違反切符のノルマは違反別に設定される
ところで、白バイはいつでも運用できるというわけではない。安全のため雨天時は四輪(交通パトカー)での活動となる。これは夜間帯の活動も同じである。そしてパトカーでの活動は、基本的に二人一組となる。そう、取り締まりを1件あげても、二人で1件となってしまう。つまり、個人成績は0.5件としかならないのだ。
しかもこれが上司と部下、先輩と後輩とのペアでの取り締まりとなると、上司や先輩は、部下や後輩に花を持たせるため、自分の売上げがゼロとなってしまう時も多々ある。そんな勤務状況があったため、個人ノルマは、けっして楽な数字というわけではなかった。
また各隊員の個人ノルマの達成状況が悪ければ、月間の小隊ノルマ達成も危うくなってきてしまう。隊員の中には練度の浅い若い隊員もいるし、取り締まりの技量が低い残念な隊員もいるからだ。月末近くになるとこの小隊ノルマ達成の危機感が大きくなり、小隊みんなで焦り出す。この危機感に拍車をかけてくれたのが、種目別違反ノルマの登場だった。
偉い人たちってのは、ただ単に反則切符を切ってくれば満足するというわけではなかったのだ。違反の種類を分けて、それぞれの違反ごとにノルマ達成を求め始めたのだ。これには本当に苦労させられた。こうなると、各隊員のプレッシャーは一層大きくなる。
ドライバーのうっかりミスも売上げにする
こうした日々の中で磨かれるのが、交通違反の取り締まり能力である。当然だが、白バイ隊員のそれは、特殊能力と呼べるほどに、他のお巡りさんたちに比べてずば抜けている。
そもそも交通違反は、知らないうちに犯してしまっている場合が多い。標識の見落とし、勘違いなどは、いわゆるうっかりミスだ。速度違反だって、悪質性の高いものは、それほど多いわけではなない。
けれども、そういった一般ドライバーが犯しがちなうっかりミスを、ミスとして注意するのではなく、取り締まって売上げにしてしまうのが、白バイ隊員なのだ。
しかもノルマ達成のため、ミスを犯しやすい場所や違反をあえて狙う能力が磨かれていく。こうして、白バイ乗りたちは、一般ドライバーから警戒され、嫌われる存在になってしまうのだ。