「仕事で疲れてしまい、平日は勉強がはかどらない……」
「資格試験日まで時間がないのに、仕事の疲労がとれず、勉強をサボりがち……」
仕事と勉強を両立するビジネスパーソンなら、“疲労感” に悩まされることは多いのではないでしょうか。疲れのせいで、勉強習慣が乱れるのは惜しいもの。解決策があれば知りたいですよね。
今回の記事では、疲れていても勉強できるようになる3つの方法をご紹介しましょう。
疲れていても勉強できるようになる方法1. 勉強前に仮眠をとる
「まとまった勉強時間は夜しかとれないのに、眠気と疲れに勝てない……」。このような理由で、平日の勉強が滞っていませんか?
当てはまるなら、勉強前に仮眠をとって眠気を解消することをおすすめします。
眠くなるのは、脳の活動が限界を知らせているサインだ——このように説明するのは、作業療法士の菅原洋平氏。
脳内では、神経細胞間で情報が伝達されると、タンパク質の “リン酸化” という現象が起こるそう。リン酸化はタイマーのような役割を担っており、リン酸化が進んでから一定の時間が経つと、脳の活動は限界に達するとのこと。これが眠気を引き起こす仕組みだと考えられていると言うのです。
菅原氏によると、そんなリン酸化は、眠気を感じたときに眠ればリセットされるとのこと。リセットされたのち、脳は再び活動し始め、情報がスムーズに伝達されていくと言います。
つまり、眠いときは無理せず仮眠をとれば、脳をきちんと働かせ、勉強の効率を上げることができるのです。
とはいえ、帰宅してからの仮眠は、夜の睡眠の質に影響を及ぼしかねないもの。疲れているのならなおさら、そのまま朝まで寝てしまうかもしれませんよね。
そこで睡眠専門医の坪田聡氏がすすめているのが、「ミニ・ナップ」と呼ばれる仮眠法。10分間程度の短い仮眠のことです。10分程度であれば眠りと覚醒を繰り返す「ウトウト状態」を保てるため、ミニ・ナップは仕事終わりにも適した仮眠法なのだそう。
オーストラリアのフリンダース大学の研究では、10分間の仮眠により、覚醒度と認知機能のパフォーマンス向上が期待できると示されています。
疲れていて夜の勉強がはかどらない……という問題は、短めの仮眠で解決しましょう。そのまま眠りすぎないよう、アラームをセットしておくのも忘れずに。
疲れていても勉強できるようになる方法2. 運動する
「疲れているせいか集中できず、ダラダラと勉強してしまう……」。こんなふうに、机には向かえても、勉強に身が入らないことで悩んでいませんか?
その場合は、あえて運動をしてみてください。
精神科医の樺沢紫苑氏は、著書『神・時間術』で、午前中以外で集中力を高めることは難しいとしながらも、唯一午後や夜の集中力を高める裏技があると述べています。それが、運動です。
有酸素運動によって、意欲を高めるドーパミンのほか、脳を育てるBDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌されるのだそう。その結果、集中力・記憶力・思考力などの脳の機能が向上し、午前中と同じぐらいのパフォーマンスを発揮することができると樺沢氏は言います。
「疲労感があるのに運動したら、さらに疲れるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、意外にも運動には疲労を解消する効果もあります。特に、日中のデスクワークによる疲れをとるには運動が最適。
管理栄養士・パーソナルトレーナーの西巻草太氏によれば、机に長時間向かい血行が悪化したことによる肉体的疲労は、運動で血流をよくすると解消できるそう。また、運動には自律神経を整える効果もあり、ストレス・眼精疲労を含む精神的疲労を改善できるとのことです。
具体的に西巻氏は、以下の3つの運動を推奨しています。
- ウォーキング
10~30分の軽い有酸素運動をすると、疲労回復効果が高い。加えて、一定のリズムを刻みながら歩くという動きは、精神を安定させるセロトニンの分泌を促すため、心の疲れにも効く。 - ストレッチ
全身の血行を改善するのに最適。特に、デスクワークで筋肉が硬くなり、血行が悪化している人におすすめ。副交感神経を優位にすることもできる。 - ヨガ
ストレッチと同様、副交感神経を優位にさせ、血行を改善できる。深く呼吸して酸素を多く取り入れると、脳の疲労回復にも効果的。
「疲れていて集中力が続かない」と感じる人は、勉強と運動をセットで習慣にしてみてはいかがでしょうか。
疲れていても勉強できるようになる方法3. 脳の状態に合わせて勉強内容を変える
「夜にたくさん問題演習をしたいのに、疲れてどうしてもはかどらない……」。そんな状況を毎日繰り返していませんか?
そもそも、脳の状態は朝と夜では違うもの。それぞれの時間帯に発揮できる集中力の度合いに合わせて、勉強内容を変えてみるのも戦略のひとつです。
前出の樺沢氏は、朝に「集中力を要する負荷の高い作業」に取り組むことを推奨しています。なぜなら、目覚めてから2~3時間が、最も高いパフォーマンスを発揮できる「脳のゴールデンタイム」だから。
樺沢氏の説明によれば、脳は睡眠中に一日の情報を整理しており、朝起きたときには、脳は「ちりひとつないまっさらな状態」になるのだとか。一日の出来事に関する情報が脳に混在している夜に比べ、朝は集中力を要する勉強に適しているのです。
では、具体的にはどのような勉強が朝にふさわしいのでしょうか。樺沢氏が挙げるのは以下の3つ。
- 論理的な作業
- 文章執筆
- 語学の学習
「論理的な作業」には、演習問題を解く、計算が必要な科目に取り組むなどが当てはまるでしょう。「文章執筆」で言うと、レポートを書いたり、勉強した本の要約をしたりといったアウトプット作業が該当しそうですね。
そんな朝とは対照的に、疲れて集中力が下がりがちな夜には暗記勉強が適しています。
樺沢氏いわく、とりわけ寝る前の15分は記憶に最適な時間帯。寝る前に頭に入れた情報は、その直後に睡眠を経ることで記憶に残りやすくなるそうです。
また、ケンブリッジ大学大学院で心理学を学んだ塚本亮氏は、自身の経験をふまえ、暗記作業は脳を緊張から解放させることがポイントだと述べています。夜の静かな時間に、リラックスした状態で行なうことが好ましいのだそうです。
朝には集中力を要する勉強、疲れている夜には楽にできる暗記を中心に、勉強計画を立ててみてください。きっと、「疲れているから勉強できない!」などと嘆くことなく、効率よく勉強を進められるはずです。
***
今回の記事を参考に、疲れない学習スタイルを確立し、日々の勉強を積み重ねてくださいね。
(参考)
PRESIDENT WOMAN Online|なぜ「ショックなことがあって夜眠れない」のは、脳にとって良い事なのか
All About|仮眠を制する者は眠気を制す!体得すべき5種の仮眠法
PubMed|The short-term benefits of brief and long naps following nocturnal sleep restriction
樺沢紫苑 (2017),『神・時間術』, 大和書房.
ダイヤモンド・オンライン|デキる人はやっている!効果絶大な疲労回復法「アクティブレスト」とは
e-ヘルスネット|セロトニン
ダイヤモンド・オンライン|暗記しようとせずに暗記するとは? 3か月で5000語も覚えてしまった「独特の記憶術」
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。