安倍晋三元首相の国葬が27日に東京で執り行われるが、国民の反発は根強い。この葬儀をどう考えればいいのか。追悼を研究テーマとする、人と防災未来センター(神戸市中央区)の高原耕平・主任研究員に聞いた。(田中真治)
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葬儀には、大きく三つの機能があると思います。
一つ目は、亡くなったことの確認。二つ目は、亡くなった人との関係を構築し直す「死者との和解」。三つ目は、残された共同体の結束の確認。家族や小さい地域は顔の見える共同体ですが、国という「想像の共同体」では当事者性に濃淡があるため、国葬に違和感が出てくるのではないでしょうか。
安倍元首相は、歴代の中でも長期政権で存在感はあったが、国家をストレートに体現しているわけではない。安倍さんを思い起こしてまとまろうというストーリーに国民の100%が入り込めるわけでなく、そこで分断が起きてしまう。
死者との和解は、個人がどういう人だったかを意味づけ、区切りをつけることだといえるでしょう。しかし今回、業績の功罪を整理しないまま国葬とすることは、逆に安倍さんを亡霊のように地上にとどめることになると思います。
その結果、岸田文雄首相は亡霊に支配されると同時に、影響力を使い続けることができる。意識しているのか、無意識なのかは分かりませんが。ただ、あのような銃撃事件という形で命を奪われたのが、整理をするにも難しいということがあります。
国葬を巡る賛否の議論が、安倍政治とは何だったのかを考える「喪の作業」のスタートになればいいのですが、微妙な気もします。一足飛びに国葬としたやり方が安倍さんの政治スタイルを思わせ、もやもやした思いを刺激する。功罪両面を語らせず、分断をはっきりさせるような方向に働いてしまうとよくない。
亡くなった人を自分から切り離すことで、つながりを確保するという、論理的には矛盾した心の動きが、追悼の本質だと思う。安倍さんの場合は、突然の死に加え、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が背後にあり、人物の評価も定まっていない。そもそも国葬とは何かということもあり、物語を共有して追悼するにはもやもやがある。そのもやもやを皆で整理するのか、ふたをしてしまうのか、今はそのせめぎ合いだと感じています。
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【たかはら・こうへい】1983年神戸市東灘区出身。大谷大文学部卒、大阪大大学院文学研究科博士後期課程修了(博士・文学)。2019年から現職。専門は臨床哲学。
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