間違っても営業経験や
店舗経験に1年もかけないで

――新卒エンジニアを採用できたとして、入社後の育成についてはどうでしょう。

 総合職と一緒くたにして「一度店舗に配属します」とか「営業経験をさせます」とか、そういったことをしてしまう企業がまだまだ多いのが実情です。

 まずは、エンジニアは専門職であると認識してください。営業職や販売職からエンジニアになるのが難しいように、その逆も然りです。エンジニアにはエンジニアの仕事をさせてあげてください。エンジニア学生は引く手あまたですから、予想外の配属によって興味を失った瞬間、転職してしまうこともあり得ます。

――ジェネラリストを育てる感覚ではいけないということですね。ただ、DXを進めるなら事業への理解は必要だと思います。

 それでも、数日から1週間、もしくは事業部に伴走する形で理解していくのがいいのではないでしょうか。変化の激しいIT領域で、半年、1年、下手したら3年もITの現場を離れるなんて時間的余裕はありません。

エンジニアはプロ野球選手
特別待遇でいいんです

――非IT企業でも、エンジニアに特化した給与体系を作ろうという動きが出ています。しかし、「エンジニアだけ給料を上げるわけにはいかない」「新卒エンジニアにこんなに払うなんてやりすぎじゃないか」と、抵抗のある企業は多いと聞きます。

 そこはまさに、Web系企業が必死で乗り越えてきた歴史です。Web系企業でも、つい5~6年前までは、総合職とエンジニア職で給与体系を分けるのは、そう一般的ではありませんでした。しかし、急上昇するエンジニアの求人倍率や、エンジニアが創り出す価値を考えると投資しないわけにはいかない。そこで、経営層が「エンジニアは特別だ」と社内でしっかり啓蒙し、給与も評価の仕方も変えると明確に打ち出していったのです。

 そうしない限り、どこまでいっても「不平等だ」という議論から抜け出せません。先行企業は、数年の痛みとともに社内の理解を得て、それを乗り越えてきたんです。