くのサラリーマンに共通していて、月(ごと)にもらうものなので、金額で差し迫った現状を伝えるにはいいかな。より多くの共感というか、驚きというか」

この意見を聞いて候補は3つに絞られました。

  • 同時に複数の見出しを使ってテスト
  • 見出しが何回見られたのかを調べる

このようなとき、この会社では、同時に複数の見出しを使ってテストをします。
例えばある人の画面にはAの見出しを、別の人の画面にはBやCの見出しを表示させます。
一定の時間、それぞれの見出しが何回見られたのかを調べ、参考にするのです。
今回は(4)の「手取り15万円 自動車整備士の窮状」となりました。


インターネットを活用する時の注意点(2)
  • 先生と向井さん
  • 向井さん

スタジオでは、見出しを読むときの注意点が話題になりました。

中村さんは、記事に合った適正な表現を心がけると言っていました。でも、ネット上のさまざまな記事の中には、閲覧数を増やしたいなどの理由から、記事の内容よりも大げさな表現や強い表現のタイトルをつけていることもあるようです。

向井「例えば僕、お笑いトリオの相方の菅さんが『いつもボケるときは、向井に背中をチョンと押されてからボケてます』みたいなことを言ったら、それがニュースになったときに『僕はいつも向井に背中を押されている』(というタイトルになった)…精神的な意味で『背中を押す』っていう言葉があるじゃない。励ますとか。だからタイトルと中身がちょっとちぐはぐ…」

そういうこともある、ということを覚えておきましょう!

あんな言葉 こんなコトバ
  • がっかりしたり落ち込んだときの人の姿を表したorz
  • 遊び心のある表現ですね!

ネット上で見かける表現。

「orz」の3文字は、がっかりしたり落ち込んだ時の人の姿を表したものです。
「www」は、Warau(わらう)の頭文字をとったもの。大爆笑を「wwwwwwww」と表現したり、草が生えているように見えるから「(草)」と書いてみたり。

遊び心のある表現が次々生まれるのは、ネットの世界ならではですね!

ネットニュースならではの工夫
  • 選んだ記事とともに掲載するリンク集
  • 中村さん

見出しを決めた中村さん。他にも、このニュースに興味を持ってもらうための工夫をしていました。

選んだ記事とともに掲載するリンクとして、中村さんは、自動車整備士に関連する記事を3つ選びました。選んだ後は、必ず複数のスタッフで検討します。

「整備士を取り巻く現状を、もう少し詳しく出した方がいい」との意見を受け、客観的なデータとして、業界団体が行った実態調査の資料を載せました。
中村さんは、ネットニュースを「読んで終わり」ではなく、さらに調べたり考えたりするきっかけに使ってほしいと考えています。

中村「ネットニュースを通じて、もっと世の中の出来事を“自分ごと化”してほしいなと思っています。出来事を知ることで社会の課題を知ってもらって、課題を解決するための行動につながれば、もっと世の中がいい方向にいくんじゃないかなと思っています」

メディアの特徴を比べる
  • いろいろなメディアのニュースの特徴を整理
  • いおりさんとあすかさん

ネットニュースならではの工夫や特徴がわかったところで、テレビのニュース、新聞で読むニュースとどう違うのか、特徴を整理してみましょう。

比べる観点は、手軽さ、信頼性、発展性、速報性の4つです。発展性という言葉は聞きなれないかもしれませんが、それを見て他の情報源に結びつけて調べる範囲を広げるきっかけになるかどうか、という意味です。

生徒の2人は、◎、〇、△を記入していきました。

  • 2人とも、インターネットに多くの◎をつけ、新聞は△が多い
  • あすかさん

2人とも、インターネットに◎を、新聞に△を多くつけました。

あすか「若い世代とかやっぱり新聞から遠ざかっていると思います。今日あったことは明日の新聞に載ったりするので、そういう面では速報性も遅いですし。あと、買うのにお金がかかっちゃうんで、手軽じゃないのかなって思います」

向井「いろんなメディアによって補完していくことが一番大事なのかもしれないですね」
先生「新聞の良さって、その記事について細かく書かれていたり、見出しがついている(ことです)。あまり自分が興味のないものでもぱっと見出しに目がいって、ちょっと興味持つとか」

向井「先生、(この表は)別にどれが正解とかいうわけではないんですか?」
先生「そうですね。メディアっていうのはどんどん日々、変化し続けていますので、正解っていうのも、それを受けて変わり続けていくものかなと思いますね」

  • いおりさん
  • 先生と向井さん

いおりさんは、すべてのメディアの「信頼性」を△にしていました。

いおり「インターネットもテレビも新聞も、さまざまな会社があるじゃないですか。1つの話題に関しても違う書き方をしているのを見ることが多いので、だから、信頼性は△なのかな…」

向井「でも疑ってみるっていう感覚は非常に大事…」
先生「これは非常に大事ですよね。テレビであれば何チャンネルかあり、ニュースに対する意見とか感想が述べられたりしていますよね。特に意見や感想のところは、人によって捉え方とかがさまざまだと思いますので、そのへんはいろんな人の意見を聞いて、自分はどう考えるか。そういう姿勢を持ってもらえるといいのかなと思います」

次回もお楽しみに☆

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