前回かなりボヤキというか、本音でもあり本音でもないようなことをつぶやいてしまったが、それに関してエンジニアってどんなことを考えていないといけないか、もう少し具体的に考えてみる。

元々は昨年の記事だがこんなのをちょっと前に見かけた。

エンジニアとして生き残るために、してはいけない3つのこと


読むのも面倒くさいだろうから、どんな人が書いたかと index だけ載せておく。

書いた人は 2000年前後の就職氷河期の真っ盛りに大手電気メーカに就職して半導体エンジニアとして入社して、事業再編、リストラなどを経験した方である。
その方が言うには、

生き残るエンジニアには、「してはいけないこと」がある
・(1)一つの技術にかけてはいけない
・(2)人の言うことを100%信用してはいけない
・(3)理想のキャリアを追い求めすぎてはいけない


ということである。さて読んでみると (2) と (3) はエンジニアとしてよりは社会人としての心構え的なことなので、色々解釈出来そうだが気にしなくてはいけないのは (1) だと思う。
ここでは、真っ先にリストラ候補になったのは「入社以来、○○の技術一筋でやってきました」というタイプの人だったといっている。で、これは私も同感で自分も失敗した、と思っている。さらに突っ込んで考えると問題なのは「○○」なのか「○○の技術」なのかである。自分の場合は製品として考えれば「○○」は光ディスクドライブだ。「○○の技術」と考えると電気回路設計ということになる。
記事を書いた方は「○○」は製品を例に挙げている。まあ確かにそうだろう。栄枯盛衰は世の常。一つのヒット商品を開発したからってそれが未来永劫続くなど考えてはいけない、ということだ。特に電気電子技術はある程度仕組みが出来てしまうと IC 化されてその後は誰が作っても同じ、ということがおきがちだから、まあ 10年も持てば良い方だろう。

かつて就職活動して思ったことだが、製品経験というのは結構重要である。ぶちゃけ若い人なら「前職は○○の□□をやっていました」といって、それが希望の企業が求める製品、技術なら、あとは本人のキャラ次第というところだろう。

こんな絵を描いてみた。あくまでも私個人の意見である。異論は無制限に許容する。

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緑色の矢印は、他人があるエンジニアを見たときにどんなステータスがみえるか、ということである。「業界での立場」や「組織での立場」はハイクラスの人の話で、コンサルタント、プロジェクトマネージャなどの求人の場合はここが重要になる。どんなネットワークを持っていて、どれだけの規模のリソースを動かす器量があるかどうかということである。上昇志向の強い方は意識しておいた方がよい。

これらはおいておいて普通にエンジニアに期待したいのはまず「製品」であろう。今だったら「自動車」「ロボット」「IT 製品」といえば、まずは第一関門突破出来そうである。
「製品」でのマッチングが今一つだったら次に来るのが「スキル」「専門知識」だろう。実はこれが結構問題なのではないかと思う。ここでいう「スキル」とは CAD オペレーション、シミュレーション、小規模のプログラミング(プログラミングも立派な専門能力だが、ここでは製品開発を支えるものとしている)などを指す。「専門知識」とは電気電子系なら、アナログ回路、デジタル回路、基板設計、信号処理などの理論ベースのものになる。
みなさんは「スキル」と「専門知識」どちらが重要だと思いますか。おそらく「専門知識」と答える人が多いと思う。自分もそうだし、だいたい「専門知識」なしで製品を支えることなど出来ないからである。だが、図の矢印が上から書いてあるのかここに意味がある。点線の二つを除くと、上から見た場合先ほどから述べているように「製品」が一番広く見えるように書いてあるし、おそらく他人(はっきりいえば採用担当者、面接官)から見ても最も分かりやすい。
「スキル」だがこれは直接上から見ることが出来るし、こちらからも明確に主張しやすい。何ができます、何年やってますなどとである。だが「専門知識」はどうか。これは「製品」というフィルタを通して見える部分がほとんどで、「専門知識」のレベルを他人が判断するのは客観的な指標がないため難しい。苦労して身につけた専門知識が他の製品で応用出来るかどうかなどよほどの人でなければ分からない。最初の (1) を気にしなくてはいけない、というのはここにある。仮に自分のやっている技術が今も使えるものだとしても、それ単独では使えるものであることの証明が困難だと云うことだ。
記事の方は半導体専門でやって来ておられたようだが、同じ半導体設計でも求める機能、使うプロセスによってノウハウや専門知識が違う。たとえばアナログ回路部分をとっても「アンプ設計やシステム LSI などを多岐にわたって 10年やってます」という人と「5年になりますが CMOS センサー関係の設計をやって来ました」といった場合、求める技術が CMOS センサー関連技術者だったら後者を取るだろう。それはそれで妥当な判断かも知れないが、潜在的な能力は経験豊かな前者の方が高いかも知れない。末永く活躍してもらうには(多少事業内容が変動するなど)色々使い回しが出来る人の方が会社にとっては都合が良いことも十分あり得る。まあそれはあくまでも会社判断である。

ついでの残りの二つの地頭人物だが、これも簡単には評価しづらい。新入社員ならその上の階層がほぼないので、直接それらを見ることになるし、面接官も心得ているのでそれなりの妥当な評価はしてもらえるだろうが、経験者はそうはいかない。まあ地頭はそれでも学歴などである程度の確度で判断は出来る。思うに地頭がそれなりで、前向き思考と謙虚さがあればたいていの仕事はなんとかなると思うがどうだろう。経験不足は教わることである程度は何とかなると思うし。

ちなみに右の青の矢印だが、これは自分も含めて一緒に仕事をしている人からみた人物像だ。上司や同僚、後輩、部下などはちゃんと専門知識を見てくれる。自分のことを正しく見てくれる有り難い存在なのである。

さて、なかなか正当に見てもらえない「専門知識」のレベルだが、とりあえず検定や資格を取って地頭込みで能力を主張しかなさそうだ。このブログではあまりメジャーではないものの「ディジタル技術検定試験」の解説も書いているので、腕試しに取ってみるのもいいだろう。もちろん技術士などもお勧めである。

とにかく今やっている仕事が未来永劫続くなどと思ってはいけない。前に書いた話と関連するがゴールポストは自分で動かさないといつの間にか試合会場がなくなっていた、ということになりかねないのである。あまり悲観的になる必要はないが、時々危機感を持った方が良い。

ちょっと転職というテーマに近い内容になってしまったが、云いたいことはエンジニアとしてのアイデンティティーは何か、どうやってそれを認めてもらうかを意識しておいた方が良いと云うことだ。

蛇足だが、よく言われる英語力について一言。

自分はいばれるレベルではないので説得力に乏しいが、出来た方が良い、と云っておこう。理由は仕事の選択肢が増える、自由度が上がるということだ。単に仕事で必要だから、ではない。現在の職場で海外展開をしたいけど誰か適任者はいないかとか、求人情報を見て外資系にいい仕事がありそうだといったときに自分がその仕事を選べるからだ。主体的に動ける、選べる範囲が広がるというのは気持ちにも余裕が出来るし、可能性も広がる。

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