表現の自由にまつわる言説の事実関係を検証しています。

要旨

 『AV新法は当事者の声を聴かずに作られた』とする主張は不正確でミスリードである。

発言

荻野稔/大田区議(無所属)*1

立法過程にそう言う邪悪な意志が介在していた可能性は高いでしょう。
当事者はヒアリングには呼ばずに(呼んだのは外部の審査機関)、更にはこれは内部で頂いた資料ですが、一部の人間は適正AV業界の自主規制は機能していないと説明をして回っていたのですから。
とはいえ、事実を知らなかった人も多い

樽井良和/元参議院議員(国民民主党)*2

#AV新法 の問題点
①法案成立過程で当事者の話を聞いていない。

意見交換した事業者側の団体はAV人権倫理機構のみで、公聴会は一度しか行わず、わずか1ヶ月半で成立。
突然、降って湧いたような法律の施行で業界は混乱
撮影の中止も相次ぎ、あてにしていた収入を失い困窮する当事者も多数います。

評価

 事実関係:不正確
 解釈表現:ミスリード

背景

 いわゆるAV新法の制定過程と内容については背景:AV新法を参照のこと。

評価の根拠

事実関係:不正確

 AV出演被害防止・救済法はその作成過程で、5月9日に公聴会を行いAV人権倫理機構にヒアリングを行っている。AV人権倫理機構は外部の審査機関であるものの*3、団体として*4*5、あるいは理事個人としてはAV業界に立った発言も少なくなく*6、実質的にはAV業界の当事者団体としてみなすことは不当とは言えない。実際に、ヒアリングに参加した赤澤亮正衆議院議員(自由民主党)もAV人権倫理機構の主張を『業界の声』と見なしている*7。ヒアリングの対象がAV人権倫理機構のみであったこと、あるいはAV人権倫理機構の発言機会が少なかったことをもって不十分であると評価することは可能であるものの、少なくとも『AV新法は当事者の声を聴かずに作られた』わけではない。よって、『AV新法は当事者の声を聴かずに作られた』とする主張は不正確であると評価できる。

解釈表現:ミスリード

 上述のように、AV出演被害防止・救済法は、当事者の主張を全く反映せずに作られたものではない。このことから、同法が当事者の声を全く聴かずに作られたかのように主張する発言はミスリードであると評価できる。
 なお、本来同法の当事者は出演強要の被害者であって、被害に遭っていない出演者や製作者ではない。実際に、法律の内容も、契約から撮影までのインターバル等を無視しても契約を解除できるだけであり罰則などは(脅迫などがあった場合を除いて)存在せず、強要被害に遭っていない出演者はこれまで通り作品制作を行えるものである*8。このことから、同法における「当事者」を強要被害に遭っていないAV業界関係者であるとみなす発言も同様にミスリードであると評価できる。

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