国葬の献花10万人超 デモはシルバー人材数百人
石井 孝明
@東京 Tokyo
安倍晋三元首相の国葬儀が27日あった。平日だったが、筆者は時間を作り正午から午後2時ごろまで、現場を見た。
◆消された騒音 安倍氏国葬儀
ネット報道を散見すると、メディアは反対派のデモばかりを写し、騒然としていたと思う人がいるかもしれない。しかし葬儀場周辺は安倍氏の冥福を静かに祈る人たちばかり。サイレント・マジョリティである「普通の日本人」と、ノイジー・マイノリティであるメディアや政治集団との落差を感じるものだった。
筆者は地下鉄半蔵門線の九段下駅で降りた。献花台までは行かなかった。献花の列は数キロになっていたとネット情報があったからだ。東京都道302号線(通称靖国通り)が靖国神社横まで通り、北の丸公園と国葬会場の武道館と、一般献花台の置かれた九段坂公園に通じるが、車道は封鎖されていた。
デモは私がいた時間に何度か九段坂下交差点(都道8号線(目白通り)と靖国通りの交差点)の下にきた。過激派や労働運動のセクトごとに来るらしい。一つは赤い色の幟(のぼり)を立てていた。遠くから見たのだが、日本共産党系団体の全教(全日本教職員組合)の幟があった。50人ぐらいだが高齢者ばかりで静かだった。もう一つの集団は、崩れた格好をして大型マイクに大音量でドラム連打の音と「安倍やめろ」と喚いていた。それは40人ぐらい。平日の昼間から暇な人たちだ。
その周辺にいる政治団体や普通の人の「帰れ」コールが大きいぐらいだった。そして周りで数百人が、スマホで写真を撮っていた。制服警官が大量にいて批判する人との間に入っていたため、そうした集団をめぐる暴力沙汰はなかった。また会場には騒音は届かなかった。さらに警察は意図して、安倍氏の死を悼む献花の人の列と反対側でデモをさせていたようだ。騒音は封じ込められていた。
九段下周辺には、高齢者の小集団がいた。腕章や幟で私が見たのは、共産党系の全教、立憲民主党系の「日教組」だった。彼らの大半は国会前で国会議員が集会をしていたので、そちらに行ったのかもしれない。メディアは、こうした団体が動員されていることを伝えていない。
靖国通りは侵入を警戒し、警察車両と「わ」ナンバー、つまりレンタカーであるボックスカーで両枠が埋め尽くされ、容易に人が車道に侵入できないようにしていた。警察は歩道部分の通行は認めていた。不思議な光景だった。
私は、反対側の車の隙間から献花台を見た。安倍氏の冥福を祈った。そして2時の国葬が始まると、靖国神社大鳥居前に、喪服など着た人が数百人集まり、葬儀の行われている武道館に向かって手を合わせ、ネット中継を見るなどしていた。私はこうした人たちの純粋な気持ちに感動したし、私と同じ思いの人がいることが嬉しくなった。
以上をまとめると、安倍氏の国葬儀では「少数の変な人」たちが、騒いでいたに過ぎない。警察の警備は大量動員と準備で混乱なく、また市民の権利を威圧せず行われていたように思う。
◆献花者を試算10万人以上か
安倍氏の葬儀で献花をした人はどの程度いたのだろうか。28日時点で政府もメディアも公表していない。警察取材の際に50メートルの列で100人と警察は人の数をカウントしていると聞いたことがある。公式なものかは不明だ。九段下から千鳥ヶ淵公園を通って、四ツ谷駅まで行列はあった。千鳥ヶ淵公園では警察は列を曲げて収容していたという。地図を確認すると、献花台から四谷駅まで直線で3キロ、ただし並んだ人が揃って、献花台まで7キロ歩いたとしている。遠望すると、列は原則3縦列のようで、それより増えたり減ったりしていた。また献花まで2時間から3時間かかったという。
上記仮定で試算してみよう。3縦列、7キロの列は4万2000人になる。列は午前9時30分から午後7時30分まで10時間続いた。2時間30分で入れ代わると4巡。16万8000人が献花したことになる。最初と最後に列は少ないとして、軽く見積もっても、会場で10~12万人の人が献花をしたわけだ。自民党本部でも献花台を作ったという。私のような安倍氏を哀悼するが、献花はしないという人も多かっただろう。東京の人口は日本の10分の1に過ぎない。それ以外で哀悼の気持ちを示した人も多かったはずだ。大変な数の人が安倍氏を支持していたことがわかる。
国会前デモの参加人数は数百人という目撃者や空からの映像の推計がある。主催者発表だと1万5000人という滑稽な状況になっている。主に高齢者だ。組織の命令で動員され、おそらく日当の出る労働組合や政党のデモで「数百人」。自発的に集まった国民が「10万人以上」。日本の現実は、どうも日本人にも世界にも歪められて、一部政治勢力やメディアによって伝えられている。
朝日新聞は27日の午前中の記事で集まった一般人について「100メートル以上の列」と見出しにした。列の長さは「7キロ」だ。嘘をつかないでほしい。私は見なかったがNHKはニュースで、安保法制で騒いだシールズにいたという28歳の女性を出演させ安倍首相を批判させていた。この女性は、仕事の話もせずダラダラ毎日Twitterをしていており、就業しているのかさえわからない。こんな人は当然、日本の20代の若者の代表ではない。こんな人を代表扱いするなら若者は怒るだろう。
◆普通の日本人の健全さに安堵
菅義偉前首相の追悼演説が心を打った。その中で集まった人たちについて言及していた。
「しかし、安倍総理…と、お呼びしますが、ご覧になれますか。ここ、武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。20代、30代の人たちが、少なくないようです。明日を担う若者たちが、大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています。総理、あなたは、今日よりも、明日の方が良くなる日本を創りたい。若い人たちに希望を持たせたいという、強い信念を持ち、毎日、毎日、国民に語りかけておられた。」
普通の人たちが作る日本の健全な姿を、安倍晋三氏の国葬儀で確認できてホッとした。普通の日本人は安倍氏の死を悼み、立場を超えて前向きに安倍氏の希望したようにより良い日本社会を建設しようとしている。
そして日本を貶め、日本人の活動を邪魔し、マイナスの情報しか拡散しない、「ノイジーマイノリティ」の姿に、またうんざりした。言っても無駄だろうが、少しは日本と社会のためになることをしてほしい。
【注】政府は28日の記者会見で、国葬の献花者数を2万5889人、国葬参加者数を4183人と公表した。現地に行った私から見ると少ないと感じるが、この記事の10万人超の試算は多過ぎ、その事実を加える。28日午後にこの注は執筆した。
ありがとうございます