長女のときは夫が3カ月育休を取った。新製品の発売を控えており、浅野さんは早期復帰を望んだ。その前年に課長に昇格し、職責を果たしたい気持ちも強かった。事情を察した夫が「じゃあ、僕が休む」と申し出た。“主夫”として家事・育児を一手に担った。
浅野さんも、子どもの顔を見るために午後7時半までには帰宅する。やり残した仕事を持ち帰ることもあり、日々の睡眠は4~5時間ほど。でも子どもの笑顔が活力源だ。子どもが増えるほど負担は増す。ただ3人だから3倍というわけでもないという。「子どもだけで社会ができるので楽もできる」と語る。
出生率2.07 実現のハードル高く
2013年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は1.43にとどまった。人口減少に歯止めをかけるには出生率2.07が必要だ。出生率目標を定める声も政府内で高まっているが、少子化克服は簡単ではない。
女性10人に置き換えてシミュレーションを試みた(図)。女性の生涯未婚率は約10%、子どもを持たない夫婦もあり、2人は子どもなしと想定した。出生率はこれでようやく2.0。出生率2.07は高いハードルだ。
少子高齢化で女性は職場での貢献も求められている。ただ複数の子どもの育児と管理職を両立できる環境を整備している会社は少ない。家庭内の分担意識も不十分だ。
解決の糸口は働き方の見直しにある。就業の長さではなく成果できちんと評価することだ。リクルートワークス研究所の石原直子主任研究員は「そうすれば女性も会社でキャリアアップの道が開け、職場の長時間拘束から解かれた男性は家事・育児も分担できるようになり、好循環が生まれる」と強調する。(編集委員 石塚由紀夫)