一般社団法人Colabo(以下、コラボ)の政治活動が東京都個人情報保護条例にいう受託者としての義務違反に当たる恐れを前回扱った。本稿ではもっと本質的かつ一般的な問題として、コラボが支援対象者へ接近する際に、(それがSNSでの連絡であれ、問い合わせフォームからのものであれ)、生活支援をうたっておきながら団体の実質的活動がそれと大きく相違していることが個人情報保護法の定める「利用目的の特定」と「目的外利用の制限」に違反する恐れがある。
具体的には、基地建設運動反対集会への合宿であったり、韓国へ来航しての慰安婦問題についての学習会などをコラボは支援対象者らに施しているが、初めに彼女たちに近づくときに政治活動の運動員を募っていると事前告知しているのか(もし黙っているなら違法ではないか)、という問題だ。
(コラボの2021年度活動報告書より。)
すなわち、個人情報保護法は「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。」(17条1項)と定めている。ここで「利用目的」については、個人情報の個別の処理ごとの利用目的ではなく、究極的な利用目的を意味する。したがって、個人情報取扱事業者ごとに利用目的が定まることになる。
また「特定」は、いかなる目的で個人情報を利用するかを個人情報取扱事業者に具体的かつ明確に認識させ、利用目的の達成のために必要最小限の範囲で個人情報を取り扱わせ個人情報を本人の同意なしに目的外利用することを原則として禁止するための基礎となる。したがって、利用目的の特定はできる限り具体的になされる必要がある。ここでどの程度まで具体的に特定すべきかは、個人情報の種類・性質・個人情報取扱事業者の事業の種類・性質等により異なる。
はてここでコラボは一方で家出少女などを対象に都内の繁華街で「声かけ行為」を行ったり、あるいはツイッターやLINE、インスタグラムなどに開設したアカウントから相談を受け付けている。そこでは比較的身近な、家族についての悩みや家出したいという悩み、友人とうまくいかなかったり恋人との性交渉で妊娠をしたかもしれない、あるいは金銭的に困っているというふうなことまで弱みを聞いていることが活動報告書から伺える。
(コラボ2021年度活動報告書)
だが、コラボは強い政治性を帯びた団体である。コラボの目的となるとホームページにある設立趣意書からして時代ごとに改変されているので(筆者が確認しただけで3つのバージョンがあった)、どの目的が本当の目的かが分かりにくいが、仁藤夢乃代表が2022年9月に出版した編著「当たり前の日常を手に入れるために:性搾取社会を生きる私たちの闘い」によると「女の子たちと沖縄に合宿に行って、辺野古の新基地建設の問題に声をあげている方々と出会ったり、若い女性が米兵にレイプされ殺害された場所に慰霊に行って、支配や暴力の構造について考えたり、「慰安婦」にされた女性たちの写真展を見に行ったことから「私たちは『買われた』展」が始まったり、そういう活動が本来のColaboの活動なのです」という。(210〜211ページ。理事の細金数子と対談の中の仁藤夢乃発言)
つまり当事者の主観としても本来のコラボの活動とは政治活動であるから、個人情報保護法を守って運営するならば、支援対象の女性をシェルターに停めたり、バスカフェで食事や物品を配るなどする際に連絡先を入手するにあたっては明確に、「政治活動が我々の目的である」としてコラボは利用目的を通知しなければならない。「青少年福祉と食品提供とともに、反基地運動も行う」などというごちゃごちゃした単位での個人情報の取扱目的設定は同法に反している。
あるいは仮にコラボによる政治活動への勧誘は、利用目的の変更(食事の提供から、慰安婦問題の学習へ変わった)があったと考えることもできるが、法は「利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない」(17条2項)としている。この「関連性を有する」とは当初の利用目的からみて、通常人にとって予測が困難でない程度の関連性があることを意味する。また「合理的に認められる範囲」とは個人情報取扱事業者の主観ではなく、社会的通念に照らして客観的に合理的と認められることを意味する。
とすると妊娠検査薬や、歌舞伎町での温かい食事と無料Wi-Fiの提供から、辺野古での警官隊との衝突やAV新法への抗議デモ実施というのは、仁藤氏らの頭の中ではともかく世間一般では結びつきようがないほど違う活動なので、社会通念に照らして客観的に合理的な範囲を越えた利用目的の変更として、法が認める「変更」の限度を超えている違法なものである。
そして「個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。」(18条)(以上の解釈は宇賀克也「個人情報保護法の逐条解説」[第6版]130項〜132項による)。
①妊娠検査薬や、歌舞伎町での温かい食事と無料Wi-Fiの提供から、②辺野古での警官隊との衝突やAV新法への抗議デモ実施というのは、仁藤夢乃氏らの頭の中ではどうか知らないが、世間一般では結びつきようがないほど違う活動なので、コラボは女性福祉や貧困支援をうたって入手した個人情報を、違法に政治活動へ目的外利用していると評価せざるを得ない。
また法21条は「取得に際しての利用目的の通知等」も義務付けているところ、この利用目的の通知(辺野古座り込みへの動員など)も速やかに行わないと違法である。ところが仁藤夢乃の「当たり前の日常を手に入れるために」(318項〜319項)では「沖縄合宿での思い出 辺野古でのごぼう抜き」とする章内で仁藤が「一緒に辺野古に行ったときは、座り込みに参加したい人だけがして、しない人は少し離れたところで見ていたんだけど、その子たちも、私たちがごぼう抜きされるのを見て泣いたり、ショックで「いま起きていることを知りたい」「なんで学校では教えられないの?」「次は自分も座りたい」と言ってきました。その後も、沖縄の基地問題や、政府がいろいろなことを数の力で押し切ろうとする問題に関心をもつようになったり、ひどいニュースがあると教えてくれたあり、「これってどう思う?」「これどうなの?」と意見を聞いてきたりするし、Colaboでは日常的に政治や社会問題の話もたくさんするよね。」
と述べている。座り込みが排除されるという場面を見て、ショックで泣いた参加者もいたというのは、事前に政治運動の危険性を仁藤氏らコラボ運営者が、利用者である若年の困窮した女性たちに告げずに個人情報を取得して目的外利用していたことの証左である。
最後に、コラボの支援対象者としてシェルターのメンバーになっている人々の属性について言及する。「当たり前の日常を手に入れるために」によると、幾度となく精神障害、知的障害、軽度知的障害である旨がグループのメンバーについて説明されている。すなわちP321では「Colaboとつながる子、特にシェアハウスでクラスメンバーのほとんどは、小中学校もあまり行けていなかったり、中卒か高校中退だよね」」、また189ではインタビューを受けていたゆうという少女は「ちょっと鬱っぽい」時期があったとしており、P177から181によるとあやは(知的障害者)手帳も取っておりColaboに来て変わったこととして、「金銭感覚」と「病み方」で、「屋上行かなくなった」「死にたいなって思ってた」が行かなくなった、「病みが浅くなった」というふうに自殺念慮の症状を有していた旨が分かる。
ここで知的障害や精神疾患を有する身寄りのない若年者が対象であることを前提とするならば、個人情報の利用目的はとても慎重に設定される必要があり、理解力が十分でない場合には特に丁寧な説明が必要である(そうでないと、頼り甲斐のある人を探している若年者は容易に「ご飯を食べさせてくれて、布団も用意してくれた。だからいい人に違いない」と思ってコロリと大人の言うことを鵜呑みにしてしまう。)。
そうでなくて、政治目的を隠したままいわば火事場泥棒的に個人情報を取得するのは法20条にいう「偽りその他不正の手段により個人情報」に当たる余地があり、またもしコラボが福祉団体として女性の個人情報を「駆け込み寺」のように受け入れる際に取得しているならば、沖縄で基地建設工事の警備に当たっていた機動隊へ当てる「肉の壁」のように、シェルターで暮らしていた構成員(うち3人は10代であったという)を連れ出すのは「違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。」とする法19条に違反する可能性が高い。
今回でてきたようなコラボによる重大な違反の疑いが強い個人情報の取り扱いについては、個人情報保護委員会が行政機関として違反を是正するための勧告や中止命令などを行うことがあり得る。その情報提供の主体は別に被害者に限定されていない。おそらくであるが、女性支援に関わらず他の多くの団体でも、「偽装勧誘」的に福祉を入り口に取り込んだ成員を、政治活動へ動員するような行為は(例えばドヤ街での労働団体によるオルグなど)、昔からあった。しかし、2003年5月に個人情報保護法が成立して公布され、あとまたコラボの活動がかなり極端で場所的にも異動を伴う(東京都にいたホームレス少女を沖縄や韓国へ「合宿」させるなど)ために、可視化された問題のように思う。
最後に確認すると政治団体として届出をした団体であれば個人情報保護法制の一部が適用除外になる余地があるが、コラボは政治団体としての届出をしていないただの一般社団法人なので、個人情報保護法の適用対象である。また日常の活動によるコンプライアンス遵守体制の整備は当然に、補助金給付や行政からの事業委託の要件や、違反した場合の契約取り消し条項があり得る(例えば前回扱った、新宿区・渋谷区・東京都とコラボの契約では、区長側が公有地使用許可を取り消しできる仕組みであった)ため、個人情報保護法違反の有無を含むコンプライアンス遵守は、コラボの活動にとって死活的に重要である。
・関係条文
個人情報保護法145条(勧告及び命令)「委員会は、個人情報取扱事業者が第十八条から第二十条まで、第二十一条(第一項、第三項及び第四項の規定を第四十一条第四項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)・・・・の規定に違反した場合又は匿名加工情報取扱事業者が第四十四条若しくは第四十五条の規定に違反した場合において個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる
2 委員会は、前項の規定による勧告を受けた個人情報取扱事業者等が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫していると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3 委員会は、前二項の規定にかかわらず、個人情報取扱事業者が第十八条から第二十条まで・・・の規定に違反した場合において個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
4 委員会は、前二項の規定による命令をした場合において、その命令を受けた個人情報取扱事業者等がその命令に違反したときは、その旨を公表することができる。」
第19条(不適正な利用の禁止)「個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。」
第20条(適正な取得)「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」
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【江藤貴紀】