第10話 ものづくりの日本人
黒いカラーリングのトヨタクラウンの運転席で、俺は慣れないオートマ運転で走らせ、コンビニに寄った。
「どうしたんですか?」
「寝坊して朝からなにも食ってねえ。それにもう十二時半。お前も腹減ったろ」
「ええ、まあ。でも事件を調べないと」
「腹が減ってちゃ戦もくそもねえ。いざってときに備えて食えるときに食っとけ。吐かない範囲でな。天羽さんも自由に休憩とれっつってたろ。根を詰めすぎるな。お前の悪い癖だ」
気遣っている口ぶりだが、七割俺が腹を空かしているだけで、ほとんどわがままだ。
とはいえ、腹が減っては戦はできぬというのも事実でもある。
一切の休憩なくやり続けるより、適度に休息をとったほうがなにかと効率がいい。遊びも勉強も仕事も、どんな分野においてもそうだ。
「先輩のおごりですか?」
「……ああ、節度を守れよ」
可愛い後輩の頼みだ。先輩として、男として「割り勘だ」とは言えない。そのあたりはなんというか、旧態依然とした古臭い俺の性格である。
俺は適当に唐揚げ弁当と、特定保健飲料のお茶を選ぶ。霧島はかつ丼とスポーツ飲料水だった。
「お弁当のほうは温めますか?」
「お願いします。あと、四十六番の煙草を五つください。それから、中華まんを一つ。お前はなにがいい?」
「んー、じゃあ、あんまんを一つください」
「レジ袋はどうされますか?」
「いえ、自分で持っていきます」
温められた弁当と中華まん、あんまんを二人で持ち、俺はセブンスターを五つ、斜め掛けのナップザックに入れた。
「車で食べますか?」
「ああ。イートインだと税金が増すしな。俺は政治家ってのに金を恵んでやりたくねえ。学校とか病院につぎ込んでくれるんなら、喜んで税金をくれてやるがな。あいつらは自分らの居酒屋代にしか使わねえだろ」
「警察が言うことじゃありませんよ」
「だからここで言うんだろ」
俺はカーナビをいじり、CDを入れる。流れ出したのは、ゲームのBGM。
「クラシックですか?」
「いや、趣味でやってるゲームの音楽。昔はピコピコだったのに、今じゃフルオーケストラだぜ。グラフィックも映画と大差ねえ。日本人ってのはこういうコンテンツを作らせるととてつもねえんだよな」
「車とかもそうですよね。まあ、それを作ってる環境は正直ダメダメですけど」
俺は弁当のふたを開け、割り箸を割る。
「先輩、アガリビトって、つまりは野生に帰った人間なんですよね。怪異耐性がある私たちが無事でいられると、まあ恐らくは思いますけど……二十七人を退治するってハードじゃありませんか?」
「武器なんて持ってない。石投げてくるのがせいぜいだろうな。つっても、それでも当たり所が悪きゃ死ぬ。いいか、ついたらアーマーとヘルメット忘れるな。純日本製。自衛隊も使ってるもんだ。車に轢かれても生きてられるぞ」
「うわー、ほんっと日本人ってものづくりさせると変態的ですね」
「警察の台詞じゃねえな」
「先輩相手だから言えるんです」
フィヨルド — 怪異対策課の捜査日誌 — 雅彩ラヰカ @9V009150Raika
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