泡沫のまなざし
全盲の道公が新しい家に来ると、そこにはヌシを名乗る鬼・アスハがいた。アスハは道公を、人ならざるものを見て、聞くことができる『見鬼』だという。
道公の両親が買った土地には、元々は、彼女を祀る祠があったが、家の建て替えの際に壊してしまった。
道公は祠を再建するのと引き換えに、アスハに眼を見えるようにしてもらうよう契約関係を結んだ。
全盲の道公は多くの人に介助を受けながら生きていることに罪悪感を覚えており、自ら何も返せるものがないと思っていた。しかし、アスハは、物事を自らの経験を通して即した意味にする『まなざし』を通じて人間関係は構築されるものだと説く。
道公は眼が見えるようになれば恩返しできると思っていたが、自分を助けてくれる人を分かろうともせず、人間関係の構築を怠っていたことに気がつく。そして、『まなざし』を通して人々を助けることができると悟る。
それを教えてくれたアスハに、道広は次第に心惹かれていく。
しかし、自動車事故によって怪我をした道広を救うために、アスハは己の力を使い果たして姿を消してしまう。
道広は大学に入り、英語点字を日本語点字に訳するバイトを通じてお金を貯め、祠を再建する。
祠への信仰によって、再び姿を見せたアスハと再会した道広は、自身の想いを伝えて彼女を抱きしめた。