ルポvol.35 【ヤングケアラー5】
「ぼんぼや号」ヤングケアラーシンポジウムの衝撃
「自己肯定感」って? このワードが議題に上がったとき、耳をそば立てる。ここ数年、心のありようを計る言葉として出回り、聞くたびに胸がざわめくからだ。
ヤングケアラー応援団体「ぼんぼや号」が、2月5日、オンラインで開催した第1回目のシンポジウムは、濃密な内容だった。大学教授、同会メンバーである支援者・元ヤングケアラー・その親!から交わされた意見は、立場のズレも示して率直そのもの。「ヤングケアラーの自己肯定感の低さ」について、本音も出る。
自己肯定感が低い理由として、「親のケアばかりで、自分について考える機会すら持てない」と、元ケアラーが吐露。肯定すべき「自分」が、そもそも育たない。だから、「自分の言葉と感情が一致しない」と別の論者が指摘。「条件つきでなく、自分以外の他者から受け入れられることが、自己肯定感をつくり出す」…実体験から、そう語ったのが山本真由美さん。今回の主人公である。精神障がいを持つ親の元ヤングケアラーで、同会メンバーとして活躍する精神保健福祉士だ。
フェイスブックのご縁で、山梨県と足立区がつながる
山本さんとの出会いは、昨年の9月頃で、フェイスブックがきっかけ。メッセージとプロフィールをいただいた。東京・清瀬生まれ。以前江戸川区の精神障がい者施設の支援員や、同区の子どもの学習生活支援事業を担う認定NPO法人キッズドアのスタッフとしてかかわり、江戸川児童相談所の上坂かおりさん(ルポvol.20)とも連携をしていたという。また葛飾に祖母が住んでおり、東京下町は祖母と過ごした優しい記憶がつまっている。2019年、娘さんの出産を機に、夫の故郷である山梨県に移住。当時、義弟の農家を手伝うとともに、南アルプス市の職員として生活困窮者支援を担当。そして、山梨県で出会った仲間とともにヤングケアラーの支援団体事業の立ち上げを計画されていた。
以来やり取りが続き、当ブログが発信した足立区でのヤングケアラー支援活動にも関心を持たれた。半年後、予定通り、「ぼんぼや号」は、シンポジウムを「キックオフ」にして立ち上がった。山梨と足立区の活動をつなぐきっかけにもなるのではないかと、さらに半年後、山本さんを直接訪ねてインタビューさせてもらうことに。
精神障がい者とヤングケアラーを、家族ごとサポート
8月、甲府市にある木造2階家屋の事務所内。木のテーブルで向かい合ったその人は、大らかさと同時にナイーブさを感じさせる人柄だった。
まず、現職について事業を説明してもらう。日中は障がい児者対象の計画相談事業所で、相談支援専門員として勤務。そして「ぼんぼや号」ではヤングケアラーを応援し、希望ある発信を行うインフォーマルな活動を行っている。
ホームページに公表されていた山本さんの経歴に面くらっていた。「精神保健福祉士」をはじめ、「公認心理師」「サービス管理責任者」「SSTリーダー」など資格がずらり。所属学会・協会も9つ並ぶ。「頭がパンクしてしまいませんか?」と、思わず尋ねてしまう。この猛烈な学習意欲、仕事欲の背景には、長いドラマがあった。
ストレス解散法は、カラオケで歌うこと。「唯一無二」な曲が、浜崎あゆみの「song 4 u」。歌詞はこんな要旨だ。迷い揺れている「僕」。でも、「僕」は、そんな「僕」のままで、「君」の「哀しみごと」を抱きしめる、と。まさに、山本さんその人。
(山本真由美さんインタビューは、2022年8月4日、山梨県甲府市の計画相談支援事業所にて行いました)
<インタビュー・山本真由美さん>
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