『クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~』 (以下、「オラ夏」)は、次の3つの側面を兼ね備えた意欲的なゲームだ。
- マンガ・アニメとして展開する『クレヨンしんちゃん』を題材にした低年齢層向けゲーム
- 「ぼくのなつやすみ」(以下、「ぼくなつ」)シリーズの精神的後継作
- 新たな夏休み体験アドベンチャーゲーム
インタビューでも語られていたように、幼いプレイヤーから50代近くの人までカバーする必要のあるゲームなわけで、これはかなり難しい企画であると思われる。では、「オラ夏」はこの難題をどこまで達成できているのか、先に結論を話そう。
- しんちゃんのゲームとしてはよい
- 少し悩むが、「ぼくなつ」的にもよいと言える部類
- 新たなゲームとしては残念ながら……
「オラ夏」で体験できる夏休みは素敵なものだ。まぶしい太陽、青い空に映える入道雲、どこか心地よいセミの声や川のせせらぎ……。それらはきっとよい思い出になるだろうが、実際に体験しているときは「ノスタルジーがないとやってられない」と思えることもある。
『クレヨンしんちゃん』のゲームとしてはかなりのもの
本作では、野原一家が熊本県にある「アッソー」という町へ旅行することから物語がはじまる。ここにはみさえの古い友人が住んでおり、ひろしの出張に合わせて一週間の滞在を楽しもうというわけだ。
しかし、この場所はどこか不思議である。撮ったものが絵になる特殊なカメラをくれた「あくの博士」がいるし、カスカベに住んでいる友達とそっくりな人たちもおり、時間が経つと恐竜まで出てくるようになるのだから。
そんなちょっと非日常の入り混じった世界で、しんちゃんは自由気ままに一週間の夏休みを楽しむ。魚釣りや虫採りをしたり、子供新聞記者として活躍したり、あるいは人々のお手伝いをしたりと、しんちゃんたちの世界がうまく広げられているのだ。
まず驚くのが、2Dでリアルに描かれた背景美術にしんちゃんたちがマッチングしている部分だ。「オラ夏」はそれこそ背景美術を眺めているだけでも楽しめるほどで、入道雲が美しい夏の青空、虹のかかる水道橋、切ない気持ちになる夕暮れなど、どこを切り取ってもスクリーンショット映えする。
背景美術はアートチーム・コンボイが担当している。この会社は『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』、『河童 のクゥと夏休み』などの美術監督を担当した中村隆によって設立されているわけで、なるほど素晴らしいのもよくわかるのだが、それにしても「いかにもデフォルメされたしんちゃん」と「リアル寄りな背景美術」がよく馴染んでいる。
インタビューでも語られていたように、デフォルメされたキャラクターを3Dで描写するため、状況に合わせてうまくモデルを切り替えているという。朝の体操のときはこれがわかりやすい。しんちゃんやみさえが頭を回す動作をよく見ると、矛盾が発生するであろう瞬間に顔の向きが変化するのだ。
また、キャラクターの表情も“しんちゃんらしい”と感じられた。しんちゃんが後ろを向いてニヤリとするあの表情はもちろん、目をウルウルと輝かせる子供らしい一面も見られる。あるいは、しんちゃんのおかしな発言に苦笑いする人々の表情もらしさを感じさせる。