こんにちは、個人投資家の立川です。
前回から少し間が空いてしまいましたが、今回でこのコラムも20回になりました。毎回、ご覧いただいている読者の皆さま、本当にありがとうございます。これからも皆さまの資産形成に少しでも役立つような記事を執筆したいと考えていますので、今後ともよろしくお願いいたします。
さて前回は「米国株」を日本の「増配株」と比較しながら解説しました。「米国株」と「日本株」のそれぞれに優れている点や注意点がありますので、どちらかに偏ることなく、それぞれの良さを上手く取り入れて投資することを心掛けたいものです。
【※前回の連載記事はこちら!】
⇒配当金生活を実現するなら「日本株」より「米国株」に投資すべき!? 50年以上の連続増配株が約30銘柄もある「米国株」の魅力と注意点をわかりやすく解説!
「米国株」投資では「為替」と「税金」に注意が必要!
「特定口座(源泉徴収あり)」か「NISA口座」を選ぼう!
さて、「米国株」投資をするうえで、切っても切れないのが「為替」の影響です。当然ながら、為替相場の変動に上手に対応できれば、「円高のときに(日本円を米ドルに両替して)米国株に投資」して、「円安のときに米国株を売って(米ドルを日本円に両替して)利益を確定」できます。つまり、「株価の上昇」と「円安」によって、二重に儲けることができるのです。これは「日本株」投資では味わえない「米国株」投資の醍醐味と言えるでしょう。
私も「1米ドル=80円前後」のときに「米国株」投資を始めているので、この原稿の執筆時(2019年9月)の「1米ドル=106円前後」では、円ベースの評価額は為替分だけで30%ほど上がっていることになります。しかし、その一方で、「円安」になっているということは、「日本円」や「日本株」の価値は相対的に下がっているわけです。私のように「日本株」中心のポートフォリオを組んでいる個人投資家にとっては「円安」で資産が目減りするときに、米ドル建てで、かつ配当金が増え続ける「米国の増配株」を保有しておくことが、優れたリスクヘッジ手段の一つであると言えるでしょう。
ただし、「為替」は「米国株」投資をする際に厄介な問題にもなります。なぜなら、「為替取引よって得た『為替差益』にかかる税金」を計算する必要があるからです。年収2000万円以下の給与所得者で、「為替差益」を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。しかし、「為替差益」を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以上になった場合には、「米国株」購入時の為替レート、売却時の為替レート、配当金を受け取ったときの為替レートのほか、「米国株」を売却したり、配当金として受け取ったりした「米ドル」を「日本円」に換金したときの為替レートなどを、すべて円換算で計算して、自分で「確定申告」をして税金を納めなければいけません。
個人で「米国株」投資をしていて、かつ「為替差益」が20万円を超えるのはかなりレアケースだと思いますが、問題なのは「為替差益」が発生した場合、それが特定口座内であっても「為替差益」とは認識されず、いくら儲かったのか見えづらいのに「確定申告」をしなくてはならないということなのです。「確定申告」を怠れば、当然ながら「脱税」、すなわち違法となりますので放置はできません。
ただし、「NISA口座」、または「特定口座(源泉徴収あり)」では、「米国株」の「譲渡益」と「為替差益」は自動的に計算されます。「NISA口座」では投資額が限度額(年間120万円)以内なら税金はかかりません。また、「特定口座(源泉徴収あり)」で取引しておけば、税金も自動計算されて「源泉徴収」されますので手間はかかりません。売買時に発生した「為替差益」の税金に関しては、「株の譲渡益」として「源泉徴収」される金額に含まれていると、国税庁のホームページにはっきりと記載されているのです。
「米国株」投資で「為替差益」が発生して、
「確定申告」が必要になってしまうケースも!
ところが、次のような場合には注意が必要です。
【例①】
「米国株」の配当金を「1米ドル=100円」のときに1万米ドル受け取り、米ドルのままで口座内に放置しておき、「1米ドル=120円」のときに1万米ドルを日本円に両替して20万円の「利益」が出た場合、その利益は「為替差益」として雑所得となる。
【例②】
100万円を「1米ドル=100円」のときに1万米ドルに両替し、米ドルのままで口座内に放置しておき、「1米ドル=120円」のときに、その1万米ドルを全額使って米国株を買った場合、その時点で20万円の「為替差益」が発生したことになり、雑所得となる。
上記の①や②のようにして発生した「為替差益」について、証券会社の特定口座内では自動的に「為替差益」であると認識されないため、自分で「日本円⇔米ドル」の為替レートを記録しておいて、「為替差益」を計算する必要が出てきます。煩雑な手続きを不要にするために「特定口座(源泉徴収あり)」や「NISA口座」で取引をしているのに、口座内で米ドルを保有する間に大きな為替変動があると「確定申告」する必要が出てくるのは、いくら法律で決まっているとはいえ面倒です。
そこで今回は、「米国株」投資をするサラリーマンが、合法的に納税の手間を最小限にすることを考えてみましょう。
まず、「米国株」に投資するときに利用する口座は「特定口座(源泉徴収あり)」か「NISA口座」を選ぶようにします。なおかつ、「米国株」の購入時も売却時も「円貨」による取引を選択します。そうすると、「米国株」を売買する際に発生した「為替差益」は、すべて「株の譲渡益」として「源泉徴収」されます。
購入時も売却時も「円貨」で取引をするということは、厳密には「購入時は自動的に購入代金を『日本円⇒米ドル』に両替をして購入」し、「売却時には自動的に売却代金を『米ドル⇒日本円』に両替」するという「為替取引」が行われているのですが、「日本円⇔米ドル」への両替が同日中であれば「為替取引」による利益は発生しないものとしてみなされるのです。
当然ですが、「米国株」を売買するたびに「日本円⇒米ドル」や「米ドル⇒日本円」の取引が必要になるので、為替レートが変動していなくても「スプレッド(購入時と売却時の差)」が発生します。例えば、「1米ドル=110円」の為替レートのときでも、買いは「1米ドル=111円」、売りは「1米ドル=109円」というように差があるので、往復で「2円」分が不利になるわけです。
少しでも「スプレッド」を小さくして有利に取引したい場合、例えば「SBI証券」に口座を持っているなら「住信SBIネット銀行」を利用するのがおすすめです。
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具体的には、まず「住信SBIネット銀行」で「日本円⇒米ドル」に両替して「SBI証券」の口座に資金を移動し、同日中に「SBI証券」で「米国株」を購入します。「米国株」の購入時に余った米ドルや、「米国株」を売却したり、配当金として受け取ったりした米ドルは、すぐに「住信SBIネット銀行」に出金して、同日中に「米ドル⇒日本円」に両替をすることで、米ドルが口座に残らなくなるため、「為替差益」は発生しません。「SBI証券」の口座で、すべて「円貨」で取引する場合と比較すると、「円⇒米ドル」「米ドル⇒円」をすべて手動で行う必要があり、資金移動の手間もかかります。ただし、「スプレッド」が狭くて有利な為替レートで取引できるうえに「確定申告」の必要もなくなるのは大きなメリットと言えます。
証券口座に残った「米ドル」を有効に活用しつつ、
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今回、説明してきたように、「米国株」投資をする際に「為替差益」が生じることで発生する面倒な手間を避けたければ、従来どおりに「日本株」だけで資産形成をするのも一つの手です。また、「米国株」などの外国株に投資する際は「個別株」ではなく、外国株を投資対象とする「投資信託」や「ETF(上場投資信託)」を利用するという方法もあります。
そして、実はある「投資信託」を活用することで、面倒な計算や申告の必要な「為替差益」が発生する心配をなくし、しかも「米国株」に投資するタイミングを逃さない、とても簡単な解決方法があるのです。
それは、「外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)」を活用する方法です。「外貨建てMMF」とは投資信託の一種ですが、大手のネット証券などでは米ドルで直接購入が可能で、購入単位も1000円以上なら1円単位(0.01米ドル)となっていて、換金性も高いという特徴があります。
そこで、「『米国株』投資のために『日本円』を『米ドル』に両替したが余ってしまった」「『米国株』を売却した代金や配当金が口座に入金されたが使い道がない」という場合、同じ日に口座の米ドルで「外貨建てMMF」を買い付けるのです。米ドルが口座に入った日に「外貨建てMMF」を購入すれば「為替差益」は発生しません。また、「外貨建てMMF」を保有していて生じた利益は、「米国株」と同様に「譲渡益」となるため、「為替差益」を計算して申告する必要もなくなるのです。
「外貨建てMMF」は売買する際に手数料がかからず、外貨預金と比較しても遜色ない利回りの分配金がもらえます。「米国株」を売ったり、配当金を受け取ったりして口座に入金した米ドルで「外貨建てMMF」を買うだけで、「為替差益」を含めた損益計算が特定口座の中で完結するようになり、確定申告の手間を最小限にできるうえ、使い道がない米ドルを無駄なく運用することもできるのです。私は米国株を売ったり、配当を受け取ったりしたら、すぐに「外貨建てMMF」の買い注文を出し、必要に応じて一部を解約して「米国株」の注文をするようにしています。ちなみに、「楽天証券」のように「外貨建てMMF」を解約しなくても、直接「米国株」を買うことができる証券会社もあるので、「米国株」投資をするなら「外貨建てMMF」を活用するのがおすすめです。
今は「米国株」を自分の資産に簡単に組み入れられる“幸せな時代”です。また、最近も外国株式の売買手数料が見直されて、少額の資金での取引もやりやすくなりました。資産形成の手段の一つ、リスクヘッジの手段の一つとして、「米国株」を取り入れないのはもったいないと思います。日本の「増配株」投資だけでなく、「米国株」投資も検討してみてはいかがでしょうか。
それでは、最後に今回のまとめです。
【ポイント①】
「米国株」投資をする際には、米ドルで一定以上の「為替差益」が発生したら「雑所得」として確定申告の必要が出てくるので要注意!
【ポイント②】
「SBI証券」と「住信SBIネット銀行」のように、ネット証券とネット銀行を上手に活用することで、「日本円⇔米ドル」の為替レートが有利になり、「為替差益」の心配も不要になる!
【ポイント③】
口座内に米ドルが余ったら、すぐに「外貨建てMMF」を購入すれば「為替差益」の心配が不要になり、外貨預金よりも高い利回りで「分配金」をもらえる!
【ポイント④】
「楽天証券」のうように、「外貨建てMMF」の残高から、直接「米国株」に投資できる便利な証券会社もあるので活用しよう!
さて、この連載では「資産運用」の手法として「増配株投資」を紹介しています。私の経験上、「増配株投資」は“投資に必要な時間や手間”と“利益”のバランスが良く、特にサラリーマン投資家が継続しやすいと考えているからです。
先日、この連載の読者の方に直接お会いする機会があり、その際にいくつかの質問をいただきました。いただいた質問はとてもいい内容で、私はそれらの質問に答えながら「これはザイ・オンラインの連載でも取り上げて、ほかの読者の皆さんにも伝えたい!」と思いました。そこで、次回は「『増配株投資』のココが疑問!」と題して、読者の方にいただいた質問に答えながら、さらに「増配株投資」の理解を深めていただこうと思います。次回もお楽しみに!
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(『Value Investment since 2004 長期に配当収入増加と資産形成を目指す立川一の投資日記』:https://vis2004.blog.fc2.com/)
40代のサラリーマン投資家。中学生のころから株に興味を持ち、2004年から本格的に株式投資を開始。バフェットの本に影響を受け、最初はバリュー投資からスタートしたが、次第に増配株のメリットに気がつき、現在の投資手法を確立する。趣味である楽器演奏の腕前はかなりのもので、週末にはライブ活動も行っているとか。
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1約定ごと(税込) | 1日定額(税込) | 投資信託 ※1 |
外国株 | |||
10万円 | 20万円 | 50万円 | 50万円 | |||
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90円 | 100円 | 260円 | 0円/日 | 133本 | ○ (CFD) |
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【GMOクリック証券のおすすめポイント】 1日100万円まで取引は売買手数料無料! 1約定ごとプランの売買手数料も最安レベルで、コストにうるさい株主優待名人・桐谷広人さんも利用しているとか。信用取引の売買手数料と買方金利・貸株料も最安値レベルで、一般信用売りも可能だ! 近年は、各種ツールや投資情報の充実度もアップしており、売買代金では5大ネット証券に食い込むほど急成長している。商品の品揃えは、株式、先物・オプション、FXのほか、CFDまである充実ぶり。CFDでは、各国の株価指数のほか、原油や金などの商品、外国株など多彩な取引が可能。この1社でほぼすべての投資対象をカバーできると言っても過言ではないだろう。頻繁に売買しない初心者やサラリーマン投資家はもちろん、信用取引やCFDなどのレバレッジ取引も活用する専業デイトレーダーまで、幅広い投資家におすすめ! |
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88円 | 106円 | 198円 | ― | ― | ○ 米国 |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。 |
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