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実は紛失していなかった"銃弾紛失"事件 「お前やねん」と長時間の取り調べ 音声データに残された暴言10月03日 20:45

 奈良県警の銃弾紛失を巡って違法な取り調べを受けたとして、男性巡査長が県に損害賠償を求める裁判を起こしました。

 関西テレビは、取り調べの音声データを入手しました。

<取り調べの録音>
【取調官】
「お前が一番、お前しかおらんねん、もう。状況、前、行動、心理。やっぱりおかしいねん」
【男性巡査長Aさん】
「どこがですか」
【取調官】
「もう全部」

 拳銃の実弾がなくなった…そんな事実はなかったにもかかわらず、10日間にわたって行われたという長時間の取り調べ。訴状によると、奈良西警察署の男性巡査長Aさん(20代)は、2022年1月、宿直勤務中に実弾の数を点検しました。
 その後、上司も点検し問題は見つかりませんでしたが、Aさんが帰宅した後に実弾5発の紛失が発覚。2日後、突然Aさんへの取り調べが始まりました。

 取調官は、最初からAさんが犯人だと決めつけたといいます。

<取り調べの録音>
【取調官】
「全部出そろっても、やっぱり要はお前から外れんのや、ほんまアウトやねん。はっきり言うたらな、もうお前やねん」
【男性巡査長Aさん】
「こいつちゃうか、こいつちゃうかって。第一が僕やとしても、第二、三ってのがおったと思うんですよ」
【取調官】
「そらおるよ。おるけど、まあ一番分かるやん、やったやつ」

 さらに取調官は、AさんにADHD=注意欠如・多動症の特徴があるなどと決めつけたり、サイコパス、目がやばいなど人格を否定するような発言を繰り返したりしたということです。<取り調べの録音>
【取調官】
「そりゃ人間みんな嘘つくねんで。嘘つくねんけど、お前は性格というか、そういう人間というか、なんていうかな。本来やったらグレーというか、病気に近い回答の仕方する」

 連日、朝から深夜まで続く取り調べの中で、Aさんは徐々に「自分が犯人ではないか」と思うようになったといいます。

<取り調べの録音>
【男性巡査長Aさん】
「言いたい、『やりました』って先に言いたい、そこから進めてもらいたいところなんですけど。ホンマに思い出せないんです、何も。いつ取ったか。持ってたんか」
【取調官】
「やりましたでええわ。やりましたでいこう、ほんなら」
【男性巡査長Aさん】
「取った記憶がないんですもん。そこから進まないじゃないですか」
【取調官】
「ええやん、しゃあない」
【男性巡査長Aさん】
「しゃあないですか?全く覚えてませんけど」
【取調官】
「ええよ」

 Aさんはうつ病を発症し休職。その後、実際は別の担当者が実弾の配分を間違えていて、そもそも紛失していなかったことが判明しました。

 取り調べは任意でしたが、自宅の前に朝から警察が待機していたことや、上司からの命令で従うしかない状況だったことから、実態は強制的なものだったとAさんは話します。

 Aさんは違法な取り調べを受け、精神的な苦痛を受けたとして、奈良県におよそ710万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。

 奈良県警は「結果的に迷惑をかけた」としてAさんに謝罪しましたが、違法な取り調べではなかったと主張しています。

【奈良県警 山口和良 警務部長】
「そもそも紛失でも盗難でもない事案で、関係職員を取り調べたことは反省すべきだった。捜査については、現時点で不適正なものがあったと考えてはおりません」

 奈良県は、Aさんの訴えを棄却するよう求める方針です。裁判は10月4日から始まります。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月3日放送)

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