あえて批判的な言い方をすれば、「出す」と公言していた商品をいかなる理由があるにせよ「出さない」というのは、プロとしては許されない行動です。しかも「マザー3」は、無数のユーザーに最大級の期待を抱かせ続けてきた商品なのです。ただ「開発を止める」と投げ出してしまうのは、あまりにもお粗末な判断ではないでしょうか。6年経っても商品の形を成さないものを、いつまでも創り続ける事。それもまた、どう考えてもプロの行動ではありません。アマチュアの発想です。
ただ、そうした「アマチュアの部分」こそが、結局姿を見せなかった「マザー3」の最大の魅力だったではないかとも感じます。どんなに苦労しようとも、これまでのゲームの文法を破ろうとする試み。なんとかプレイヤーの想像を超えてやろうという工夫。こうした手間も時間もかかる取り組みは、ゲームを創る事に慣れ切ってしまった人たちにとっては、どこかでどうしても切り捨てたり、妥協したりしてしまう部分だろうと思うのです。しかし、ゲームというメディアを(市場的にではなく)成長させていくのは、間違いなくこれらの「切り捨てられる思い」の部分だと思うのです。
そう考えると、このソフトが「普通の商品」として店頭に並ばなかった事は、むしろ喜ばしい事かも知れません。開発に携わったスタッフの方々も、きっとリベンジを狙っているはずです。これから何年か先、きっと「マザー3」の遺伝子を持つゲームが、それまで思いもよらなかったような驚きとインパクトを、私たちに与えてくれるのではないでしょうか。「マザー3」は、商品としては完全に失敗しました。しかしまさに文字どおり、これからのゲームの「マザー」になってくれるのではないかと感じます。 |