高橋良輔が描く、新たな「ボトムズ」の小説連載がスタート!
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第49話
操作卓上のキーボード上を縦横に疾走していたチャイルドの指がピタリと止まった。 「完璧」 一言いって、くるりと椅子を回すと、そこにはジュモーラン大尉が立っていた。 「大尉…何か?」 大尉は懸架台のATを見上げて、 「仕上がりましたか?」 と...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第48話
「なあ、大尉……」 バニラやロッチナを下がらせてから、執務室に戻ったガラーヤン大佐が暫しの沈黙の後脇に控えるジュモーラン大尉に顔を向けた。 「はっ?」 「わしもこれでものを考える。突っ走ることもある。そしてまた考える。まあ大概の人間がそう...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第47話
「そう、終わっていない。それどころか言うなればこれからが本番」 ロッチナ博士は自信たっぷりに言い放った。 (テストは終わっていない! そう言えば奴もそう言っていた) 大尉はキリコの言葉を思い出したが口には出さなかった。そして、 「これから...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第46話
「色々と面白い話が聞けるのではないかとわしは期待している。ハハハハハ、まあ、せいぜい失礼のないようお連れしろ」 宇宙港につくと何ともまとまりのつかない五人が待ち受けていた。ジュモーラン大尉は挨拶もそこそこに車に迎え入れた。 車内では互いに...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第45話
「ルーが、本当に奴の、ワイズマンの後継者にふさわしいかどうか確かめるつもりなんだろう。それをこの星で試したいのさ」 キリコの答えにジュモーラン大尉は満足しなかった。 「どうやって? どうやって試す?」 「さあな」 「さあなって!?」 そっ...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第44話
「メッタリアは兵器廠でATをいじっている」 ジュモーラン大尉の答えにキリコは無言で、微かに頷くようなそぶりを見せた。 「ATをいじっている? どういうことだ?」 クロムゼンダー少佐が大尉に聞いた。 「興味を持ったんじゃないですか、ATに」...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第43話
クエント製H級ATベルゼルガの攻撃力がその右剣に集中されていた。 (受け損なえば!) 串刺しであろう。チャイルドの全身のアドレナリンとドッグのマッスルシリンダー全域にポリマーリンゲル液の沸騰が起こった。 (こんなプロテクターなど紙一枚の役...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第42話
どちらの銃撃が早かったか、戦いはためらいもなく瞬時に始まった。 「さすがに正確だな」 襲い掛かる双剣の薔薇の機銃弾を交わしながらチャイルドは感嘆の言葉を漏らした。同じく、 「メッタリア、お前もな」 応じた相手の言葉にも実感がこもっていた。...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第41話
「行けーーっ!!」 ジュモーラン大尉の声に煽られた訳ではないが、二機は轟然とローラー音を響かせて合い寄った。互いの銃器が空中で噛み合い砕け散った。両者は手の中の役目を終えた鉄の残骸を投げ捨てた。 「早い!」 ジュモーラン大尉が言うまでもな...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第40話
ここはアストラギウス銀河に散らばる民間の乗継宇宙港である。普通、大型の軍艦などのようにハイパードライブエンジンを持たぬ船はこの乗継港で他の宙域に跳ばしてもらう。バニラ商会の船は通常宙域での船足は抜けた力があるが遥かな宙域に足を延ばすには乗...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第39話
「なぜチャイルドがATで出撃を!?」 「その碑文とやらには何が刻まれているんだ?」 「実戦もあるのか?」 集められた一同からは口々に疑問がほとばしった。ここはドロムゼン・パスダード艦長の部屋。あれ以来一同は宮殿内に軟禁状態であったがそれぞ...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第38話
ブローザン・ヒルに突然現れた碑文が何を意味しているか。 その意味するところはもちろん重大だ。 だが、碑文そのものは一人歩きはしない。碑文を己の管理下に置き、碑文の意味するところを理解し、いち早くそれを独占できれば、それは“神の意を受けた”...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第37話
「キリコーっ⁉」 ゴウトとココナの驚愕の声も重なった。 「驚くのも無理はねえ……」 と始まったバニラの説明に、二人の反応は『まさか俺達を置いてきぼりってことはないだろうな』と言うものであった。 今やバニラ商会はアストラギウス銀河を股にかけ...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第36話
インターホンに向かってバニラが吠えた。 「ソルティー、すぐ来い!」 声の勢いに見合う速さでソルティオがやって来た。そして、 「あなたは‼」 と絶句した。 「久方ぶりじゃな」 ロッチナにしては穏やかな笑みを浮かべた。腰こそ挙げなかったが黒衣...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第35話
「あんたから声が掛かるとは、予想もしていなかったぜ」 「ふん、そうだろうな。だが、誰にでも使い道ってものがある」 「それって、ソルティオのことか」 「勘がいいな。やっぱり楽をしなくてよかった」 ロビーを抜け外に出るとバギーカーが止まってい...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第34話
「ふぅーーむ」 ルーの姿が扉の向こうに消えると大佐は大きく吐息を漏らした。数秒の沈思の後、 「どう思う、大尉?」 大佐は傍らに控えるジュモーラン大尉に聞いた。 「はっ……どう思うとは、どのような?」 「あの少年がメッタリア…いや、神の子か...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第33話
「ふむ……」 大佐はガナハのボトルにキャップを締めてテーブルを滑らせた。 「教授、一日は長い。良かったらお持ちください」 「これはありがたい」 ボブゥーはまだ七分ほど中身の残っているボトルを屈託なく手元に引き寄せた。 ――そして、キリコが...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第32話
間髪を入れず柱の陰からかカーテンの隙間からか、湧いて出るように給仕係がわらわらとテーブルに群がり各人のグラスに酒を満たした。 「御一同の御来臨を感謝し、赤心の盃を!」 言うやガラーヤン大佐は一気にグラスの酒を喉から胃の腑に向けて流し落とし...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第31話
「他に意見のあるものは?」 艦長が一同を見渡した。 「……」 意見も異論もなかった。 「では明後日、必要なものを積み込んだら母船に戻る」 ゴノー高原の着陸点から王立宇宙基地までは空路三〇分と掛からなかった。 待ち受けていたジュモーラン...
「装甲騎兵ボトムズ チャイルド 神の子篇」第30話
ワイズマンのテストというキリコの言葉は一同を沈黙させた。 「……テスト、というのはいつ聞いてもイヤな響きを持ってますなあ……」 沈黙を破ったのはまたもボブゥーだった。 「テストというのは試験ですよね、試すっていうか、確認するっていうか、そ...