1979年~80年・点景 横溝にはまり、書き出す | 日々是コラムなり ~trifling beetleのブログ~

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1979年~80年・点景

横溝にはまり、書き出す

 

 

 

夜目にも鮮やかに咲きほこる白い芙蓉の花に包まれた石畳を踏みしめながら、巡査は玄関へ入った。

人の気配は感じられない。

暗がりの中を探りつつ、彼は問題の部屋に辿り着いた。

灯りのスイッチを押すと、バラ色の光が部屋に溢れる。

だが次の瞬間、彼は殴られたような驚愕に打たれた。

敷きつめられた派手な模様の絨毯の上に、胸から鮮血をしたたらせた女の変死体が......。

 

それぞれに複雑な殺害動機を持つ7人の容疑者と、素人名探偵都築欣哉の対決を描く表題作ほか7編を収録。

カバーイラスト/杉本一文

横溝にはまり、見様見真似ながら、短編小説を書いてみることにした。

いや、思い切ったもんだな、12歳の俺。

そういう行動の直接的な原因となった作品が、この「芙蓉屋敷の秘密」の読破。

 

 

「富籤紳士」「生首事件」「幽霊嬢」「寄せ木細工の家」「舜吉の綱渡り」「三本の毛髪」「芙蓉屋敷の秘密」「腕環」の8編が収められている。
いずれも初期作品であり、昭和2〜5年に発表されているもの

 

初期の作品集である。

 

メインの芙蓉屋敷の秘密は昭和5年に新成年に発表された著者はじめての本格長編。

富籤紳士

生首事件
井汲潤三が結婚を誓った娘お玉の元に、顔を滅茶苦茶にされた生首が届けられた。しかし奥歯に最近金をかぶせた跡があり、それから井汲がひそかにつきあっていた女優水木瑠璃子と判明した。しかし栗栖刑事は、借金で首の回らなくなっていた瑠璃子の弟子花代が行方不明になっている事を知り、事件を解いた。

幽霊嬢
最近山野茂は「空の三勇士」なる活動写真を取り終えたが、その中の俊夫と言う少年は「私が仕えていた大家の出奔したお嬢さん」ではないか、との投書を受け取った。実は俊夫役はシナリオライター板村尾松、主役宇津木天馬と相談した上、一般公募して決めたのだが、選ばれた役者はその正体を明かさず、撮影後消えてしまった。

寄せ木細工の家
撮影で美波綾子は寝台の上に乗り、いろんな恋人からの手紙を一つ一つ丁寧に読む。いつの間にか天蓋がゆっくり下がって来て、気がついた時には遅く押しつぶされてしまった。その寝台は香取道之助という男の寄せ木細工で作ったと言われた屋敷から持ってきた物だった。香取は数ヶ月前に妻とともにその家で奇妙な死を遂げていた。

舜吉の綱渡り
恋人を行政官に取られた舜吉は、死をかけて綱渡りをして見せようと準備した。しかしまさに渡ろうとした時大地震がおこり…。馬鹿馬鹿しくても小説は面白く、ロマンがあればいい。水谷準の「お・それ・みよ」を思い出した。

三本の毛髪
学生の山崎と伊藤が散歩していると大学教授神前氏の洋館二階で二人が争っている様子、そして顔を出した神前氏の「助けてえ!人殺しイ」の声。あわてて駆けつけると階段下に短刀を胸に刺され仰向けに倒れた神前教授が絶命していた。そして教授は三本の毛髪を握っていた。下から短剣を上に投げ揚げて殺すという殺害方法が面白い。

芙蓉屋敷の秘密
私が探偵業親友都筑欣哉と詩人白鳥芙蓉の経営する「芙蓉酒場」に行ったとき、隣の山部とという男に電話。山部が答えて「え、こ、こ、殺したって!」。そしてその夜芙蓉屋敷に入った巡査が何者かに殴りつけられ、白鳥芙蓉は自室で心臓を一突きされていた。絨毯の上にはダイヤモンドの粒。階下の八畳からは犯人の物らしい帽子が見つかる。
そのころ屋敷を訪問していた芙蓉の恋人、服部清二が疑われるが、彼は抱水クロラールを嗅がされ眠らされていた。清二を争っていた遠山静子は、芙蓉に亜砒酸を飲ませて殺したものと考えたが、死因は毒殺ではなかった等々。
なんと容疑者が七人、しかもそれぞれの動機が嫉妬、痴情、物盗り、怨恨、復讐、友情、子供への愛とそれぞれに違う。本筋の事件に多くの事件が絡み合って複雑になっているがそれを僥倖も手伝って都筑欣哉が見事に解き明かす。

腕輪
巡回中の警部の元に「どろぼう…・夫が…」と夜会服の夫人が倒れ込み失神、手にはまだ薄煙のたつピストル。屋敷をのぞくと打撲傷を受け白髪を血に染めた夫の古峯博士の死体と背後から銃撃を受けたらしい男の死体!実は妻の愛人による夫殺人劇。現場にたまたま入り込んだ泥棒はだまして射殺したのだが、泥棒には相棒がいた!

 

 

夜目にも鮮やかに咲きほこる白い芙蓉の花に包まれた石畳を踏みしめながら、巡査は玄関へ入った。

人の気配は感じられない。

暗がりの中を探りつつ、彼は問題の部屋に辿り着いた。

灯りのスイッチを押すと、バラ色の光が部屋に溢れる。

だが次の瞬間、彼は殴られたような驚愕に打たれた。

敷きつめられた派手な模様の絨毯の上に、胸から鮮血をしたたらせた女の変死体が......。

 

それぞれに複雑な殺害動機を持つ7人の容疑者と、素人名探偵都築欣哉の対決を描く表題作ほか7編を収録。

カバーイラスト/杉本一文

 

「富籤紳士」「生首事件」「幽霊嬢」「寄せ木細工の家」「舜吉の綱渡り」「三本の毛髪」「芙蓉屋敷の秘密」「腕環」の8編が収められている。
いずれも初期作品であり、昭和2〜5年に発表されているもの

 

初期の作品集である。

 

メインの芙蓉屋敷の秘密は昭和5年に新成年に発表された著者はじめての本格長編。

 

富籤紳士

 

生首事件
井汲潤三が結婚を誓った娘お玉の元に、顔を滅茶苦茶にされた生首が届けられた。しかし奥歯に最近金をかぶせた跡があり、それから井汲がひそかにつきあっていた女優水木瑠璃子と判明した。しかし栗栖刑事は、借金で首の回らなくなっていた瑠璃子の弟子花代が行方不明になっている事を知り、事件を解いた。

 

幽霊嬢
最近山野茂は「空の三勇士」なる活動写真を取り終えたが、その中の俊夫と言う少年は「私が仕えていた大家の出奔したお嬢さん」ではないか、との投書を受け取った。実は俊夫役はシナリオライター板村尾松、主役宇津木天馬と相談した上、一般公募して決めたのだが、選ばれた役者はその正体を明かさず、撮影後消えてしまった。

 

寄せ木細工の家
撮影で美波綾子は寝台の上に乗り、いろんな恋人からの手紙を一つ一つ丁寧に読む。いつの間にか天蓋がゆっくり下がって来て、気がついた時には遅く押しつぶされてしまった。その寝台は香取道之助という男の寄せ木細工で作ったと言われた屋敷から持ってきた物だった。香取は数ヶ月前に妻とともにその家で奇妙な死を遂げていた。

 

舜吉の綱渡り
恋人を行政官に取られた舜吉は、死をかけて綱渡りをして見せようと準備した。しかしまさに渡ろうとした時大地震がおこり…。馬鹿馬鹿しくても小説は面白く、ロマンがあればいい。水谷準の「お・それ・みよ」を思い出した。

 

三本の毛髪
学生の山崎と伊藤が散歩していると大学教授神前氏の洋館二階で二人が争っている様子、そして顔を出した神前氏の「助けてえ!人殺しイ」の声。あわてて駆けつけると階段下に短刀を胸に刺され仰向けに倒れた神前教授が絶命していた。そして教授は三本の毛髪を握っていた。下から短剣を上に投げ揚げて殺すという殺害方法が面白い。

 

芙蓉屋敷の秘密
私が探偵業親友都筑欣哉と詩人白鳥芙蓉の経営する「芙蓉酒場」に行ったとき、隣の山部とという男に電話。山部が答えて「え、こ、こ、殺したって!」。そしてその夜芙蓉屋敷に入った巡査が何者かに殴りつけられ、白鳥芙蓉は自室で心臓を一突きされていた。絨毯の上にはダイヤモンドの粒。階下の八畳からは犯人の物らしい帽子が見つかる。
そのころ屋敷を訪問していた芙蓉の恋人、服部清二が疑われるが、彼は抱水クロラールを嗅がされ眠らされていた。清二を争っていた遠山静子は、芙蓉に亜砒酸を飲ませて殺したものと考えたが、死因は毒殺ではなかった等々。
なんと容疑者が七人、しかもそれぞれの動機が嫉妬、痴情、物盗り、怨恨、復讐、友情、子供への愛とそれぞれに違う。本筋の事件に多くの事件が絡み合って複雑になっているがそれを僥倖も手伝って都筑欣哉が見事に解き明かす。

 

腕輪
巡回中の警部の元に「どろぼう…・夫が…」と夜会服の夫人が倒れ込み失神、手にはまだ薄煙のたつピストル。屋敷をのぞくと打撲傷を受け白髪を血に染めた夫の古峯博士の死体と背後から銃撃を受けたらしい男の死体!実は妻の愛人による夫殺人劇。現場にたまたま入り込んだ泥棒はだまして射殺したのだが、泥棒には相棒がいた!