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食のエロティシズム [奇想・妄想]
さて風邪はすっかり治ってしまいました。
結局、熱も37℃前後で、寝込むこともなく、とくに薬を飲むでもなく、
仕事を休むでもなく。
風邪を引いても全くこじらせることなく、すぐに治ってしまう私は、
かなり免疫力が高いのか、そもそも体の歪みが少ないのか、
といったところ。
ところでローフードやマクロビ、ナチュハイ、自然療法など、
体によい食(のように思えるもの)をいろいろと勉強したり実践したりしている今日この頃
なにか物足りない、というか、満たされない感があって、
それは何なんだろう、と考えるに、それはつまり、
エロスが感じられない、ということなのだ。
という結論に達しました。
そもそも人間にとって、食べるという行為は、まず
美味しいものを腹いっぱい食べる、ということを第一の目的としているはずで、
本来的に「欲望」と直結しているはず。
空腹を満たすというだけであれば、それはPornographyに等しいのですが
その「欲望」が、体にいいかどうかなんてことは完全に度外視し、
純粋により美味しいものを追求したい、となったとき、
それはつまり食のエロスへと昇華する気がする。
健康志向の食のスタイルには、そういった「欲望」が全く感じられない。
あるとすれば、「健康」になりたい、という一種求道的な欲であって、食事は目的でなく手段であり、
そこでは「食欲」は見て見ぬふりをされている感があります。
もちろん、ローフード、マクロビ、玄米菜食などを徹底し、
それ以外の食事は全く食べたいとは思わない、という人もいるだろうけど、
それって殆ど仙人に近い存在なんじゃないかなあ、と。
それを否定する気はないし、それで幸せで健康であれば、それは素晴らしいことですが、
普通の人間には、やはり無理では。。
つまり、そこには人間臭さが欠落しており、それと同時に、
人間が数千年に渡って追求してきた美食の歴史、文化の破壊とも言えるのではないか、
と。
それはそれで重大な問題のような、
世の中、そんな人だらけになってしまっても、怖いような気がする。
逆に、ひたすら美食を追求しすぎ、通風などの病気になってしまったり、
それでも美食の追求をやめないような人の方が、
ほほえましい、といっては語弊があるだろうけれども、
より人間的というか、粋なような気がします。
そこでまず頭に浮かぶのは、なんといっても谷崎の「美食倶楽部」で
以下の冒頭を読むだけで、美食の持つむせ返るようなエロス性、そして
なんともいえない危険なカオリを感じざるをえません。
恐らく、美食倶楽部の会員たちが美食を好むことは彼等が女色を好むのにも譲らなかったであろう。(中略)何か変わった、珍しい食味に有りつくことが、美しい女を見つけ出すのと同じように彼等の誇りとするところであった。(中略)
彼等の意見に従うと、料理は芸術の一種であって、少なくとも彼らにだけは、詩よりも音楽よりも絵画よりも、芸術的効果が最も著しいように感ぜられたからである。(中略)
ちょうど素晴らしい管弦楽を聞く時のような興奮と陶酔とを覚えてそのまま魂が天へ昇っていくような有頂天な気持ちに引き上げられるのである。美食が与える快楽の中には、肉の喜びばかりでなく霊の喜びが含まれているのだと、彼等は考えざるを得なかった。
(谷崎潤一郎 「美食倶楽部」)
谷崎についてはひとまず措くとして、
翻って健康的な食事にハマる人にとっては、食事=快楽という発想は別次元であり、
なによりも体によいことが第一でありながらも、
でも本当は、焼肉とかケーキとかカツ丼とか食べたいのに、
我慢している人の方が寧ろ多いのでは、という気がするんですな。
だとすれば、いくら健康のため・やせるためとはいえ、何らかの抑圧がそこにはあり、
そしてエロスの抑圧のあるところ、人間は必ずエロスの歪みを生じるわけで。
実際に、自分を律しすぎることにより、神経症的な状態に陥る人もいると聞きます。
ところで、美食の追求というと、ともすれば、金持ちの道楽というイメージがありますが
それは必ずしもそうではなく、
例えば、ケーキ店さんに並ぶケーキを見て、そのときおなかが減っていなかったとしても
美味しそう、とか、食べたいと思うのであれば、そのケーキにはエロスがあると言えるでしょう。
また、バタイユ的にいえば、ダイエット中に、自らに禁じていたケーキを、
我慢できずに食べてしまうことは、禁を犯すことになり、
その意味で極めてエロティックな行為と言えるかもしれません。
食事のレシピだけではありません。
ヴィーガンとかベジ系、マクロビ系のレストランやカフェというのは、たいてい
その内装も、白やナチュラル系の色で統一されていたり、
家具も木の温もりを生かしました、みたいなナチュラルなものばかり。
これも、私には、かなり物足りない。
なんだか、漂白された、全く毒気のない、健康的すぎる空間。
なんというか、人間ってそんなにナチュラルで健康的なものなのか、
不健康なものは全て否定されるべきなのか、
そんなことを考えてしまうのです。
ところで、パニック障害・低血糖症、白砂糖の害などについて
非常によくまとまった記事を見つけたので。↓
http://www.h3.dion.ne.jp/~ysrg/kenkouhou/satou.html
これはまた別の機会に書こうと思っていますが
最近低血糖症を克服しつつある私から見るに、
やっぱりパニック障害と低血糖症は関係があると思われます。
<つづく>
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Guido Reni, Saint Sébastien, 1615
Technique Huile sur toile,
146x113cm
Exposé à Gênes (Italie, ) au Palazzo Rosso
2010-11-20 11:01
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