最長在任、からっぽな時代 安倍元首相国葬 吉岡忍さんルポ
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国民の間で賛否が分かれ、議論を呼んだ安倍晋三元首相の国葬。弔意を示すために、あるいは反対の気持ちを示すために人々が向かった東京・日本武道館周辺を佐久市生まれのノンフィクション作家、吉岡忍さん(74)に歩いてもらった。
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時に時代は、政治家の名前とともに語られる。天皇主権と憲政の両立を狙った伊藤博文、戦争と破局への火ぶたを切った東条英機、所得倍増とブルドーザーで高度成長を駆動した池田勇人や田中角栄。
ならば、在任8年8カ月、憲政史上最長を記録した安倍晋三元首相はどうか。凶弾に倒れて80日、55年ぶりの国葬儀は主要メディアの世論調査すべてで「反対」が上回る異様な空気の中で行われた。
私は現場に向かった。
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昼前。秋空から炎暑が降った。取材ヘリが舞っている。
地下鉄半蔵門駅から老若男女が引きも切らず湧いてくる。行列は千鳥ケ淵緑道にあふれ…
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