2022.09.08

歴史や文化

日本人移民の歴史に触れられる街―モイリイリを散策しよう!

  • WRITER さゆりロバーツ

ワイキキから、アラワイ運河を挟んで向かい側に広がるモイリイリ(Mōʻiliʻili)地区。「旧日本人街」として、ホノルルに住む地元の人々にも、よく知られている街です。買い物に訪れたり、通勤の途中に通りかかったり、または、実際にこの街に住んでいたり…。ハワイ大学が近いことから大学寮があり、お手頃価格で美味しい物に出会える場所としても、人々を惹きつける賑やかな場所です。今回は、このモイリイリの街が、本来はどのような場所だったのかをご紹介します。

地名に宿る伝説

モイリイリ(Mōʻiliʻili)という地名は、moʻo(トカゲ)とʻiliʻili(小石)という言葉からできています。火山の女神ペレの妹、ヒイアカが、巨大なトカゲと戦い、バラバラにされたトカゲが小石となって散らばった-という神話が残る街で、モイリイリの街を散策していると、トカゲや、トカゲのしっぽの形をしたものが、街のシンボルのように現れます。

歩道に沿って作られた壁は、トカゲのデザイン

 

しかし、街のシンボルと言えば、実際はこちらかもしれません。

立派な鳥居がそびえ立つ三角形の土地

大通りの分岐点にあたる三角形の土地

 

堂々たる姿の鳥居です。これは、ハワイ州と友好関係にある広島県より贈られた、厳島神社の鳥居のレプリカで、本物の半分のスケールで作られています。この鳥居のある場所、大通りのKing St.とBeretania St.に挟まれた三角形の土地こそが、「日本人街」のはじまりの地だったのです。

最初の日本人移民

1830年代後半以降、ハワイではサトウキビの商業生産が始まり、多くの人手が必要となっていきました。そのような中、労働者として最初にハワイへと渡った日本人148名は、明治元年にハワイに到着したことから「元年者」と呼ばれています。

1968年、元年者の到着100周年を記念して建てられた慰霊塔

 

その後、ハワイ王国当時のカラカウア王が日本を訪れ、明治天皇と謁見してハワイへの日本人の移民をお願いして以降、数多くの日本人移民が海を渡りました。その出身県として、最も多かったのが広島県です。

 

仕事場となるサトウキビ・プランテーションでの生活は大変過酷で、炎天下で10時間労働、作業の手を休めると、監視役により鞭打ちをされるという毎日…3年間そのような生活に耐え、契約が終わると、日本に帰らずハワイに残った人々は、新たな職を求めて、ハワイ各地へと生活の場を広げていきました。その場所の一つが、このモイリイリでした。この場所には採石場があったことから、多くの日本人移民がこの採石場で働きました。

採石場の跡地。現在はドッグパークや、ハワイ大学の一部などになっています

 

 

彼らの居住地となる場所を作ったのが、カシワバラ夫妻。鳥居のある三角形の土地に、家、共同の浴場や調理場を作り、採石場で働く日本人移民が住めるように、土地を整えました。1900年代半ばまでには、モイリイリの住人のおよそ90%が、日系人となりました。

鳥居の近くに設置された、カシワバラ夫妻の名を刻む記念碑

 

モイリイリには、日本人移民、日系人が昔から多く住む地域として、日本の文化に関わる場所が、現在も数多くあります。

日本人移民の歴史・文化を守り、伝える日本文化センター

白い壁に赤色のアクセントが日本の国旗を思わせる建物

 

鳥居からも見える日本文化センター(Japanese Cultural Center of Hawaii)は、まさにハワイにおける日本人移民、および日系人の歴史・文化を保存し、伝えていく役割を果たす、大変重要な存在です。中には道場があり、空手や剣道といった武道の稽古が行われていたり、昔の貴重な写真や資料、本などを保存、管理する場所もあります。常設の展示室「Okagesamade」は、日本人移民の歴史を詳しく学ぶことができます。(今秋再開予定。開館日・時間はウェブサイトでご確認ください。)

行列に並んでも食べたい!地元の人々に大人気の「Fukuya」

お惣菜を詰め合わせたお弁当も販売

 

地元の人々の間で、大変な人気のお店「Fukuya」。日本人移民のタカヤマ夫妻により1939年に創業したお惣菜を売るお店で、きんぴらごぼうや煮つけなど、日本の味をハワイで守っています。ランチタイムには、ほぼ売り切れてしまうという人気ぶりなので、食べたいと思ったら、早めに向かうのが正解です。

ハワイに生きた人々の証…モイリイリ日本人墓地

拝見する時は、厳かな気持ちで…

 

ダイヤモンドヘッドの姿が垣間見える地に、大きな日本人墓地があります。ハワイに生きた人々の名が刻み込まれた墓石には、大正や昭和の文字が。ハワイに住んでいても、日本の暦を忘れなかったことがうかがえます。この場所に、元年者の到着100周年を記念した慰霊塔があり、その除幕式には、日本の皇族が参加しています。

日本人移民、日系人の心の支え「モイリイリ本願寺」

モイリイリ本願寺が主宰する様々なイベントにも注目

 

1906年にこの地に設立された「モイリイリ本願寺」は、日本人街に住む人々の心の拠り所として、大変重要な役割を果たしてきました。こちらが主宰する盆踊りの大きなイベントが、7月初旬に開催されており、地元の人々も楽しみにしているイベントとなっています。

 

ハワイの女神が登場する伝説の地から、日本人街として発展し、そして、現在も日本人移民の歴史や文化を伝え続けているモイリイリ。今回ご紹介した場所は、全て鳥居から徒歩で訪れることができます。日本人だからこそ、行ってみると様々な発見があり、とても興味深い街、モイリイリ散策。ランチを楽しみながら、ぜひ散策してみませんか?

Japanese Cultural Center of Hawaii/日本文化センター

URL
https://www.jcch.com/
住所
2454 S Beretania St, Honolulu, HI 96826
電話
808-945-7633
開館時間
展示ルーム「Okagesamade」現在一時閉鎖中 今秋再開予定
ギフトショップ
木~土曜日 午前9時~午後1時

Fukuya/フクヤ

URL
https://fukuyadeli.com/
住所
2710 S King St, Honolulu, HI 96826
電話
808-946-2073
営業時間
水~日曜日 6:00~14:00
休日
月・火曜日

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