だが精神状態は芳しくはならなかった。母親に「僕は人殺しだ」とつぶやき、ふさぎ込む日が多くなった。精神科医のところに通ったが、最後は自宅の押し入れで首を吊った。21歳だった。
戦場に送られた1人の若者が直面した現実がここにある。入隊前のカークランドさんは、パソコンやスマホに興じる、日本の若者と同じような若者だったかもしれない。だが入隊して半年後には戦場に赴任し、死に直面する体験をして戻ってきた。同じ体験をした他の人間が、その時に真っ当な精神状態を保っていられるかどうかは誰にもわからない。
兄の戦死が、家族総鬱の引き金に
次に、戦争で家族を失ったある一家が陥った状況を紹介する。
米軍がイラクに侵攻した翌04年。8月にしては過ごしやすい日だったという。当時17歳だったブライアン・アレドンドさんはメイン州の自宅の庭にいた。1台の車が路上に停まった。
海兵隊の制服を着た隊員2人がクルマから降りてきて、「お母さんはご在宅ですか」と訊いた。ブライアンさんの両親が離婚し、母親が家長であることを海兵隊員は知っていた。
「母はいま外出しています」
ブライアンさんはなぜ海兵隊員が自宅を訪ねてきたかをすぐに察知したという。イラクに派兵された兄アレックスさんに何かあったのだ。訃報を知らせにきたと感じた。
海兵隊員はアレックスさんが狙撃兵に撃たれて死亡したと伝えた。
外出から戻った母親に、ブライアンさんは泣きながら「ごめんなさい、お母さん。ごめんなさい」と繰り返したという。
アレックスさんがイラクに派兵される直前、弟ブライアンさんのもとへ1通の手紙が届いていた。そこには「海兵隊に入隊して半年しか経っていないのに、イラクに派兵されることになった。これは国家を守るための好機を与えられたということで、ありがたいと思う。死はまったく恐れていない」と記されていた。兄の訃報を聞いて、手紙の内容が急に蘇ったという。
兄の死後、ブライアンさんは高校を中退する。突然の兄の死を受け止められず、何にも手がつかなくなってしまったのだ。いくつかアルバイトをしたが長続きしなかった。
精神を病んでしまったのはブライアンさんだけでなく、母親と離婚した父親も同じだった。皆が鬱状態に陥り、精神科に通うようになった。そしてアレックスさんの戦死から7年後、ブライアンさんは裏庭で首を吊って命を絶った。
6件のコメント
けーしー
例えば、心身に障害を持つ人、病気を抱える人、心身に兵員としての適性を欠く人は、軍に勧誘されないでしょうし、たとえ志願したとしても採用されないでしょう。同様に兵役の経験からこうした精神的ダメージを負う可能性のある人材を予め見分けて、軍務につか
せない方策はないものでしょうか。おそらくほぼすべての人がそう診断され、誰も戦場に行けなくなる、と言うのが本来の姿なのかと思います。戦争を無くせないのでしたらせめて、一部の特殊な人材がロボットを使って行うゲームにすればよいのでしょう。人同士が殺し合う不毛さを人類皆が共有できないはずはありません。...続きを読むマーちゃん
無職
何故戦争が起きるのか?各国の国益重視が摩擦を起こし、戦争へと導くのであろう。国益とは国の指導者が自分達の利益になることが国民のためになり、国家を発展させると考えているのでしょう。アフガン、イラク、次はイランとなる可能性が高くなってきました。
イランを追い詰め、経済制裁を掛け、他国も同調する様強制するという行動こそ戦争への第一歩となります。米国も戦闘員のことを十分考慮しておらず、戦地に行った人はこのレポートにあるように、自殺者が増加することになるのでしょう。今のトランプ政権はそんなことがあることも知らず、又国家の方針を決める時はそんなことは関係ないという感じです。戦地に赴く人はたまったものではありません。米国の若者やマスコミがこのことを米国内でもっと取り上げるべきです。例えば今のイランの件でも反戦運動を強化し、戦争が出来ない状態に持っていければと思います。香港のデモもかなりの効果が得られています。政府高官よ!戦争に走ることは許さない。他の方法で解決せよと訴える必要があると思います。戦争反対!...続きを読むkbsan
人間は 他人を助けても殺さない事が正しいと教育されて育つので 自分が目の前の人を殺す事に 精神的に耐えられるか大問題である。二次大戦時は陸軍では特に 先輩兵から理不尽なイジメしごきを受けて精神的に追い詰められ、戦場で役に立つ兵隊になった。目
の前で人を殺す事に耐えられるには 異常な精神状態が必要だろう。現代人には耐えられないのではないか。手を下すのはロボットに代わりたい。...続きを読む護民官ペトロニウス
猫
別に軍人さんがPTSDになるのは戦地に派遣された時に限らないのだけどね。
例えば、自衛隊でPTSDが認識されたのは1985年の日航機墜落事故の時だとか。
救助(というか遺体回収・・・実際には「肉片」の回収)にあたった少なくない自衛官がPTS
Dを発症したそうな。...続きを読むそれを教訓に災害派遣(例えば東日本大震災の際とか)にも隊員のメンタルに対応する医官が派遣されているよ。
護民官ペトロニウス
猫
>現代人には耐えられないのではないか。手を下すのはロボットに代わりたい。
完全自律ロボットならともかく、人間が判断に介在するとこれまた精神的にヤバい事になりかねなくてな。
https://www.sankeibiz.jp/gallery
/news/160130/gll1601301712001-n1.htm
...続きを読むじゃあ完全自律ロボットなら良いのかと言えば暴走の可能性がねー。
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