コロナ禍にあっても支店を増やし続け、介護派遣の分野で急成長を遂げる。
医療・福祉に特化した人材派遣、職業紹介、人材育成を行っている株式会社コトリオ。
2000年に設立した当初は広告企画会社だったが、2007年に人材ビジネスに事業転換。京都市を中心に一般派遣および介護派遣事業を展開していた。2018年3月には人材派遣事業を介護分野に一本化。2019年には現在の「株式会社コトリオ」に社名を変更している。
医療・福祉分野に事業を一本化して3年余りで関東・関西・東海・東北・九州に17支店を構え、売上高は56億円に上る。そして社員数は166名、登録スタッフは約50,000名を擁する会社へと急成長を遂げた。
「コロナ禍だからといって、介護や医療のニーズがなくなることはありません。利用者様を施設から締め出すわけにはいきませんからね。感染防止対策をした上で利用者様をサポートするという状況を維持するために、人材ニーズはむしろ増えています。当社はそのニーズにマッチングする人材を送り出せたのです」(人事責任者)。
同社では、営業とコーディネーターの分業体制を敷いていない。一人のコーディネーターが担当エリアを持ち、エリア内の全施設とコンタクトを取る。一方で、派遣スタッフの登録受付や面談も行うので、施設のニーズと、派遣スタッフの希望をスピーディーにマッチングさせることができるのだ。
しかも同社が行っているのは、単なる条件マッチングではなく、それが競合優位性に繋がっている。同社が医療・福祉分野に一本化した背景と併せて、次項で改めて紹介しよう。
100年後も必要される会社であるために、派遣事業を医療・福祉分野に一本化。
株式会社コトリオが、人材派遣を医療・福祉分野に一本化した背景には大きく三つのポイントがある。
第一に「100年続く会社にしたい」との思いを強くしたことだ。そのためには、100年後のニーズにも応えられている会社でなければならない。日本の人口は現在約1億2,000万人だが、100年後には6,000万人に半減するという予測がある。予測通りであれば、6,000万人分の需要がなくなるため、消えてしまう産業も出てくるだろう。そんな状況であっても(もしくは、そんな状況だからこそ)医療・介護の需要はなくならない。「特に介護分野は右肩上がりで、30年後には35万人の労働需要が見込まれています」と人事責任者は語る。そこで同社は、一般派遣事業と両輪で展開してきた医療・福祉分野への派遣に舵をきったのだ。
第二に、同社が、介護および派遣スタッフに対する見方を改めたことが挙げられる。「本当に介護をやりたい人は、何かの事情で一度辞めたとしても、また介護に戻ってくる。介護は大変だから、一度辞めたらもう二度と戻ってこない、という私個人のイメージは、介護分野に関わる中で大きく変わりました。介護の知識やスキルを身に付け、資格を取り、利用者様に貢献したい。そして自分を成長させたい。そう考える人は、実は沢山いるのです」(人事責任者)。
そんな高い意識を持った人を医療・福祉施設にマッチングさせることができれば、同社の存在価値が高まり、100年後も必要とされている会社になれる。そこで同社は、2018年当時では珍しい「資格取得費用の100%支援」に踏み切った。派遣法の改正で無償教育が義務化された現在も、15日間以上に及ぶ研修の費用を全額同社が負担しながら介護人材の育成に注力している。
資格が取得できればできる仕事が広がり、給与も上がる。モチベーション高く仕事に取り組むスタッフは、コロナ禍にあっても必要な感染予防対策を取り、施設のニーズに応え、ご利用者に喜ばれる。その成果が同社をさらに高みに押し上げる。派遣スタッフ・施設・コトリオの三者が「Win-Win」の関係で結ばれる。この状態を目指すことが、医療・福祉に一本化した第三のポイントだ。
そんな同社にとって必要なものは、同じ目標に向かって共に進む社員=「仲間」の存在だ。
転勤なし。充実した研修制度。モチベーション高く働ける環境作りにこだわる。
取引先である施設、派遣スタッフを大切にしようという思いは、当然社員にも向けられている。株式会社コトリオにとって、社員は単なる同僚ではなく「仲間」だからだ。一人でも多くの仲間に集まってもらい、活躍してもらうために、同社では様々なことに取り組んでいる。
まず同社には転勤がない。「生まれ育った場所で頑張りたい」「愛着のある地域で介護に貢献したい」等々、社員が望んだエリアでずっと働くことができるので、モチベーション高く仕事に取り組める。そのためか、業界経験や実務の知識がない人も思いきって応募してくるそうだ。社員の前職は、販売・サービス、建築、SE等、多種多様。ちなみに同社の社員は100%中途入社である。人事責任者によれば、「未経験で転職してきた人のほうが、良い成績を残しているように思います」とのこと。中には入社1年未満で支店長に就任した社員もいるほどだ。
実際に未経験入社でも活躍できるように、社内研修制度も充実している。新入社員研修では一般常識からPC操作実務に至る基礎教育を行い、配属後も部門ごとに業務関連の基礎教育はOJTを交えて行っている。その後も、新たなビジネス展開や新技術導入に伴うフォローアップ研修、管理者としての基礎から実務から技術まで実践的に学べる実務研修等、ステップアップするための環境整備にも取り組んでいる。
環境面で一番重要なのは、中心メンバーが20代半ば〜30代前半であること。同年代の仲間同士なので、意見やアイデアが発信しやすい。そして、ジャッジをするマネージャーの年代も近いので、良い提案はすぐに実施される。クールビズ制度の導入、ワークスペースのフリーアドレス化、デュアルディスプレイの実装等、働きやすさを考えた提案は次々とスピーディーに実施されてきた。トップダウンではなく、ボトムアップの風土なのだ。
「社員全員が『自分達が会社を作っている』と考えていますから、“ご意見箱”等いらないのです。こうすればいい!という意見は、日頃からどんどん発信し合っています」(人事責任者)。
部門や職種は違っても、「Win-Win」で「100年後も必要とされる会社になる」という目標は変わらない。全社員が一つの目標に向かって歩み始めている同社が、派遣業界でトップクラスの成長を遂げているのは、当たり前のことなのかもしれない。
株式会社 コトリオの社員の声
30代後半
2020年07月入社
20代前半
2020年07月入社
20代後半
2019年08月入社