慶應通信 2022年度 刑法各論 合格レポート
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第1 事例の第1・2段落における甲の罪責
1.甲がインターネット掲示板にA社に関する書き込みをした行為
(1)検討すべき罪責
甲の上記行為に、A社に対する信用毀損罪(刑法233条前段)が成立するか。
(2)構成要件
ア.総説
信用毀損罪の構成要件は、①「虚偽の風説を流布」して、②「人の信用」を、③「毀損し」た、④故意である。
イ.「人の信用」-客体
「信用」とは、経済的側面における人からの社会的評価をいう(最判平15・3・11刑集57巻3号293頁)。そして、「人」には、自然人のほか、法人その他の団体が含まれる。
ウ.「虚偽の風説を流布」-行為
「虚偽の風説」とは、客観的事実に反する噂・情報をいう。そして、「流布」とは、不特定又は多数人に伝播させることをいう。
エ.「毀損し」た(抽象的危険犯)
「毀損し」たとは、人の経済的側面における社会的評価を低下させるおそれのある状態を発生させることをいい、現実に低下させたことは必要でない。
(3)本件の検討
本件において、甲は、不特定多数の人が閲覧可能なインターネット掲示板に、根拠も無く「A社は未来のない、お先真っ暗な会社だ」と客観的事実に反する..