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福岡県|2022年9月26日 17:52

【中継】福岡県で保育園バス置き去り死 初公判で語られたのは

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去年7月、福岡県中間市で5歳の男の子を保育園の送迎バスから降ろし忘れ、熱中症で死亡させたとして、業務上過失致死の罪に問われた当時の園長ら2人の裁判です。26日の初公判で、2人は起訴内容を認めました。福岡地裁前から中継です。

■遠野キャスター
初公判は午前11時すぎに始まり、先ほど午後5時前に終わりました。当時の園長は、上下黒のスーツ姿で、髪を後ろで一つにまとめて出廷し、終始、硬い表情で緊張している様子でした。

この事件は去年7月、中間市の双葉保育園で、この園に通っていた倉掛冬生ちゃん(当時5)が約9時間にわたって送迎バスに取り残され、死亡したものです。

当時、園長だった浦上陽子被告(45)と、園児をバスから降ろす際に補助していた保育士の鳥羽詞子被告(59)が、業務上過失致死の罪に問われています。

26日の初公判で、2人は「間違いありません」と起訴内容を認めました。

検察側は冒頭陳述で「気温30度以上の日が続く中、車内に放置すれば熱中症になることは分かっていたにもかかわらず、すべての園児の降車を確認する必要があったのに、安全管理義務を怠った」と指摘しました。

幼い男の子の命が奪われた事件を振り返ります。



■2020年運動会の様子
「頑張れ、冬生!ファイト!いけいけー!」
「冬生、運動会どうでしたか?」
「楽しかった。」

福岡県中間市の倉掛冬生ちゃんは去年7月、最高気温が33度を超える炎天下で、中間市の双葉保育園の送迎バスにひとり取り残され、死亡しました。バスの中で倒れているのが見つかったのは、約9時間後です。死因は熱中症でした。この日、車内の温度は最高で50度を超えていたとみられています。

バスには冬生ちゃんを含めて7人の園児が乗っていましたが、職員は運転していた当時の園長、浦上陽子被告(45)1人だけでした。保育士の鳥羽詞子被告は、バス到着後に園児が降りる際の補助役でした。

■倉掛冬生ちゃん
「水の呼吸、水の呼吸からせないけんと?水の呼吸 壱ノ型。」

冬生ちゃんは、わずか5歳でこの世を去りました。事件直後、冬生ちゃんの母親の手記には、「冬生が1人閉じ込められたバスの中で、どんなに苦しかったか、どんなに暑かったか、どんなに寂しかったか、どんなに怖かったかと思うと、胸が張り裂けそうになります。」と、悲痛な胸の内が刻まれていました。

当時、どのような安全管理が行われていたのか。事件後、保育園側が開いた保護者説明会で、浦上被告は次のように話しました。

■当時の園長・浦上陽子被告(45)
「小さい子が泣いているのをあやしていたんですよ。その子をあやして降ろさなきゃいけないというので、そっちのほうに神経がいって。」
■保護者
「バスカードがあるじゃないですか。バスカードがあれば、冬生くんの存在に気づいていたんじゃないかな。」

本来なら園児がバスに乗るときに職員が回収するバスカードは、出欠確認にも使われるものでしたが、冬生ちゃんのカバンに入ったままでした。

双葉保育園の元職員は出欠確認が日常的に杜撰で、安全管理の不十分さを指摘しにくい雰囲気があったことを明かしました。

■双葉保育園の元職員
「(園児の欠席は)全部ホワイトボードで書くのが決まりなんですけど、それがホワイトボードに書かれていなかったり、『あとで書くけどこの子休みだから』というのも漏れていたり、抜け落ちていることは常にありました。明らかに間違っていても、指摘することをためらう空気がありました。一番考えてしまうのは、どうやったら園長に怒られずに一日終わるか、みんなそれで頭がいっぱいだったと思います。」

事件から1年。冬生ちゃんは、ことしの春、小学校の入学式を迎えるはずでした。

■冬生ちゃんの母親(38)
「冬生、1年たつけど、お母さんは会いたくて仕方ないです。」

26日からの裁判で、遺族が求めることについて、冬生ちゃんの祖父は次のように話していました。

■祖父(69) 
「前園長には真実をしゃべってもらいたい。5歳の子でしたので、先があった人が亡くなったわけですから、罪を重くしてもらいたい。」

園の安全管理の実態とは。そして浦上被告は法廷で何を語ったのでしょうか。


■遠野キャスター
改めて、当時園長だった浦上被告は26日の初公判で、起訴内容を認めました。

(Q.初公判では、当時の安全管理について検察はどのように指摘したのか)
検察側は、浦上被告らの供述を引用し、大声で泣いていた1人の園児に気を取られていたこと、慢性的な保育士不足で、マニュアルも職員らに引き継がれていなかったことを指摘しました。また、保護者に確認してないのに無断欠席したと判断していた、管理体制のずさんさに言及しています。

(Q.午後からの被告人質問で、事件について浦上被告は何を語ったのか)
弁護側からの「何が原因で、この事件が起きたのか」という問いに対して、「バスの車内の確認と、降車時に人数の確認を最低限しなければいけなかった」と後悔を口にしました。その上で、確認できなかった理由について、「大声で泣いている子どもにとらわれて、気持ちが焦って確認できていなかった」と説明しました。

(Q.浦上被告から遺族への謝罪の言葉は)
冬生ちゃんの遺族に対しては「とても大切に冬生ちゃんを育てていると知っていたので、あの事故の日から心を痛めていると思うと、とても申し訳なく思う」と時折、声を詰まらせながら謝罪の言葉を口にしました。

さらに、浦上被告は2007年に北九州市で同様の事件があったことに触れ、「自分が同じようなことを繰り返すとは思っていなくて、自分がしっかりしていたら、被害を起こすことはないと思った。まさか自分が。」と話しました。

一方で、検察側は同じ罪に問われている鳥羽被告が、浦上被告について「園長は常に上から目線で、意見しようとは思わなかった」と供述していることを明らかにしました。

検察側は、『明るく元気な男の子で、テレビの音にあわせて踊って周りを楽しませていた。保育園の友達が大好きで、友達と遊ぶのを楽しみにしていた。浦上被告、鳥羽被告のことは絶対に許せないので、厳重な処罰を与えてほしい』と冬生ちゃんの母親の思いを読み上げました。

裁判に参加している遺族側は、浦上被告らの様子をじっと見つめていました。

次の公判は10月13日に行われる予定で、冬生ちゃんの母親が意見陳述する予定です。

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