今回は、アイラモルトの王と呼ばれるラフロイグ10年を採り上げます。
このラフロイグ蒸溜所を建設したのは、ジョンストン兄弟という二人でした。
彼らは元々、名誉革命後のイギリス王室に異を唱え、スチュワート朝のジェームズ2世の家系のものを王にしようと活動していたジャコバイトのメンバーだったものの、失敗した末に1810年頃にラフロイグの地に逃亡しました。
そこで牧畜を始め、さらにその飼料として大麦を栽培していました。
その後栽培していた大麦を使ってウイスキーを作ったところ、周囲から好評を得たそうで、1815年からは牧畜を止めてウイスキーの製造に踏み切ることとなり、ラフロイグ蒸溜所を設立しました。
1887年には、ジョンストン家から親族であったハンター家へ経営権が移りました。
当時のラフロイグは、ラガブーリン、ポートエレンなどの隣接する蒸溜所との係争で疲弊していましたが、その中で蒸溜所の増設や精麦工場の建設によって製造インフラを整備していきました。
折しもアメリカで禁酒法が施行され、ウイスキーを輸出できない危機に瀕するも、ラフロイグ独特の薬品臭を利用して薬効効果がある薬用酒と触れ込むことで輸入を認めさせ、危機を脱しました。
イアン・ハンターは秘密主義者として細かい製法などを一切公開することはありませんでしたが、唯一彼がそれらを伝える一人の女性がいました。
彼女の名はベッシー・ウィリアムソン。
1923年にグラスゴー大学を卒業した後、3ヶ月の予定で事務員のパートとしてラフロイグ蒸溜所に勤めるつもりだった、元々ウイスキー作りにおいてはド素人の女性でした。
イアンは彼女に全幅の信頼を寄せ、事務処理だけではなく、ウイスキーの製法についても伝授するに至りました。
跡継ぎがいなかったイアンは、1954年に亡くなる前に、蒸溜所の責任者としてベッシーを指名しました。
こうしてスコッチウイスキー史上初めて、女性のディスティラーが誕生しました。
ベッシーは、イアンから伝授された製法を更に洗練し、高品質で生産性の高い物へと進歩させました。また、メインとなる熟成樽も、ジャックダニエルの原酒に使われていたものを採用しました。
こうした努力の末、ラフロイグは世界でも名声を得るシングルモルトウイスキーとなりました。
そして「アイラモルトの王」と呼ばれるようになりました。
しかしベッシーは、単独で蒸溜所を維持するのには限界があるとのことで、1970年代に蒸溜所を大手メーカーに売却しました。
その後そのメーカーも幾度もの買収が起きて、現在はビームサントリーの傘下にあります。
さて、このアイラ王ことラフロイグをこよなく愛する国王がいます。
それこそが、2022年にイギリス国王に即位したチャールズ3世です。
元々イギリス王室には、王太子向けのウイスキーとして「ロイヤル・ハウスホールド」が作られ、提供されていました。
しかし王太子時代のチャールズ3世は、そんな穏やかなウイスキーには目もくれず、強烈な正露丸の香りを持つラフロイグに魅了され、自ら蒸溜所に赴いてボトルをオーダーしたり、新製品の試飲をするほどの大ファンとなりました。
そして1994年に、ラフロイグ蒸溜所は王太子の称号である「プリンス・オブ・ウェールズ」のワラント(御用達)を得て、更なる栄誉を手にしました。
今後は「イギリス国王に愛されるウイスキー」として広まることになるでしょう。
ラフロイグ10年はジャックダニエルの原酒を熟成するのに使われた樽を使いますが、アイラモルトの中でも最も強烈なピートを使ってモルティングをしているため、正露丸やヨードの香りが強烈にやってきます。個人的には「ウイスキー界のくさや」と言っても過言ではないと思います。
このほか、後熟で小さい樽を使ったクォーターカスクなど、様々な樽で熟成させた原酒をベースにした限定ボトルも並行輸入されています。
味わいは、アルコールからの辛みは比較的少なめで、苦みと酸味が友の広がっていきます。
味わいは、苦みの後に酸味が広がります。
味わいは、軽い苦みの後にしょっぱさを感じます。
味わいは、苦みが先にやってきて、奥からうま味に近い物を得られます。
正直言えば、人を選ぶウイスキーであることは間違いないです。
色々とウイスキーを飲んで慣れてきたのであれば、敢えてラフロイグを試すといいでしょう。もしラフロイグにハマってしまえば、立派なウイスキーマニアと言われてもおかしくはないでしょう。
700mL、アルコール度数40度、価格は5500円ほどです。
かつては4000円台でしたが、原酒不足が発生したことでプレミア化していて、お店によっては1本のみの購入に限定している場合があります。
ジャコバイト運動に参加した兄弟
ラフロイグ蒸溜所はアイラ島の南部にあり、約1km間隔で、東にラガブーリンとアードベッグ、西にポートエレン(一度閉鎖後、2022年頃に再建予定)と、4つの蒸溜所が並んでいます。このラフロイグ蒸溜所を建設したのは、ジョンストン兄弟という二人でした。
彼らは元々、名誉革命後のイギリス王室に異を唱え、スチュワート朝のジェームズ2世の家系のものを王にしようと活動していたジャコバイトのメンバーだったものの、失敗した末に1810年頃にラフロイグの地に逃亡しました。
そこで牧畜を始め、さらにその飼料として大麦を栽培していました。
その後栽培していた大麦を使ってウイスキーを作ったところ、周囲から好評を得たそうで、1815年からは牧畜を止めてウイスキーの製造に踏み切ることとなり、ラフロイグ蒸溜所を設立しました。
1887年には、ジョンストン家から親族であったハンター家へ経営権が移りました。
ラフロイグを有名にした二人
ハンター家出身の最後の継承者となったイアン・ハンターは、1921年にオーナーとなりました。当時のラフロイグは、ラガブーリン、ポートエレンなどの隣接する蒸溜所との係争で疲弊していましたが、その中で蒸溜所の増設や精麦工場の建設によって製造インフラを整備していきました。
折しもアメリカで禁酒法が施行され、ウイスキーを輸出できない危機に瀕するも、ラフロイグ独特の薬品臭を利用して薬効効果がある薬用酒と触れ込むことで輸入を認めさせ、危機を脱しました。
イアン・ハンターは秘密主義者として細かい製法などを一切公開することはありませんでしたが、唯一彼がそれらを伝える一人の女性がいました。
彼女の名はベッシー・ウィリアムソン。
1923年にグラスゴー大学を卒業した後、3ヶ月の予定で事務員のパートとしてラフロイグ蒸溜所に勤めるつもりだった、元々ウイスキー作りにおいてはド素人の女性でした。
イアンは彼女に全幅の信頼を寄せ、事務処理だけではなく、ウイスキーの製法についても伝授するに至りました。
跡継ぎがいなかったイアンは、1954年に亡くなる前に、蒸溜所の責任者としてベッシーを指名しました。
こうしてスコッチウイスキー史上初めて、女性のディスティラーが誕生しました。
ベッシーは、イアンから伝授された製法を更に洗練し、高品質で生産性の高い物へと進歩させました。また、メインとなる熟成樽も、ジャックダニエルの原酒に使われていたものを採用しました。
こうした努力の末、ラフロイグは世界でも名声を得るシングルモルトウイスキーとなりました。
そして「アイラモルトの王」と呼ばれるようになりました。
しかしベッシーは、単独で蒸溜所を維持するのには限界があるとのことで、1970年代に蒸溜所を大手メーカーに売却しました。
その後そのメーカーも幾度もの買収が起きて、現在はビームサントリーの傘下にあります。
英国王のお気に入り
それこそが、2022年にイギリス国王に即位したチャールズ3世です。
元々イギリス王室には、王太子向けのウイスキーとして「ロイヤル・ハウスホールド」が作られ、提供されていました。
しかし王太子時代のチャールズ3世は、そんな穏やかなウイスキーには目もくれず、強烈な正露丸の香りを持つラフロイグに魅了され、自ら蒸溜所に赴いてボトルをオーダーしたり、新製品の試飲をするほどの大ファンとなりました。
そして1994年に、ラフロイグ蒸溜所は王太子の称号である「プリンス・オブ・ウェールズ」のワラント(御用達)を得て、更なる栄誉を手にしました。
今後は「イギリス国王に愛されるウイスキー」として広まることになるでしょう。
現行ボトルについて
現在ではレギュラーボトルであるラフロイグ10年の他に、シェリー樽原酒もブレンドしてマイルドに仕上げたセレクトカスクが、サントリーからの正規輸入でラインナップされています。ラフロイグ10年はジャックダニエルの原酒を熟成するのに使われた樽を使いますが、アイラモルトの中でも最も強烈なピートを使ってモルティングをしているため、正露丸やヨードの香りが強烈にやってきます。個人的には「ウイスキー界のくさや」と言っても過言ではないと思います。
このほか、後熟で小さい樽を使ったクォーターカスクなど、様々な樽で熟成させた原酒をベースにした限定ボトルも並行輸入されています。
テイスティング
ストレート
強烈な正露丸の香りの後に、レモン、オレンジの香りが続きます。味わいは、アルコールからの辛みは比較的少なめで、苦みと酸味が友の広がっていきます。
ロック
正露丸と灰を思わせるスモーキーな香りと共にレモンの爽やかな香りがやってきます。奥からはバニラの甘い香りも軽く感じ取れます。味わいは、苦みの後に酸味が広がります。
水割り
正露丸とレモンの香りが共にやってきて、奥から海藻、潮の香りが続きます。味わいは、軽い苦みの後にしょっぱさを感じます。
ハイボール
正露丸、海藻、灰の香りが主体で、奥からレモンの香りがほのかに感じられます。味わいは、苦みが先にやってきて、奥からうま味に近い物を得られます。
ウイスキーに飲み慣れたら一度飲むべき
前述の通り、ラフロイグ10年は正露丸の香りが強烈なので、それが受け付けられない人にはどうしようもないですが、それに慣れてくると、鼻を通る爽快感とレモンのような香りが続いて、スカッとした香りを楽しめるボトルだと言えるでしょう。正直言えば、人を選ぶウイスキーであることは間違いないです。
色々とウイスキーを飲んで慣れてきたのであれば、敢えてラフロイグを試すといいでしょう。もしラフロイグにハマってしまえば、立派なウイスキーマニアと言われてもおかしくはないでしょう。
700mL、アルコール度数40度、価格は5500円ほどです。
かつては4000円台でしたが、原酒不足が発生したことでプレミア化していて、お店によっては1本のみの購入に限定している場合があります。