民進党の前政調会長の山尾志桜里・衆議院議員が大樹総研の勉強会の講師に来られたので、ご挨拶しましたところ、「松田先生の本、読んでます」。講演で「社会保障と税の一体改革」に触れていたので、党として、次の選挙で本気で訴えますか?と申し上げたところ、ハイ、そうします!とおっしゃっていました。
ただ、少し認識が違うと思ったのは、山尾議員が「消費増税の8割が借金の返済に回っていて、社会保障の充実に回るのは2割だけなので、有権者が消費増税に納得していない、納得していただくためには、負担が増えた分が国民生活に回る形での増税が必要、増税分を教育無償化などに充てることを考えていく」という趣旨を講演で述べていた点です。
消費増税は借金返済ではなく、全額、社会保障に回っています。
そのうち約8割が、これまでの社会保障費を維持する財源に充てられるということであって、その結果として、社会保障の財源の一部が赤字国債から消費税に置き換わることになるというのが、正しい捉え方です。
つまり、その分、増税後は、赤字国債の新規発行額(新たに増える借金)が減るという効果がありますが、税収が借金の返済に回っているのではありません。
確かに、増税をしても、それに見合う公共サービスの増加がない部分が8割もあるというのは、納得しにくいでしょう。これも、長年にわたって消費税率引上げを先延ばししてきたことのツケです。
本来は、高齢化とともに社会保障給付が増大するテンポに合わせて、少しずつ、税率を引き上げていけば、増税=社会保障給付増、という形で、納得されやすい財源措置が可能だったものです。
この点を見誤って、今の財政状態で、増税分は全額歳出増に充てるという考え方をとると、昔の民主党のバラマキ4Kのような歳出増で消費税率がどんどん上がっていくというような財政運営になるか、社会保障の財源を国債に依存する部分(巨額です)がいつまでも続いて、国債が増える一方という財政運営に陥るリスクがあります。
お忙しいでしょうが、私の「国力倍増論」をゆっくり読んでいただければありがたいと思いました。
言いたいことの趣旨はよくわかりますし、かつての財政論なきマニフェストから脱却しようとすることは評価しますが、財源論はもう少し別の角度から論じるべきかと思います。
もちろん、既存の赤字国債を、私が提唱する「永久国債オペレーション」で日銀の中で消滅させるのであれば、消費増税=歳出増、という財政運営が可能になります。将来、インフレを招くことにならない範囲であれば、です。
いずれにしても、負担の先送りは将来世代の不利益になるということが、すでに私たちの世代で始まっているという原点を忘れないことが大事だと思います。
この状態をどうブレークスルーするかが、日本の財政運営の論点です。