違反の頻発スポット「漁場」では白バイが待ち伏せ
白バイ乗りたちが行う取り締まり方法の多くが待ち伏せだ。
街中において違反をしやすい場所というのは、けっこう決まっている。あなたの身近にも、白バイをよく見かける交差点、高架下……などがあると思うが、そういった場所は、違反の頻発スポットであり「漁場」とも呼ばれ、白バイ乗りたちの仕事場となっている。
ノルマをクリアするためには、いかに良質な漁場を確保しているかということが重要であった。こうした場所は、先輩から後輩へと白バイ乗りに引き継がれていく。
ある時は見えない所に隠れ、ある時は同じ場所を何度も流しながら、獲物を待つ。経験を積むと、車両の動きで「こいつは違反をするぞ!」と直感的にわかるようになる。
例えば、スピード違反。これは停止して待伏せている時、目の前を通過する車両の加速状況から判断できるようになる。また、先輩隊員に、エンジン音で推定速度がわかるなんていう達人もいた。
スピード違反狙いは信号の少ない直線道路
ずばりスピード違反狙いのスポットで、誰もがかっ飛ばしたくなるような信号の少ない直線道路だ。こういう場所は、昼は白バイ、夜は覆面パトカーが精力的に活動する。
取り締まり方法は、一定区間を行ったり来たり走りながらのターゲットロックオンか、または裏路地や側道にて待ち伏せし、かっ飛んでくるターゲットをロックオンするかになる。多いのは後者で、通称「アパッチ」と言った。
流しでの取り締まりでは、走行している車両群のなかから、違和感のあるクルマに注意を払う。他の車両に比べて明らかに急いでいるように見える時は、臨戦態勢だ。いつでもロックオン、緊急走行ができるように身構えるのだ。
すべては売上げ実績をあげるため
白バイ乗りたちの特殊能力は、違反車を捕捉する能力だけにとどまらない。その後の切符処理能力も格段に磨かれていく。ベテラン白バイ隊員などは、長年の経験で培った観察力で、停止させた違反車両のドライバーの性質を即座に見極める。もう窓越しの一瞬で判別し、違反切符を最速で処理できるように、声掛けをしていくのだ。
全ては売上げ実績向上のため……。白バイ隊員は、日々、一般ドライバーからはまったく歓迎されない特殊能力を存分に発揮し、交通違反取り締まりに励んでいるのだ。
上からの試練はいつものこと。そんな上からの命令に絶対服従なのが警察官という生き物なのだ。文句を言いながらも、若い隊員たちは与えられたノルマ達成のため、黙々と切符切りに専念していった。
さて、毎月毎月の月間ノルマ、苦しい時は月末最終日の夜間でようやく達成という時も幾度かあった。ホワイトボードの種目別違反の数字がそれぞれゼロになった時がその月のノルマ達成の瞬間であり、小隊全員が笑顔で安堵するのだった。
だが、それから数時間後……、ホワイトボードには小隊長によって新たなる翌月のノルマ数字が示される。あっという間のリセットで、小隊全員がガックリするのだった。