どうして、その事実が確認できるのか、示していこう。
2017年に女優たちから聞き取りし、DVDが売れきって、レンタル商品も数年もない短いサイクルで完全に次世代作品に置き換わることを想定して出演した女優たちにとって、インターネット時代が到来し、自分の出演作品が、永久に販売し続けられ、しかもスマホで簡単に見ることができることは想定外であったことがわかった。顔バレも、まずしないと思っていたわけである。だからネット配信をとめてほしいというのである。
契約書には、メーカーは永久に映像を自由に使えると書いてあったので、これをやめてもらうには、出演強要されたとでもいうしかない。配信停止の希望が、彼女たちの本音ではないかと、私は考えた。
そこで、女優に一方的に不利な契約は無効との立場に立ち、メーカーの代表と相談、交渉し、販売開始から5年あるいは、撮影から5年半経過した作品は、申請があれば無条件で配信停止する、5年経過してなくても、配信停止を望む場合は、メーカーに検討を促すという制度をAV人権倫理機構として2018年2月に創設した。
この自主規制制度により、2022年3月31日までに、551人の女優の28199本の作品を配信停止等の措置をしている。多数の女優からの申請があったので、私の予想通りだったと考えている。
そして、出演強要された女優がいれば、当然、作品を消してほしいので、停止申請が来ると予測していた。ところが、強要があったと主張されるケースは数えるほどしかなく、それら全てのケースについて検証したのだが、強要にあたるケースはなかなか見つからなかった。
マスコミで報じられた女優についても検証しようとしたが、そもそも彼女たちの誰一人、停止申請してこなかった。もちろん、こちらで検証は行ったが、出演強要に該当するケースはなかった。
そうこうするうち、2018年に、一件だけ強要事例と呼べるケースについに遭遇し、丁寧に女優からも聞き取った。その結果、女優の特定を避けるために詳細は書けないが、非常に特別なケースであることが判明し、実は、出演強要は、ほぼ起こりえないことに気づかされた。
ここ数年の状況を説明すれば、1年間に新作の発売は3万作、たとえば配信サイト最大手のFANZAのサイトで、現在売られている作品数は約35万作である。1年間の実働女優数は2000人、その過半は、デビューしたが売れず、半年以内に女優引退となっている。
小説や、レコードと同じで、売れる人だけ大量に売れて、ほとんどの女優さんは売れずに消えているわけである。この現在の過当競争状態の中で、本気で出演する気がない、断れずに出演してしまった類の作品が売れる可能性は、真にゼロに近い。
このことに気づいて、女優、プロダクション、メーカーに対し毎年実施してきたアンケートを再検討した。
なぜなら、撮影がうまくいかない場合、途中で撮影中止、撮影は終えたが、動画編集やモザイクをつけ、審査団体に表現内容に問題がないかチェックをうけ、DVDの表紙デザインを作って量産する前に、作品化断念ということがありえる。