民間・行政を問わず清掃サービスを展開しているダスキンは、令和3年度「ドローン先行的利活用事業」で採択されたドローンによるハチ駆除サービスを展示した。
ハチ駆除における兵庫県の現状
日本ペストコントロール協会の「平成30年度 害虫等相談件数集計報告」では2020年のスズメバチに関する問い合わせは1万1161件、その他ハチ類が1万666件と数多く寄せられていることが分かる。害虫駆除サービスにおける業界の中でもハチ駆除に関する相談数は年間で約2万件を超えているのが現状だ。
また日本ペストコントロール協会に寄せられたハチ類の相談件数がもっとも多い都道府県は兵庫県であり、2020年度は4245件と2位の東京都の3650件との差が顕著である。PCO新聞による「兵庫県 2020年度害虫相談件数報告書」では兵庫県における害虫獣の相談件数の中でもハチ類に関する相談がもっとも多いことから、兵庫県全体でハチ駆除サービスの新規開発が必要だ。
ダスキンはこれらの現状を踏まえて、全国的にハチ駆除相談が多い兵庫県を実証実験フィールドとして活用し、新しく安全性・効率性・作業性の高いハチ駆除用ドローンを開発した。
ダスキンと石川エナジーリサーチが共同開発した「ハチ駆除専用ドローン」
従来のハチ駆除サービスは高所での作業におけるリスク、熱中症のリスク、ハチに刺されるリスクと、作業員はさまざまな危険と隣り合わせだった。また、ダスキンは命に関わるリスクを回避するために防護服を着用しての脚立作業を禁止している。このこともあり、ダスキンでは地上で手の届く範囲以外でのハチ駆除が難しいという課題があった。ダスキンはこれらの課題をドローンで解決することを試み、石川エナジーリサーチとハチ駆除専用ドローンを共同開発するに至った。
元々ハチ駆除を目的としたドローン自体は存在していたものの、これらは殺虫剤散布などを行う機体であり、環境や生態系への影響を考慮していないものが多い。ダスキンと石川エナジーリサーチが共同開発したハチ駆除専用ドローンは、ハチ駆除におけるリスクだけではなく環境への影響も考慮した上でハチ駆除を実施できるドローンである。
ハチ駆除専用ドローンの機能は大きく分けて2つあり、1つは掃除機タイプのノズルを使用してハチを吸引する機能だ。ハチには警戒フェロモンを分泌する習性があり、吸引などの攻撃が発生した場合は多くのハチが敵とみなした対象に向かって攻撃していく。掃除機タイプの際はこの習性を利用して8割近くのハチを吸引することができる。
2つめは蜂の巣をドローンで破壊する機能だ。従来のドローンは物にぶつからないように飛行させるのが常であるが、ダスキンと石川エナジーリサーチが開発したドローンはハチの巣にぶつかっていく、ドローンの常識とは逆を行くドローンだ。
担当者は「設置したノズルをハチの巣にぶつけてハチ駆除を行うということもあり、何度も物にぶつける試験を実施できないため、開発段階では物に対して衝突する行為と似た試験を行うことで複数回の実証実験を実施した」という。
飛行しているハチの駆除が完了したら掃除機タイプのノズルからドリルタイプに切り替え、ハチの巣自体を破壊し、ほぼ破壊が完了した際のみ人力で巣を撤去する。ハチ駆除専用ドローンにはカメラも搭載されているため、操縦者がハチの巣の状況を確認しながら安全に駆除作業をこなすことが可能だ。
また、ハチ駆除専用ドローンはバッテリー式ではなく有線接続で電力供給を行う機体であるため、操縦者はバッテリー残量を気にせずハチ駆除作業に長時間集中できるのも特徴の1つである。
担当者は、「今後はハチ駆除作業だけにドローンを活用するのではなく、害獣を追い出し侵入防止を行う獣侵入防止サービスにおいてもドローンを活用していきたい」と展望を語った。
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