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創業者の想いと共に前進するイッセイ ミヤケ。2年半ぶりにパリでフィジカルショーを開催【2023年春夏 パリコレ速報】

イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)は9月30日(現地時間)、2年半ぶりにパリでファッションショーを行った。今年8月5日に死去した創業デザイナーである三宅一生の想いと遺したDNAをしっかり引き継ぎ、デザイナーの近藤悟史率いるデザインチームが力強く、躍動感に溢れるショーを見せた。
ショー前に映し出された三宅一生の写真と三宅デザイン事務所からのメッセージ。 Photo Stephane Cardinale  CorbisCorbis via Getty Images

ショー前に映し出された三宅一生の写真と三宅デザイン事務所からのメッセージ。 Photo: Stephane Cardinale - Corbis/Corbis via Getty Images

ショーの開始前には、会場のスクリーンに三宅一生の写真とメッセージが映し出され、ジョン・レノンの名曲「イマジン」が流れた。これは1973年から50年近くパリでコレクションを発表し続けてきた三宅デザイン事務所から、パリの街やオートクチュール組合(通称サンディカ)、世界中の関係者への感謝の気持ちを表したものだったという。会場からは、拍手がわき起こった。

自作した彫刻の形を柔らかく表現

創業者の想いと共に前進するイッセイ ミヤケ。2年半ぶりにパリでフィジカルショーを開催【2023年春夏 パリコレ速報】

今季のテーマは、「呼吸するかたち(A Form That Breathes)」。デザインチームは、コレクションの制作前に土を捏ねて、彫刻作りを行ったという。デザイナーの近藤は「新しいプロポーションを模索するために着想源となる彫刻を自作しました。彫刻は硬いイメージがありますが、柔らかく一枚の布で表現しながら、呼吸をしているように生き生きしたコレクションにしたいと思いました」とバックステージで話した。インビテーションには、実際に作られた彫刻の写真が載せられており、会場にもそのプロセスで生まれた形を生かした光のオブジェが置かれていた。

コレクションには、粘土を捏ねる、刻む、掘り出すなど、手作りの風合いが顕著に現れた。くにゃっと曲がったトップスや、摘んだようなシルエットが特徴的なドレスなど、有機的な形がユニーク。一見クラシカルなシャツジャケットも、肩に布を折り込んだ装飾を施したり、裾にシワを寄せたりと、一味異なるアレンジがポイントだ。

ブランドを代表するプリーツは、左右で裾の丈が異なるパンツがあったり、湾曲したプリーツをランダムに施したドレスで表現したりと、独自のテクニックが光る。また生地を摘んだようなトゲトゲのフォルム、彫刻プリントしたドレスなども遊び心が感じられた。

スキントーンでの多様性の表現

Photo: Estrop/Getty Images

フィナーレでは、異なるトーンのベージュやピンク、ブラウン、ブラックなどのプリーツドレスを着用したモデルたちが踊りながら登場。これまでもブランドが大事にしてきた多様性の表現だが、「今までは多様性をカラフルな色で表現してきたが、今季は身体性を大事にしたいと思い、スキントーンを自分なりに表現した」と近藤。

Photo: Peter White/Getty Images

さらにブランドとして初めて、原料が100%植物由来のポリエステルを採用。この素材は東レとの提携で開発され、石油を使わないポリエステルが生まれたという。これまでも再生ポリエステルなど、リサイクルされた化繊も取り入れてきたが、今回はより環境負荷に配慮した選択肢になる。

受け継ぐフィロソフィと新しいクリエイティブな発想

Photo: Peter White/Getty Images

最後に、バックステージで近藤は師匠への思いも明かした。「とても尊敬していて、大変感謝をしています。一生さんのフィロソフィはこれからも大切に受け継いでいきますが、彼が作ったものをそのまま表現すると怒られてしまうので(笑)、自分らしくデザインしようと、心がけています」

創業者が亡くなったイッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)は、遺されたレガシーと新しいエネルギーが合わさって、服を着る人々、ブランドに関わる人への愛に溢れていた。クリエイティブな発想と新素材をとともに前進する。

イッセイ ミヤケの2023年春夏コレクションをすべて見る。

Photos: Daniele Oberrauch / Gorunway.com Text: Mami Osugi