法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

仁藤夢乃氏の支援団体Colaboがバスカフェで提供している食品が一食2600円という計算は、さまざまな意味で誤っている

もう2週間以上前に話題となって、すでに批判的な検証もおこなわれているが、いまだ誤った計算が有効な根拠として信じられているようだ。

主張しはじめた暇な空白氏*1がおこなっている「検証」の信頼性にもかかわるだろうし、ここで簡単に記録しておく。


さて、上記のやりとりで「根拠」として提示されているツイートは下記のとおり、単純な割り算でしかない。

給食費」と「食事提供1,535食」は画像だけがはりつけられていて、どの資料から引いた数なのかツイート単独では不明瞭にされている。
これはColabo公式サイトがPDFファイルで公開している2021年度報告書から、「食事・物品提供」と「会計報告」の数字を引っぱったものだ。
https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2022/07/colabo2021.pdf
食事提供は食卓をかこむ交流にあてられている他、全国へ送付したり、翌日の食事や家族のためなどに持ちかえるようになっているという*2

私たちは、少女たちにまずは 「一緒にご飯を食べよう」「今度ご飯食べにおいでよ」と声をかけています。共に料理をし、食卓を囲み、 笑いあい、互いの話をし、関係性をつくりたいと考えています。

「家に食べ物が何もない」と連絡があり、食料を届けることや、児童養護施設を退所した人、家族が頼れない状況にあるなどする全国各地の少女たちへの食品や生活用品の提供も行っています。Colaboに来ると、ご飯やおかずが持ち帰れるようになっていて、 翌日の食事や冷凍保存用として、 家族や同居の友人やパートナーに持ち帰る人もいます。

そして「食事・物品提供」に前後して「アウトリーチ事業TsubomiCafe」という項目があり、バスカフェはその事業にふくまれている*3

ピンクのバスとテントが目印のこのカフェでは、食事や飲み物、Wi-Fiや充電が無料。 バスの中では、生活に必要な物品や衣類、 コスメやコンドームなどを提供しています。
この活動は、 韓国の民間団体の実践を参考にし、2018年10月~2022年3月までに117回開催。11,214名に声掛け、2,568名が利用しています。

こちらは「公的支援に繋がらない少女」のために、交流よりも居場所をつくることを優先した事業であり、シェルターでの食事と違って意識的に介入をさけている。

自己責任論の中で「自分が悪い」と思い込み、声を上げられずにいる人もいます。「相談」や「支援」という言葉や行為に抵抗感を持つ人も少なくありません。

利用してもらいやすいように、大人が「してあげる」場所ではなく、「少女たち自身の場所」として、気軽に立ち寄り、セルフサービスで、自由に過ごせる雰囲気を大切にしています。

つまりバスカフェで無料提供している食品は「1535食」とは別事業であり、給食費へ別途に計上されているだろうことが元資料からもわかる。


分母と分子が適切に対応していないことは、「根拠」の1週間後に仁藤氏自身が連続ツイートで説明している。信用するかはともかく当事者の説明なのに、推測にすぎない暇な空白氏と比べて拡散されていない*4

交流のための食事は一般的に一人一食と考えられるが、おそらく支援者が交流した食事は除外しづらいだろうし、やはり単純な割り算では計算できないかもしれない。
次に、支援対象者が持ちかえる一食は、本人が食べるか家族が食べるかはわからず人数が計測できない。のべ人数として一食を数えることはできても、それは一食単位で数えることと変わりない。
逆に、不特定多数を対象とするバスカフェでは何人を支援したかまでは数えているが、配布をセルフサービスにするほど介入をさけているのに一人一人の食事量までは監視できないだろう。
つまり支援事業の性質が異なるため、合計する単位をそろえにくいことは資料だけでうかがえる。それこそ費用で単純合計するだけならできるだろうが、支援内容と関係なく上下する数字なので、どれほどの支援をおこなったかという報告には向かないかもしれない。
そもそもシェルター内で調理した料理と、配布のため携帯性や保存性を重視する食品とで、まったく同じ費用で同じ食事が提供できるとは思えない。


暇な空白氏が支援事業ごとの性質の違いを無視して、批判のために主張をくみたてていそうなツイートは他にもある。

これもすでに多数の批判がされているように、あくまで一時保護シェルターの各個室であって、比較的に長期間の生活をおこなう中長期シェルターとは異なる。

暇な空白氏は事業報告のトップページにリンクをはりながらPDFファイル*5へリンクせず、一時保護シェルターの写真が中長期シェルターと混同されかねないトリミングもおこなっている。

一般的に、公営でも一時保護シェルターの個室はそう広くない。好意的に報告されている江戸川区大阪市の児童相談施設と比べれば、Colaboなりの努力がうかがえる。
子どものケア第一に浴室も個室、江戸川区の一時保護所:朝日新聞デジタル


江戸川区の一時保護所の個室にはベッドやテレビ、エアコンが設置されている

虐待受けた子も安心だよ 江戸川区立児相が始動 一時保護所併設 /東京 | 毎日新聞


一時保護された子どもたちが夕食後に過ごすリビング(手前)を囲むように、個室が配置されている=江戸川区

「北部こども相談センター」見学会に参加

本施設は、最新の設備・機能を有し、対象児童の様々な状況・変化に応じて適切に支援するための個室や相談室などの環境改善が図られ、北部方面での児童虐待事案に十分対応できるよう随所に工夫がなされており、大いに期待されます。

より良い環境を目指すべきという理想論も間違いではないが、それはColaboも同意するところだろうし、現実にシェルターの増設をくりかえしている。

暇な空白氏が言いがかりのためでなく会計を精査しているつもりであれば、運営費も計算して住環境を批判しているはずだ。同じ費用で質や量が向上できるなら、その方法をぜひ説明してほしい。きっとColabo以外の支援者も喜ぶはずだ。


なお、不特定多数へ向けた支援も、人数だけでなく何らかの配布数を計上してほしい、といった要望だけならば理解はできる。また、事務費などを考慮しても、給食費を一括で処理せず事業ごとに詳細な会計をしていほしいという要望も一理はある。
不正経理といえば最近、赤塚不二夫の巨額の被害が漫画『あだち勉物語』で再注目されている。立場で人を信用するべきではないことはたしかだ。

殺人ピエロで知られるジョン・ゲイシーや、BBCの人気司会者ジミー・サヴィルのように、慈善活動していた著名人が立場を利用して犯罪をくりかえしていた事件もある。
www.bbc.com
しかしColaboの会計に問題があるかのように追及したいなら、一般的な支援事業との比較は必要だろう。費用がなぜどこにどのようにかかるかを想像できないまま、報告書の数字を関連づけて計算できるはずもない。

*1:本名はゲーム会社との裁判で以前から一部で知られているし、自身を「彼」と表記して過去の裁判をふりかえっているnoteエントリにも記載があるが、公開を望まないかもしれないので表記はさけておく。 note.com ちなみに、はてなアカウントはid:kuuhaku2はてなブログで「出木杉」を「出来杉」と誤変換していることはともかく、根拠となる作品描写の記憶が誤っていることをコメントで指摘した時、応答がなかったことがある。応答する義務はないにしても、どれくらい正確さを重視しているかという傍証になるとは思っている。

*2:ノンブル7頁。また以降もふくめ、PDFファイルの改行は適宜排した。

*3:ノンブル5頁。

*4:冒頭で引用した暇な空白氏のツイートと「根拠」のツイートはそれぞれ2500以上と3000以上のいいねを集めているが、仁藤氏のツリーの最初のツイートは1600以下のいいねにとどまっている。

*5:https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2019/07/2018colabo.pdf

  • 555

    仁藤夢乃で検索するとこのエントリが指折り上位で検索されます。

  • 不動産さんのアライさん

    シェルターですが、埼玉県だと10平米程度の部屋に四人詰め込むとかザラにあって都内でも二畳程度の広さの個室に3年以上住んで国と都から一日2250円受け取ってるとかざらにあります
    一応、転居指導という形で不動産屋に来ますが、保証会社の審査に通らないので一次避難のはずが恒久化してます
    中にはそれに耐えきらず、シェルターから逃げ出し、明治公園に居座り…なんて話もまま聞きます
    逆に郊外の方は普通のアパートが2から5万円程度でかしに出されてて、異常なぐらい余ってますそして、この手のnpoや医者や弁護士や不動産屋が国と地方自治体から家賃4万円を受け取っていて、国も問題視していたりします

  • hokke-ookami

    555さんへ
    正直、こんな話題でここが検索上位に来ても困るんですけどもね。
    やむにやまれず情報収集をおこなっている人々のためにも、Colabo本体以外は類似する支援団体やそうした活動全体の信頼できる情報が上位に来るべきだと思います。


    不動産さんのアライさんさんへ
    >一応、転居指導という形で不動産屋に来ますが、保証会社の審査に通らないので一次避難のはずが恒久化してます
    中にはそれに耐えきらず、シェルターから逃げ出し、明治公園に居座り…なんて話もまま聞きます

    それは弱者を受けとめられない保証会社の、そしてそれをとりまく社会の問題ではないですか。

    >この手のnpoや医者や弁護士や不動産屋が国と地方自治体から家賃4万円を受け取っていて、国も問題視していたりします

    Colaboはとりあえず国が問題視していないようなので、他の支援団体ではなくColaboを頼るべきだという主張でしょうか。
    そもそも「国」に問題視する資格がありますかね。生活保護受給を必要数の半分以下までしぼり、極めて少ない不正受給を悪質であるかのように喧伝し、弱者を支援団体に押し出している責任をまず痛感するべきでは。

    ところで貴方は、下記ツイッターアカウントと同一人物でしょうか。

    https://twitter.com/realeastatebear/status/1570291615625019393
    >colabo 貧困ビジネスでくぐると分かりますが、この手の団体が4億円近い補助金を不適切な使い方をし、弱者女性をタコ部屋に放り込んで生活保護費をちゅーちゅーしてるなんてウワサがあるのだ

    それでしたら、生活保護を受給されること自体がおかしいかのように主張する人物の「検証」がどこまで信用できるか、自分自身に問いかけてみてはいかがでしょうか。

    https://twitter.com/realeastatebear/status/1566443726431748097
    >あ、固定ページ見ればわかるけど、この手の支援団体にたどり着く人って、何かしらの障害を持ってるんで、働くことはできてもやとってくれるところがないのだ
    なので生活保護が出ること自体はおかしなことではないのだ

    念のため、くわえてColaboが受けいれているのは主にDV被害者なので、何らかの障害がなくても表立って目立つ職業につけないと考えるべきでしょう。
    そもそもColaboに限らない一般論として、金銭的な余裕があったり生活場所を変えてすぐ生活保護を必要としない収入源が見つけられるなら、わざわざ支援団体にたよる必要はうすいでしょう。

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