米国だけの問題ではない
アフガニスタンとイラクへの軍事侵攻の是非を問うこととは別に、国家が若者を戦場へ送り込むことで、こうした悲劇が増えている事実を直視する必要がある。主要メディアのスポットライトが当たらないところで、上記2人のように死を選ぶ若者がいま確実に増えている。
非営利団体「復員軍人に平和を」によると、海兵隊のリクルーターはアレックスさんを、最もターゲットにしやすい若者に分類していたという。低所得層のヒスパニックで、両親が離婚し、学歴も高校卒業で確固とした進路が決まっていない若者だ。
入隊して中東諸国に行くことが国家の安全保障上、重要なことであると教練で教え込む。名誉なことであると思い込ませる。しかし、復員兵たちの心のケアに多くの関心を払っているわけではない。
これまで、米国の自殺者は日本よりも少ないと漠然と思われてきた。確かに数字を見ると、10万人あたりの自殺率は過去10年、日本が20~25人で推移しているのに対して、米国は12~13人にとどまっている。
ただ復員兵の自殺割合をら見ると、驚くべき高さを示している。米国の自殺者数が年間約3万人。そのうち復員兵が約25%を占めているのだ。戦争がどれほど生身の人間を蝕んでいるかがわかる。
バラク・オバマ大統領は08年の当選直後、アフガニスタンとイラクから米軍を完全撤退させると述べた。イラクからは名目上11年に完全撤退した。2014年5月下旬には、アフガニスタンの駐留米軍を16年末までに完全撤退させると述べた。大統領としての公約を果たすつもりだ。けれども前述したように、米兵を帰還させても復員軍人の心の問題を解決できるわけではない。
日本政府が集団的自衛権の行使を容認するよう憲法解釈を変更した。帰還兵の心の問題は、今後米軍と共に軍事活動をすることになった時、自衛隊員にも降りかかってくる問題である。
第2次世界大戦から69年がたち、実際の戦場がどういう場所かを語れる人が少なくなっている。今こそ、米兵たちの声に耳を傾けるべきかもしれない。
(この記事は日経ビジネスオンラインに、2014年11月18日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)
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6件のコメント
けーしー
例えば、心身に障害を持つ人、病気を抱える人、心身に兵員としての適性を欠く人は、軍に勧誘されないでしょうし、たとえ志願したとしても採用されないでしょう。同様に兵役の経験からこうした精神的ダメージを負う可能性のある人材を予め見分けて、軍務につか
せない方策はないものでしょうか。おそらくほぼすべての人がそう診断され、誰も戦場に行けなくなる、と言うのが本来の姿なのかと思います。戦争を無くせないのでしたらせめて、一部の特殊な人材がロボットを使って行うゲームにすればよいのでしょう。人同士が殺し合う不毛さを人類皆が共有できないはずはありません。...続きを読むマーちゃん
無職
何故戦争が起きるのか?各国の国益重視が摩擦を起こし、戦争へと導くのであろう。国益とは国の指導者が自分達の利益になることが国民のためになり、国家を発展させると考えているのでしょう。アフガン、イラク、次はイランとなる可能性が高くなってきました。
イランを追い詰め、経済制裁を掛け、他国も同調する様強制するという行動こそ戦争への第一歩となります。米国も戦闘員のことを十分考慮しておらず、戦地に行った人はこのレポートにあるように、自殺者が増加することになるのでしょう。今のトランプ政権はそんなことがあることも知らず、又国家の方針を決める時はそんなことは関係ないという感じです。戦地に赴く人はたまったものではありません。米国の若者やマスコミがこのことを米国内でもっと取り上げるべきです。例えば今のイランの件でも反戦運動を強化し、戦争が出来ない状態に持っていければと思います。香港のデモもかなりの効果が得られています。政府高官よ!戦争に走ることは許さない。他の方法で解決せよと訴える必要があると思います。戦争反対!...続きを読むkbsan
人間は 他人を助けても殺さない事が正しいと教育されて育つので 自分が目の前の人を殺す事に 精神的に耐えられるか大問題である。二次大戦時は陸軍では特に 先輩兵から理不尽なイジメしごきを受けて精神的に追い詰められ、戦場で役に立つ兵隊になった。目
の前で人を殺す事に耐えられるには 異常な精神状態が必要だろう。現代人には耐えられないのではないか。手を下すのはロボットに代わりたい。...続きを読む護民官ペトロニウス
猫
別に軍人さんがPTSDになるのは戦地に派遣された時に限らないのだけどね。
例えば、自衛隊でPTSDが認識されたのは1985年の日航機墜落事故の時だとか。
救助(というか遺体回収・・・実際には「肉片」の回収)にあたった少なくない自衛官がPTS
Dを発症したそうな。...続きを読むそれを教訓に災害派遣(例えば東日本大震災の際とか)にも隊員のメンタルに対応する医官が派遣されているよ。
護民官ペトロニウス
猫
>現代人には耐えられないのではないか。手を下すのはロボットに代わりたい。
完全自律ロボットならともかく、人間が判断に介在するとこれまた精神的にヤバい事になりかねなくてな。
https://www.sankeibiz.jp/gallery
/news/160130/gll1601301712001-n1.htm
...続きを読むじゃあ完全自律ロボットなら良いのかと言えば暴走の可能性がねー。
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