世良公則「俺たちをわかってくれるのはストーンズだけ」

2014/02/22 16:00

 ビートルズと並ぶ伝説のバンド「ザ・ローリング・ストーンズ」が8年ぶりに来日する。彼らをこよなく愛するミュージシャンの世良公則、日本で唯一のローリング・ストーンズのオフィシャル・フォトグラファーである有賀幹夫が対談で、ストーンズとの出会いのきっかけと、その魅力を語った。

世良:中学生の時、放課後の教室で、女子に囲まれてフォーク・ギターを持って歌っている奴がビートルズ、少し社会派なフリをしている連中は日本のフォーク・ソングを歌っていて、ビートルズ派とフォーク派がいたんですよ。でも、そこにあぶれている俺たちのような人間もいたんです。岩国基地(世良は広島県福山市出身)にラジオ局があったんですけど、ある日、『黒くぬれ!』が聞こえてきた時に、「何これ? 聴いたことないぞ」と思って、次の日に学校に行くと、友達の間でも話題になっていたんです。そうしたら、友達のひとりが「うちのお兄ちゃんが持っている」と言って、ある日、その友達の家に行って、お兄ちゃんの部屋に忍び込んでかけてもらったのが、ストーンズのレコードでした。「お前が言っていた曲はこれだろ?」「そう、これこれ!」って。フォーク・ギターでちまちまコードを弾いている場合じゃないと……。それと、やっぱり肌合いなんですよ。破れている感というのか、上手ではないんだけど、小さなモノラルのスピーカーが完全に歪んでいるんです。レコードを聴かせてもらっても歪んでいたんですよ。そのビートが完全に破れている感じが面白くて……。でも、僕の通っていた中学でストーンズを聴いていたのは僕とあと、1人か2人でしたね。

有賀:僕もやっぱりラジオですね。中学1年、13歳の時に『悲しみのアンジー』がヒットしたんですよ。あれが奇麗な曲だなと思ったんです。彼らのことを調べたら、ワイルドなロックン・ロールをやっていて、裏切られた感じがしたんですけど、裏切られたことによって、また好きになりましたね。僕より3~4歳先輩の人に『悲しみのアンジー』を聴いてストーンズのファンになったと言うと笑われた時があったんですよ。その先輩たちは、「『悲しみのアンジー』を出してからストーンズは日和った」と言うんです。売れ線に走ったから、バカにしていたんですよ。その前は『ギミー・シェルター』とか『ストリート・ファイティング・マン』とか、ヤバい先導者というところから、急に『悲しみのアンジー』を出した。でも、僕のストーンズ論はそこがストーンズの凄さで、13歳の子供の心をキャッチする曲を出したことになるわけですよね。もっと前から聴いていた先輩は裏切られたと思っても、僕はそこから入った。『スタート・ミー・アップ』から入った13歳もいるでしょうからね。

世良:『悲しみのアンジー』が作れるストーンズって凄かったんだなと、あの時思いましたね。あれをソロ・シンガーが大真面目な顔で歌ったら、「何だこれ?」と思うんだけど、究極の不良が「アンジ~」と歌うと「わかるー」って(笑)。そういう不良ほど、ナイーブで傷つきやすいということを、こっそり出すんじゃなくて、大上段に出してくれた。ギター持って歩くことも、ジーンズをはいていることすら不良の代名詞って思われている時代に、俺たちの繊細さをわかってくれているのはストーンズだけだよって(笑)。

※週刊朝日 2014年2月28日号

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